赤谷山 |
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所在地 | 上市町、立山町、宇奈月町 | |
馬場島 | アプローチ | 富山市より車で1時間10分 |
登山口標高 | 760m | |
標 高 | 2260m | |
標高差 | 単純1510m 累積1530m | |
沿面距離 | 登り7.3Km 降り6.9Km | |
登山日 | 2004年4月29日 | |
天 候 | 晴 | |
同行者 | 単独 | |
参考コースタイム とやま山歩き(シーエーピー) | 馬場島(1時間)ブナクラ谷取水口(3時間)ブナクラ峠(1時間30分)赤谷山(3時間)馬場島 | |
コースタイム | 馬場島(38分)ブナクラ谷取水口(2時間42分)ブナクラ峠(2時間10分)赤谷山<休憩50分>(1時間35分)ブナクラ谷取水口(35分)馬場島 合計8時間30分<休憩50分含む> |
前日に決めた山行きだった。新版「富山県の山」をパラパラとめくり、目にとまった山だ。 赤谷山はまだ行ったことがなく、気になっている山でもある。 ブナクラ谷からブナクラ峠、そして赤谷山への稜線は富山県条例の境界線である。ここから内へは入らなければいいのだろう。 |
朝日に輝く早月川の清流 |
馬場島の駐車場 県外ナンバーが多かった |
目覚ましをかけずに寝てしまい、目が覚めたのが5時半だった。準備だけはしてあったので、着替えて食事をすませ6時10分、家を出る。 コンビニ経由で馬場島に向かう。雪解け水を集めた早月川の清流が力強い。 3日後に予定している早乙女山への取り付き口の小又川入口は車と人でいっぱいだった。なんとなく安心する。 馬場島から白萩川に入ろうとしたが道路には雪があり、入れない。馬場島の駐車場に車を停める。 すでに駐車場は満車に近く、そのほとんどが県外ナンバーだった。 |
馬場島から白萩川へと向かう |
途中で追い越した中年の女性3人組 |
7時40分、身支度を終え、駐車場を出発する。道路は雪のないところもあり、もう10日もすれば車で入れるだろう。 途中で追い越した3人組のパーティーは中年の女性だった。荷物の量が多かったので「剱岳まで縦走ですか?」と聞いたら「そうです」との答え。富山県条例は思っていたより緩いようだ。 その先にも男性の2人組、さらに1人組(?)。1人では許可にならないはずだが... |
ブナクラ谷の橋は橋桁も橋板もなかった |
取水口は雪で埋まりハシゴは雪の下 |
剱岳を目指す人達は白萩川を辿るようで足跡はほとんどがそちらに向かっていた。足跡の少ないブナクラ谷へと別れる。 その少ない足跡が下に向かっているのが気になった。 男性が1人降りてくる。聞いてみると橋が流されているとのこと。それで皆引き返したのかもしれない。 何処かにわたれる場所があるはずだと思い、行ってみる。雪渓は切れているものの、しっかりしているようなのでストックで「石橋を叩いて渡る」ようにして渡る。 いったんは引き返してきた男性も後をついてくる。 |
初めは夏道も分からず藪こぎもあり |
徒渉寸前のところもあり |
取水口の広場は雪で埋まり、堰堤のハシゴは雪の下だ。ここから先に足跡はない。緊張感とうれしさが交差する。 夏道が分からず雪を拾いながら歩く。藪漕ぎになったり、河原の石を繋いだりもする。 いっしょに歩いている男性はロシニョールのフリートレックを担いでいた。先週「koujitu」で買って、今日が試運転だと言っていた。 徒渉まがいのところで立ち止まってしまった。川音で声は聞こえないが腕で×サインを出している。兼用靴では歩きにくいのだろう。しばらく行ったところで振り返ってみるとスキーで滑って降りているのが見えた。 |
雪原に出ると遠くにブナクラ峠が見える |
ブナクラ峠が近くなる |
いよいよ一人旅となる。昨日からの積雪が15cm程あり、左側からの雪崩れに気をつけながら歩く。 後は難しいところもなく、所々に開いたスノーブリッジの切れ目に気をつけながら歩く。夏道は灌木の中を歩くので何も見えないが、残雪期は視界がいい。 ブナクラ峠手前で右の沢を登ろうかと思ったが自重した。富山県条例も頭をよきる。 ブナクラ峠近くの急登に足が滑るようになる。雪が深く積もった所はいいが浅いところは雪ごと滑ってしまう。 シャリバテ気味になるが峠が近いのでがんばることにする。 |
振り返ると大日岳とコット谷、大熊山が見える |
ブナクラ峠のお地蔵様 |
11時ちょうど、ブナクラ峠に出る。峠の地蔵様は雪の上に顔を出していた。雪で出来た峠はさらに10m程先で5mも上にあった。 左に見える猫又山への道は急登だが雪がついていず、歩きやすそうだ。右の赤谷山への道は雪がタップリついている。 ジャムパンをポカリスエットで流し込み、アイゼンを履く。 |
ブナクラ峠から見上げる猫又山方面 |
ブナクラ峠から見上げる赤谷山方面 |
小休止後、赤谷山へと向かう。この季節なのでかんじきは用意していなかった。昨日の雪が深く、急登では膝上のラッセルになる。 小さなピークに立ってみると赤谷山は遠く、一瞬、届くのだろうかという不安が頭をよぎった。 弱気になったら登れる山も登れないし、危険でもある。気を引き締め直して頂上を目指す。 |
小さなピークを越えると赤谷山が見えた |
左側の小黒部川へ滑り落ちないよう気をつけた |
左側には後立山連峰が連なる。鹿島槍、五竜、唐松、白馬鑓、白馬、さらに朝日岳まで見える。まだ未踏の山が多いのが楽しみでもある。 小黒部川への左斜面のトラバースが続く。雪が腐っているので下まで落ちる心配はないと思うが登り返すのがいやで慎重に歩を進める。 頂上近くの急登では雪渓も切れ、所々に顔を出している夏道を拾いながら歩いた。 いつもの事だが、頂上は突然やってくる。いきなり雪原の上に剱岳が頭を出した。振り返ると毛勝三山も雪原の上に浮かぶ島のようだ。 |
広い赤谷山頂上から頭を出した剱岳 |
振り返ると毛勝三山が雪原に浮かぶ島のよう |
13時10分、赤谷山の頂上に立つ。360度見たい放題の雪原を独り占め。 この景色を独り占めするのはもったいなさ過ぎる。誰でもいいからこの感動を共にしたいが誰もいない。沢山の人で賑わっていても不思議ではない山なのに... 今日、決算の関係で公休出勤している中林を思い出し、電話をかけて悔しがらせてやろうと思った。携帯電話の電源を入れてみるとなんと線3本の圏内。 「現在電話に出られない状態です」との返事だったが、この状況を予想していて出なかったのかもしれない。 |
五龍岳 |
鹿島槍ヶ岳 |
缶ビールを雪に埋めて赤谷尾根を調べに行く。同じ道を帰るのはつまらないので赤谷尾根を降りる事を考えていたが最初の急降が岩場のように見えたからだ。 ハイ松の中を偵察のためだけに降りる気にもなれず引き返す。何はともあれ、いつもの1人乾杯。 この景色は額に汗した者だけが味わえる特権だとは思うが本当にもったいない。写真では伝えられない本物の感動を沢山の人に感じてもらいたいと思った。 |
剱岳から左へ池ノ平山、白ハゲ 手前は白萩山 |
毛勝三山 |
14時ちょうど、頂上を後にする。赤谷尾根は諦めて元の道を戻ることにした。ただ途中でショートカットの沢を降ることにする。 小黒部へ滑り落ちないように登りのコースよりもさらに西側を慎重に降りる。登るときにチェックしておいた場所から沢の雪渓を降る。 途中で登山者を見かけ、びっくりした。縦走かと聞いたら赤谷山折り返しだと言っていた。装備からするとテン泊のようだ。 あの頂上で1人テン泊も贅沢な話だ。今夜は満天の星だろう。 |
ここから左に沢の雪渓を降る |
雪渓を降りきって朝の道と合流 |
一歩一歩を滑らせてグリセード気味に降りる。新雪に隠れて見えなかった小さなクレパスに足をつっこみかけて転倒した。季節はずれの雪はクレパスに気をつけなければいけない。 朝の登山道と合流し、ひたすら雪渓を降る。河原の石渡り、藪こぎを終え、15時35分、取水口にたどり着く。 新しい芽を吹き出し始めた木々の間を降る。朝、3人の女性達を追い越したあたりは雪が解けてしまっていた。春の近さを感じさせる。 |
白萩川を降る 遠くに赤谷山、手前に赤谷尾根 |
3人の登山者を追い越した所は雪が消えていた |
16時10分、馬場島に到着する。岩に腰掛け、山を見上げている老夫婦がいた。 駐車場には山を下りてきた満足感の中に浸っているようなサンダル履きのカップルが一組たたずんでいた。 全てがスローモーションのように目に映る。 目一杯に疲れて帰ってきたときのこの感覚が好きだ。この感覚を味わうために山の登っているのかもしれないと思わせるくらいに... |