涸 沢



涸沢から屏風岩の裏へ廻るパノラマコースから(2004年10月2日撮影)

所在地長野県安曇村
上高地 アプローチ平湯温泉からバスで30分
登山口標高1500m
標   高2350m
標高差単純850m 累積(+)1274m 累積(−)1274m
沿面距離30Km(登り17Km 降り13Km)
登山日2004年10月2日
天 候晴のち雨
同行者山の神のち単独
参考コースタイム
 山と高原地図(旺文社)
上高地(1時間)明神(1時間)徳沢(1時間10分)横尾(1時間)本谷橋(2時間)涸沢(1時間15分)屏風のコル(2時間40分)徳沢(1時間)明神(1時間)上高地
合計12時間5分
コースタイム上高地(38分)明神(44分)徳沢(53分)横尾<休憩20分>(45分)本谷橋(57分)涸沢<休憩43分>(44分)屏風のコル(1時間41分)徳沢<休憩20分>(43分)明神(34分)上高地
合計9時間2分<休憩1時間23分含む>


 上から覗いたことはあったが行ったことがなかった場所、それが上高地の涸沢だった。
 白出のコルや吊尾根から眺めた赤い屋根の小屋は箱庭の中の建物のように可愛く、手を伸ばせば届きそうなくらい近くに感じられた。
 涸沢往復というのは頂を狙う山行きではないが、もともとピークハンターではない。いつかは、と近くで見る涸沢を心に描いていた。


上高地バスターミナル
 

河童橋出発(6時50分)
 
 涸沢までなら山の神でも行けそうな気がして(実はそうではなかったが)家族サービスを兼ねて誘い出す。
 家を4時に出発。平湯温泉のあかんだな駐車場5時50分発のシャトルバスに乗り、平湯温泉6時発の上高地行きバスに乗る。
 補助椅子まで使ったバスの乗客はほとんどが登山者のようだった。もっとも一般の観光客はこんなに早い時間には動かない。
 上高地のバスターミナルに着いてみると、もうバスが何十台も入っていて登山客でいっぱいだった。松本からのお客さんが圧倒的に多いようだ。


明神館
 

梓川の清流
 
 6時50分、カッパ橋を出発する。小さな車なら走れそうなくらい広い登山道なのだが登山者が列を作り、早く歩くこともゆっくり歩くことも出来ない。
 皆、働き蟻のように長い縦列を作り、もくもくと歩いている。こういうのは何となく面白くない。何かが変だ。
 はじめはゆっくり歩くつもりが急がされ、写真を撮るのもままならなかった。


明神岳の明神東陵か茶臼尾根
 

氷壁の宿 徳沢園
 
 7時28分、押し流されるようにして明神館に到着する。休憩を取らずに先に進むが状況はあまり変わらない。
 登山道はこの先、徳沢、横尾、さらに本谷橋まで川の左岸を走っている。川を挟んで左に見えるのは頂上をガスに隠された明神岳の裾野だろう。
 河童橋のあたりでは狭い川幅も、このあたりでは100m以上ある。広い河原をゆったりと流れる梓川と遠くに連なる山並みが目に優しい。


徳沢園のテント場に朝日が眩しい
 

屏風岩を横から眺める
 
 8時12分、徳沢に到着する。芝生の広場がテン場になっている。ここならマットがなくても快適に寝られそうだ。
 ここも休憩を取らずに先に進むことにする。登山者も少しは減ってくるがそれでもトコロ天のような登山は続く。
 左に見えてくる岩壁は屏風岩のようだ。こちら側の草付き(木も生えている)を通れば何とか登れそうな気がする。


屏風岩と横尾谷
 

横尾山荘
 
 9時5分、横尾に到着。ここは槍ヶ岳と涸沢の分岐点であり、合流点でもある。人が多くて河童橋にいるようだ。
 ここまでの11Kmを2時間15分で歩いてきた。山の神にはきつかったようでここで引き返すと言う。ここから涸沢まで標高差670m、距離6Km、コースタイム3時間。往復34Kmは山の神にはちょっと無理そうだ。
 山の神が抜けて、ここら先はいつもの単独行となる(^_^)


横尾山荘前の橋
 

屏風岩正面
 
 20分の休憩後の9時25分、横尾を出発。樹林帯を快適に...という訳にはいかなかった。細い登山道はあちこちで渋滞していた。
 少人数のグループは、きりのいいところで道を空けてくれるが、大きなグループはなかなか道を空けてくれない。
 車と同じで少しぐらい追い抜きをかけても結果は大して変わらないと団体の中の一人となって歩く。そんな渋滞でも時々強引に追い抜いていく人がいる。


本谷橋には重量制限がないようだ
 

涸沢の最後の登り
 
 10時10分、一本の長い縦列となって本谷橋を渡る。本谷橋には重量制限がないようだ。本谷橋を渡った河原は休憩を取っている人達でいっぱいだった。
 ここからやや急登となるが登山道は少し広くなる。長い林道(?)歩きと渋滞でたまっていたストレスを解消しようと一気にとばす。
 渋滞していた登山道で強引に追い越していった人たちも片っ端からごぼう抜きにする。これは性格が悪いからじゃなく、たまっていたストレスのせいです。


涸沢の紅葉にカメラマン達が走り回る
 

涸沢ヒュッテ到着(11時7分)
 
 11時7分、涸沢ヒュッテに到着。屋根上のベランダは休憩の人たちでにぎわっていて町中の屋外レストランのようだった。
 何時間もかけて歩いてきた山の中にある小さな都会、小さなお祭り。こういう非日常的、非現実的なものに出会うのはとても楽しい。


涸沢ヒュッテの屋上展望台
 

涸沢ヒュッテのテイクアウトコーナー
 
 テイクアウトコーナーにはおでんもあり、祭りの屋台のようでわくわくしてくる。でも山小屋ではやっぱりラーメンでしょう!(?) と、ラーメンと缶ビールを注文する。
 この涸沢ヒュッテと涸沢小屋の間にテン場があり、50張ほどのテントが張られていた。500張も張れるテン場なので最盛期はテントでお花畑のようになるのだろう。


テイクアウトコーナーのおでん
 

涸沢ヒュッテのラーメン(800円)
 
 涸沢小屋へも行ってみる。テン場を抜けて少し登ると涸沢小屋だ。この少しの登りが嫌われているのか、お客さんが少ない。
 立地条件だけではなく、涸沢小屋は地元の個人経営だが、涸沢ヒュッテは東京本社の株式会社だ。そのセンスの違いが小屋の雰囲気に影響を与えているのかもしれない。


涸沢小屋
 

涸沢小屋のベランダ
 
 屋台もなければ、おでんもなく、風にたなびく七色の吹き流しもない。だが、チャラチャラしたものが嫌いな人には落ち着ける山小屋だろう。
 私はどちらかと言えば涸沢ヒュッテのほうが好みだ。...と、いう事は、チャラチャラした性格だという事なのだろうか(^_^;)


立地条件が悪いのかお客さんが少ない
 

帰路、パノラマコースから涸沢を振り返る
 
 11時50分、涸沢を出発する。屏風岩の裏を通るパノラマコースから帰ることにする。テイクアウトでパノラマコースのことを尋ねていた中高年のグループがいたが「上から降りてこられた方なら大丈夫。上がきつい方はやめた方がいい。道は険しいし時間もかかる」と言われていた。
 屏風のコルまでのトラバース道は小さな沢を横切るたびにアップダウンを繰り返す。ロープが張ってある岩場も多い。


屏風のコル付近の紅葉
 

パノラマコースの降り 下に見えるのが梓川
 
 徐々に標高を稼ぎ稜線に出る。そこから左に折れて稜線をアップダウンしながら最後は屏風のコルに出る。12時34分
 半分ガスに隠れているが屏風の耳と屏風の頭が見え隠れする。涸沢ヒュッテでの情報では屏風の耳までは行ってもいいが屏風の頭は行かない方がいい。踏み跡ぐらいしかないと言っていた。
 だが今回は屏風の耳でさえ体力的にも時間的にも行ってくる余裕はなかった。


奥又白谷を降って新村橋へ
 

氷壁の宿 徳沢園
 
 屏風のコル(2,420m)から新村橋(1580m)へは一気の急降となる。ガスの切れ間に梓川が見え隠れするのだが、こういう風景はもう何度も見てきたような気がする。
 山は形を変えてもどこか似通った雰囲気を持っているらしい?
 奥又白谷を降って林道に出たところで左足の付け根(股関節?)に痛みを感じる。足を上げようとすると痛みが走る。雨が降り出す中、左足を引きずるようにして新村橋まで歩いた。
 13時59分、新村橋を渡って雨具を身につける。


明神館
 

雨の中、河童橋到着(15時52分)
 
 左足があがらないままストックの力を借りて歩く。雨は降ったりやんだりだ。徳沢園で水分補給のためビールを注文。
 20分ほど休憩を取ったが痛みは変わらず、14時35分、徳沢園を出発する。
 15時18分、明神館通過。明神池に寄っている余裕はない。我慢の歩きを続けているうちに痛みがひいて来た。急げば16時のバスに間に合うかもしれないと半分走りだす。
 15時52分、河童橋に到着する。山の神に電話を入れてみるとすでに平湯温泉でくつろいでいた。バスターミナルへ急ぎ、16時のバスに間に合わせる。

 バスは満車に近い状態だったが補助席が数席空いていた。そこに乗り込もうとした最後の二人のうちの一人が久々野町の川上さんだった(^_^)
 前日から涸沢にテントを張って奥穂に行ってきたそうだ。山は広いようで狭い。補助席の前後であまり話もできないまま平湯温泉でお分かれして、山の神と合流する。
 この後、足の痛みが復活して、数日間足を引きずることとなった。