薬師岳



鍬崎山頂上から(2003年4月28日撮影)

所在地大山町
  折立登山口 アプローチ富山市より車で50分で亀谷料金所。有り峰ダムを超え折立まで35分
登山口標高1355m
標   高2926m
標高差単純1571m 累積1679m
沿面距離片道10Km
地 図カシミール ←クリック
登山日2003年6月14日
天 候曇り時々雨時々暴風雨
同行者単独
参考コースタイム
とやま山歩き(シーエーピー)
折立(1時間30分)三角点(3時間30分)太郎平小屋(3時間)薬師岳(1時間30分)太郎平小屋(3時間)折立
参考コースタイム
富山県の山(山と渓谷社)
折立(2時間)1934mの平(1時間)2196m標高点(1時間)太郎平小屋(1時間)薬師平(1時間)薬師岳山荘(1時間)薬師岳
コースタイム折立(2時間40分)太郎小屋(2時間3分)頂上(1時間22分)太郎小屋(1時間58分)折立

 5月の下旬に登ろうと思っていた山だった。太郎小屋の連絡先に電話をすると営業するのは6月からとの事。有峰林道も6月1日からとの事で6月上旬に予定を変更した。スキーを利用して帰りの時間を短縮する計画もやめようと思った。だが、スポーツ用品店のマンゾクへ新しく買った登山靴を取りに行ったとき、薬師へ行ってきたという人が雪は沢山あり、スキーは十分出来ると言う。結局スキーを持っていくことにした。ガルモントのGTXにスキーを合わせてみると、なんとか履けそうだ。雨が気になるがマンゾクでは、雨の日に履いた方が早く足になじむと言う。これで天候に関係なくスキーを持っての薬師岳行きが決定した。


折立の登山口、奥に見えるのは休憩所
 

三角点と呼ばれるところ
ここから先は風景がよく見える
 朝5時に家を出て、コンビニ経由で亀谷温泉の料金所(連絡所)に5時45分に到着する。おにぎりを2個食べる。車は30台ぐらいいたが、ほとんどは山菜採りのようだった。 道はよくなっているので6時35分に折立に到着。支度をして6時45分、折立(1355m)を出発。先に30代の男が1人先行して行った。後から30代の男女が1組入ってくるようだ。樹林帯の中をゆっくり歩く。雨が降ったりやんだりしているが雨具を着るほどではない。しばらくすると男女2人のバーティーに追い越される。すごいスピードで登っていく。  雨の中にも花は咲いている。ゴゼンタチバナ、ノウゴウイチゴ、マイズルソウ、ベニバナイチゴ、ミズバショウなどが今年初めて見た花だった。春は白い花が多いのだろうか? しばらく行くと最初に山に登っていった男性を追い越す。そして7時50分、いきなり開けた休憩所に出る。三角点(1870m)と呼ばれているところだろう。かすかに薬師岳のような山も見える。先ほどの二人組のパーティーが出発するところだった。水分補給をして後を追う。


途中にある休憩所
 

木道も整備されているが好きにはなれない
 
 ここからはなだらかな道で、木道も整備されている。雨も降り止む。なだらかな斜面だが所々雪渓もある。後ろに見える山は鉢伏山だろうか?左に見えるとんがった山は分からない。鍬崎山には見えない。天狗山だろうか? ガスの中に見え隠れするのでよく分からない。前を行く2人との200m程の距離は離れもしなければ近づきもしない。9時14分、太郎平小屋(2320m)に到着。


太郎平小屋
 

遠くに見えるのはワリモ岳、鷲羽岳、そして
祖父岳だろうか?
 右に北ノ又岳が見える。広いなだらかな斜面は、積雪期に来てガスられたら危なそうだ。 9時22分、水分補給をして太郎平小屋を出発。ほとんど水平に近い木道を北東に向かう。35m程下ったところが薬師峠(2294m)だった。コンクリートの小屋があるが何のための小屋か不明。ここからの取り付きが分からずもたもたしていると太郎平小屋で追い越した2人組のパーティーが追いついてきた。3人で道を探し、右側の沢筋の雪渓に道を見つける。その後は又、先行する2人にどんどん引き離される。太郎平小屋の若者が雪渓に階段を作っていた。今日の薬師岳夏山開き記念登山会の泊まり人数を聞くと100人以上だと言っていた。一瞬青空が見えた。


北ノ俣岳(上ノ岳)
 

薬師峠からの雪渓を先行する二人
不思議とこのあたりで一瞬青空が見えた
 沢筋の雪渓を登り切ると広い薬師平に出る。その雪渓を右にトラバースして薬師岳からの稜線を越え、東側にある雪渓を登る。先行する二人がいなかったら分からない道だった。雪渓が切れたところで休憩していた2人に追いつく。急に雨が強く降り出し、雨具を着用する。左からの横殴りの風が強い。薬師岳小屋手前で小さなキバナシャクナゲを見つけ写真を撮っている間に2人は行ってしまった。10時41分、薬師岳小屋に到着。 ここから先は小さなジグザグを繰り返すザレ場だった。2人組にあおられて、とばし過ぎたのだろう。バテバテで、頂上までは気力の登りだった。


薬師岳山荘
 

避難小屋
 
 ガスの中に四角いものが見えた。地図にあった避難小屋だ。新田次郎の「雪の炎」という小説の中に出てくる避難小屋もこんな感じだったのだろうか。1人用のトイレのような大きさだ。小説でも5人がやっと腰掛けるだけのスペースしかなかったとあった。そこから真っ直ぐ稜線を登る。道とは思えない岩場だった。帰りに分かったのだが、登山道は西斜面にあった。左からの風が強く首が右を向いていたので見えなかったようだ。岩場を直登してしまった。
 11時25分、あっけなく頂上に到着。腕の高度計とは50mも違っていた。先行した2人は、祠の風下に場所を確保していた。祠の反対側からまわり込み、祠の端に雨風を避ける場所を見つける。2人はツェルトを出して「入りますか?」と言ってきた。が、入れるわけがない。慌てて断って雪渓にビールを冷やす。すっぽり被った2人用のツェルトでストーブを使っているようだ。3人が入れる大きさじゃないから、一応言ってみただけのようだ。男の声で「ココアがいい?コーヒーがいい?」と言っているのが聞こえる。こちらは岩陰で鼻水が混じって塩辛くなったビールを飲んでいる。長居は無用だ。あんパンを1個ほおばり、11時50分、頂上を出発。考えて見れば、今日はこの2人に翻弄された登山だった。


薬師岳頂上の祠
 

薬師岳頂上の看板
右奥に先行した二人が見える
 薬師岳小屋の手前で写真を撮ろうとしたら、電池がなくなっていた。小屋に飛び込み、電池交換する場所を貸してくれとお願いした。そこにいたお姉さんが快くどうぞと言って熱いお茶を出してくれた。そして「寒いでしょう?」と言って石油ストーブまで点けてくれた。今日の夏山開きの宿泊客は17名だそうだ。写真を撮らせてもらって送る約束をして小屋を出発。すぐ下の標識のところにハクサンイチゲが咲いていた。せっかく持ってきたスキーだ。意地でも使ってみたい。ここからの300m程の雪渓を滑る。快適とは言えないがスプーンカットの斜面にターンを刻む。1mもないショートスキーでは柔らかいとは言え、スプーンカットは滑りにくかった。さすがに今年はもうスキー登山は終わりだろう。


薬師岳山荘のやさしいおねえさん
 

薬師平のケルンとショートスキー
 
 再びリュックにスキーを縛り付け、階段がつけられた雪渓の横を靴で滑り降りる。薬師峠から若干登り返し、13時12分、太郎平小屋に到着。喉が渇いていたが金を持ってこなかった事に気づく。売店に「金持ってくるの忘れたー」と一言、言わずにいられなかった。何故か売店の若者達には大うけだった。後はひたすら折立にあった自販機を目指す。この後、薬師岳夏山開き記念登山会で登ってきた団体に次々と遭遇。「団体によるこんにちは攻撃」は受けなかったが、スキーを担いだ登山者が珍しかったようだ。皆、不思議そうに見ていた。知っている人にも何人か会った。


手前に薬師峠と奥に太郎平小屋
薬師平からの下山途中で

振り返ると雪渓の奥に太郎小屋が見える
 

 途中から又、雨が強くなる。疲れているのだろう、濡れた木の根に足を取られ、何回か転びそうになる。15時10分、折立に到着。リュックを下ろし、雨具を脱ぎ、靴を履き替え、笠をさして自販機に走る。熱いコーヒーが美味かった。
 軽登山靴から履き替えたガルモントのGTXは違和感もなく快適だった。雨の中、折立の草原ではターフの下でバーベキューを楽しんでいるグループがいた。コーヒーを飲みながら眺めたその風景は、以前どこかで見たような懐かしい風景だった。