西穂高岳



一瞬、ガスが引いてその姿を見せてくれた西穂独標(2004年11月28日撮影)

所在地岐阜県上宝村、長野県安曇村
西穂高口駅 アプローチ神岡町から車で40分、ロープウエイで30分
登山口標高2156m
標   高2908m
標高差単純752m 累積(+)800m 累積(−)50m
沿面距離片道3.9Km
登山日2004年11月7日
天 候快晴
同行者単独
参考コースタイム
 山と高原地図(旺文社)
西穂高口駅(1時間30分)西穂山荘(1時間30分)西穂独標(1時間30分)西穂高岳(1時間)西穂独標(1時間)西穂山荘(1時間)西穂高口駅 合計7時間30分
コースタイム西穂高口駅(42分)西穂山荘(37分)西穂独標(1時間)西穂高岳<休憩31分>(40分)西穂独標(1時間5分)西穂高口駅 合計4時間45分<休憩31分含む>


 熊の心配をしなくてもいい山はそう多くはない。2週続けて立山に行くのも気が引けるので(職場なので)西穂高岳を選んだ。ここも間に奥穂敗退を挟んで今月2回目となる。
 ロープウエイの始発は8時半なので、6時過ぎに家を出る。始発の時間が多少遅くても、決まっていればあきらめがついて、ゆっくり出来るのがいい。


ガスで真っ白な西穂高口駅を出発
 

西穂山荘にもうっすらと霧氷がついていた
 
 ゆっくり出たつもりでも7時40分に新穂高温泉着いてしまい、時間を潰すのに苦労する。バスで団体が二つ入ってくるが先に並んでみても意味のないことは前回で経験済みだ。
駅の扉が開けられ、団体が入り終わってからゆっくり入る。添乗員がまとめ買いするのを待って乗車券を買った。
 改札口へも並ばずにベンチに座り改札を待つ。第一ロープウエイで別れても第2ロープウエイは120人乗りなので西穂高口に到着するのはいっしょになる。
 もっとも、鍋平から乗車すれば何の問題もないのだが忘れてしまっていた。


オオシラビソについた樹氷
 

西穂頂上は晴れているとの情報に期待して...
 
 ロープウエイが西穂高口駅に近づくに連れ、ガスが濃くなり、時々現れる鉄塔以外何も見えなくなってくる。天気予報にやられたかもしれない。
 西穂高口のレストラン横で身支度をしているときに、ストックを忘れたことに気づいた。下でゆっくりしすぎて車の中に忘れたようだ。
 だがストックが必要なのは西穂山荘手前の登りと西穂独標手前の登りだけだ。ない方がじゃまにならなくていいかもしれない。


樹氷の上に薄日が差しだす
 

真っ白になった雷鳥の雌
 
 9時1分、西穂高口駅を出発する。もう一人登山者がいたが撮影が目的なので、しばらく天候の様子を見てからにすると言って留まった。
 標高が高く雪が積もっているとは言え、熊の不安がないわけではない。新しい足跡を付けながら西穂山荘を目指す。
 しばらく行った頃から下山者とすれ違い出す。皆アイゼンをはいているが、行けるところまで行こうと坪足のまま歩く。


独標からピラミッドを眺める
 

ピラミッドから西穂を眺める
 
 9時43分、西穂山荘に到着する。登山道から山荘前にいた人に上の状況を訪ねると「朝一(あさいち)で行ってきたが大丈夫」と返事が返ってきた。
 すごい女性だと思ったが聞いたことのある声だ。山荘前に降りて、よく見ると福井の高原さんだった。
「あれっ?高原さん?」「池原さん?」
 やっぱりこの人は穂高から離れられないようだ。山荘前でテン泊したそうだ。正月の槍ヶ岳の訓練だと言う。


振り返ると雲海の彼方に乗鞍岳が見えた
 

ピラミッド
 
 西穂山荘からは大きな丸い石が折り重なった歩きにくい道となる。雪が中途半端に付いているのでなおさらだ。登り切って丸山を越え、しばらくはだらだらしたアップダウンが続く。
 独標手前の急登は少し滑るが坪足のまま登る。アイゼンをはかなかったのは単に面倒くさかったからだけだ。
 稜線上は風が強くて薄手のフリースだけでは寒く、耳も痛い。雨具の上着を防寒着代わりに着て帽子をかぶる。
 時々流れる雲の間に青空が見え隠れする。一瞬だけ姿を現した独標がきれいだった。


奥穂高岳(ジャンダルム)と前穂高岳
 

ガスに煙る前穂高岳
 
 10時30分、西穂独標に到着する。独標の上は何故か暖かく穏やかだ。飛騨側からの強風が下から吹き上げているので上の広場は風の影響を受けないのだろう。
 独標の降りは雪が深く、すり減った登山靴では不安で、アイゼンをはく。アイゼンをはくことによる岩場での別の危険はあるが、滑り落ちないようにすることの方がまずは大事だ。
 小さなピークを二つ乗り越え、三つ目は飛騨側を巻き、一気にピラミッドを上り詰める。


奥穂高岳と涸沢岳
 

降りる時に西穂を振り返る
 
 ピラミッドを降って小さなこぶを右に巻き、小ピークを乗り越し、次を左に巻く。その次の大きなピークを飛騨側を巻く時に鋭角な小尾根を越える。
 下山時にこの小尾根を巻くのを忘れて降ってしまうとマッチ棒のようなピークに行ってしまう。吹雪いた時などの視界の悪いときには注意が必要だ。
 その先は絶壁になっていて、とても降りられそうにもない所なので間違いに気づくとは思うが「道を間違えてしまった!」というパニックに陥るとその後とんでもないことをしてしまう可能性がある。
 この間違えやすいピークは上から見ると剣竜(ステゴザウルスなど)の背のように見えるので覚えておくといい。
 その後の大きな二つのピークは飛騨側を巻き、そのまま西穂高岳への岩場へと続く。


独標から岳沢を見下ろす 正面は明神岳
 

西穂山荘はひっそりとしていた
 
 11時30分、西穂高岳に到着する。頂上では3人が三脚を構えていた。雲海は高く、北側は槍の穂先から涸沢、奥穂、前穂が見えるだけだ。南側はピラミッドの奥に乗鞍が頭を出しているだけで笠も霞沢も見えない。
 日差しは強いが風は冷たい。寒暖計を取り出してみるとマイナス8度だった。缶ビールをウイスキーに替える。
 12時1分、頂上を後にした。アイゼンを岩に引っかけないよう慎重に降る。独標に立ったとき風の加減か瞬間的に岳沢が見えた。
 独標から降りようとしたときに左足のアイゼンがはずれたので右足のアイゼンもはずす。時々滑りそうになるがアイゼンを履いているよりは歩きやすい。
 独標からは再びガスの中に入る。西穂山荘は素通りして13時46分、ロープウエイ西穂高口駅に戻った。


2号ロープウエイの第2鉄塔(レンズが結露)
 

二階建ての第2ロープウエイ(レンズが結露)
 
 冬期間、無料サービスしている番隆汁はまだやっていなかった。14時のロープウエイに乗り第一ロープウエイへと乗り継ぐ。
 冬季間無料となっている有料駐車場を出たのは14時半頃だった。早い下山はいつも中途半端な気持ちが残る。不完全燃焼とでも言うのだろうか?
 2時間前に西穂の稜線を歩いていたのが夢の中の出来事のように思える。
 「ウインディー」に寄ってコーヒーを飲んでみたが、いつものような満ち足りた気分にはなれなかった。