西穂高岳〜奥穂高岳 |
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所在地 | 岐阜県飛騨市、長野県穂高市 | |
新穂高登山口 | アプローチ | 神岡より車で40分、新穂高温泉 |
登山口標高 | 2156m | |
標 高 | 3190m | |
標高差 | 単純1034m 累積(+)1330m 累積(−)2370m | |
沿面距離 | 19.9Km | |
登山日 | 2004年8月7日 | |
天 候 | 晴れ後雨 | |
同行者 | 単独 | |
参考コースタイム 山と高原地図(旺文社) | 西穂高口駅(1時間30分)西穂山荘(1時間30分)西穂独標(1時間30分)西穂高岳(不明)間ノ岳(不明)天狗ノ頭(不明)天狗ノコル(不明)ジャンダルム(不明)奥穂高岳(30分)穂高岳山荘(5時間30分)白出沢避難小屋(1時間30分)新穂高温泉 | |
参考コースタイム 山岳鳥瞰図(株式会社ジオ) | 西穂高口駅(1時間)西穂山荘(1時間30分)西穂独標(1時間30分)西穂高岳(3時間)天狗ノコル(3時間30分)奥穂高岳(40分)穂高岳山荘(5時間20分)白出沢避難小屋(1時間30分)新穂高温泉 合計18時間 | |
コースタイム | 西穂高口駅(43分)西穂山荘(43分)西穂独標(49分)西穂高岳(49分)間ノ岳<休憩5分>(26分)天狗ノ頭(13分)天狗ノコル(1時間7分)ジャンダルム(41分)奥穂高岳<休憩5分>(19分)穂高岳山荘<休憩30分>(1時間50分)重太郎橋<休憩10分>(38分)白出沢避難小屋(1時間7分)新穂高温泉 合計10時間45分<休憩50分含む> |
2週間前、奥穂で雷に遭遇してから雷が大嫌いになった。下界で雷の音を聞いても、恐怖の40分間の記憶が甦る。 このコースで雷に遭うと西穂山荘から穂高岳山荘までほとんど逃げ場がない。もっとも何処へ逃げても安全だと言える場所はない。岩陰など比較的安全だろうと思えるだけだ。 連日、雷注意報が出ていたのだが、3時に起きてヤフーの天気予報を見ると注意報は全て消えていた。迷わず、出発する。 |
新穂高温泉ロープウエイ乗り場(6時乗車) |
朝の西穂高山荘 |
3時50分、家を出る。通い慣れた41号線を南下して471号線に入り新穂高温泉へ向かう。深山荘の無料駐車場は満車でガードマンが中へ入れてくれなかった。 ロープウエイ乗り場の上にある有料駐車場に向かう。そこはガラガラだった。5時40分、身支度を終え、ロープウエイ乗り場に行ってみるとすでに10人ほどが並んでいた。 |
焼岳と西穂山荘とゴーロ(?) |
西穂独標 バックは笠ヶ岳 |
6時少し前にドアが開く。係員は割り込まないで並ぶように案内しているが、乗車券を買っている間に、後に並んでいた人達が乗車口に並んでしまった。1人が代表で乗車券を買う作戦で、1人だけの登山者(旅行者)には不利なシステムである。 それでもなんとか最初の便に乗る事が出来た。 |
ピラミッドから見た焼岳 |
西穂高岳頂上 |
鍋平についていみると、こちらから乗車する人が沢山並んでいた。ツアー登山の団体さんも何組かいたようだ。 ここからは3本目のロープウエイ乗車になってしまい、西穂高口駅に着いたのが6時30分だった。30人ぐらいの団体さんが2組ストレッチをしている。この後になっては大変と、あわててトイレに駆け込むが並ばされた。 6時40分、西穂高口駅(2156m)をスタート。 |
西穂を後に小ピークを越える |
間ノ岳かその前のピークかは不明 |
初めは小さなアップダウンを繰り返しながら樹林帯を行く。今日のこのコースは距離があるので、はやる気持ちを抑えながらゆっくり歩く。 少しずつ標高を稼ぎながら最後は右側に上り詰めると西穂山荘である。焼岳をバックに赤い屋根がよく似合う。 7時23分、山荘前にいったん降りるがデジカメのバッテリーを交換し、すぐに出発する。 大きな岩が積み重なったような歩きにくい道をしばらく登ると小さなピークに出る。丸山だ。そこからなだらかな道となり、小ピークを二つ越えると独標へ向けての急登となる。 |
しばらくはやさしい道が続く |
下りの細尾根はここから右の長野県側を巻く |
8時6分、30m程の岩場を登り切って西穂独標(2701m)に出る。笠ヶ岳の頂上付近にガスがかかり始めている。水分補給のみで通過する。 ここから奥穂高岳まで大小23のピークがあるらしい。小さなピークを二つ越えて三つ目を一気に登り切るとピラミッドだ。ここも通過する。 さらにいくつかのピークを越えながら標高を稼ぎ、8時55分、狭い急登のガレ場を登り切って西穂高岳(2909m)に出る。 今日のコースを思い浮かべると休んでいるような気分になれず、ここも通過する。 |
鎖は鉄なので錆びている |
この鎖で岳沢側に20m程降る |
いよいよここからは未知の世界だ。小さなピークを一つ越えると切り立った細尾根となるが、ここは岩の間を抜けて岳沢側を巻き、コルへと出る。 さらに小さなピークを三つ持った尾根を越え、比較的円い頂上を持ったピークを越えて一気に標高を落とす。最後は岳沢側への長い鎖を使って下り、間ノ岳とのコルへトラバースする。 |
降った後は長野側の斜面をトラバースする |
コルから西穂高岳を振り返る 上に1人見える |
コルからは岳沢側を50mほど登ったところで稜線を越え、飛騨側に移る。飛騨側は谷状のガレ場になっている。やがてガレ場から岩場にかわり、急登となる。 9時44分、上り詰めたところが間ノ岳(2907m)だった。先行者が1人いたが頂上で休憩していた。ここで小休止を取る。 |
西穂高岳を振り返る 右のピークに数人の人が |
間ノ岳への登り 中央の赤い部分を登る |
間ノ岳の頂上には標識がなく、岩に間ノ岳と白いペンキで描かれているだけだった。不遇な扱いだ。ここまで標識を持ってくるのは大変なんだろう、とはその登山者の弁。 それは解るのだが、間ノ岳がピラミッドピークと同じ扱いというのがかわいそうだ。 |
先行者が1人 |
間ノ岳の頂上の標識はこれだけ |
9時49分、間ノ岳を後にする。細い岩稜の緊張の下りだ。間天のコル近くの細い小ピークを登ってしまい、ペンキの×印に慌てて戻る。ここは飛騨側を巻くのが正しいルートだった。 振り返ると先ほどすれ違った登山者が間ノ岳へと登っていく。その上には頂上で出会った登山者が降りてくるのが見える。 |
間ノ岳を振り返る 頂上下に登山者が1人 |
すれ違った登山者が間ノ岳へ登っていく |
天狗ノ頭への逆スラブを8人パーティーが登っていた。本での知識しかないが、なかなかの迫力である。この緊張感がいい。 コルに立ってみると鎖も張ってあり、それ程危険な感じはしない。逆スラブは鎖と腕の力で一気に登り切る。 |
天狗の頭を登る8人パーティー |
その8人を望遠で引っ張る トップと同じ写真 |
その後はあっけなく頂上に出てしまう。予想に反して天狗ノ頭の頂上は長くて広かった。団体さんが来ても(来ないと思うが)ゆっくり休めそうだ。 先行していた8人のパーティーが休憩していた。先の事を考えてここも通過する。 |
間天のコルへの小ピークは飛騨側を巻く |
逆スラブに張ってある鎖 |
稜線をだらだらと降り、飛騨側への巻道になる。目の前に先行している女性が1人いた。すごいと思い声をかけたくなった。 だが「1人ですか?」とは下心がありそうで聞きにくい。「初めてですか?」と聞く。「はい」の答えにびっくりして「1人ですごいですね」と答えた。 「連れが遅いだけです」。そういえば手前にバテバテの男性が1人いた。 |
8人パーティーと天狗ノ頭の標識 |
天狗ノ頭から奥穂高方面を望む コブノ頭か? |
最後の天狗のコルへは垂直に落ちている鎖場になる。ガイドブックではオーバーハングと書いてあったが、実際は最後の数メートルが垂直になっているだけだった。 |
一瞬ガスが晴れて岳沢が見えた |
天狗のコルと避難小屋跡 下に見えるのは岳沢 |
天狗のコルから先は2週間前に逆コースを辿っている。ここから奥穂まではかなりの標高差がある。まず飛騨側の長いガレ場を登る。 いったん稜線に出て岩歩きとなる。(行き過ぎてしまい、少し戻った)それから又、飛騨側に戻り、狭い岩の間の鎖場を登る。 さらにガレ場を登ると右手に軍艦のような岩(畳岩尾根ノ頭でしょうか?)のある平坦な場所に出る。そこからは大きく岳沢側を巻き、稜線に戻った所が又平坦地になっている。 |
ガスがひいて一瞬天狗ノ頭が見えた |
天狗のコルからは飛騨側のガレ場を登る |
そこに20代の夫婦と思われる登山者が休んでいた。穂高岳山荘まで行くそうだ。奥さんのほうは「歩いても歩いても着かない」とふてくされ気味だ。 3人でいっしょに歩き出すが旦那さんの方だけいっしょに付いてくる。結構危ない岩場なので心配になり「おいてきて大丈夫ですか?」と聞いた。 「これくらいの距離なら大丈夫」との返事だった。が、「帰ってから、怖いんじゃないんですか?」の問いに、立ち止まってしまい、それ以上追ってこなかった(^_^;) |
途中から岩綾歩きとなる |
そこから飛騨側に戻り、最後は岳沢側を巻く |
上がりきったところがコブ尾根ノ頭だった。目の前に裏ジャンダルムが見える。ジャンダルムは穂高岳側(表側)から見た方がかっこいいようだ。 ジャンダルムを越えようとしている4人がいる。その右側に見えるのはロバの耳のようだ。遠くに見えるのは奥穂高か? |
裏側(?)から見たジャンダルム |
ジャンダルムの右に見えるのはロバの耳(?) |
4人はジャンダルムの巻き道の右側へ行く。せっかくだからと直登コースを選んで左側へ回り込む。頂上はすぐだった。 小さなケルンがあるだけの細長い頂上だ。反対側に降りようとするが道らしきものが見えない。巻き道を行った4人が見えたので道が見えないか聞くと、危ないから戻った方がいいと言う。 戻って巻き道をたどる。 |
ジャンダルムの手前の4人パーティー |
左の帯状のところが巻き道 遠くに奥穂高岳 |
巻き道には鎖がなく、風の強い日などは危ないところだろう。 ロバの耳のあたりだろうと思うがどれがロバの耳か分からない。振り返るとジャンダルムの手前に小ピークが見えた。あれがロバの耳だろうか? |
4人は巻き道へ行くがジャンダルムを直登する |
ロバの耳への登り |
急にガスがかかり始め、幻想的な眺めになった。デジカメのスイッチを入れている間にガスに隠れてしまい、シャッターチャンスを逃す。 一瞬を捕らえるのは難しい。 |
ジャンダルムを振り返る |
ジャンダルムの飛騨側の絶壁 |
ロバの耳からの降りにあたるのだろうか、岩場の急な降りで意外と危険な場所だと思う。20m程降ってから横に移動する。そこには鎖が張ってあった。 降りた分だけ又登り返し広いピークに出る。もう一息だ。 |
ロバの耳からの下りは意外と危険 |
馬の背はこの二つの○印の間を通って行く |
二つの丸印の間を抜けると、ナイフエッジ(ナイフリッジ)の岩稜歩きとなる。通称、馬ノ背と言われるところだ。切り立ってはいるが登りなので3点確保さえしっかりしていればそれ程危なくはない。 2週間前にストックを持ったまま降った時は怖かった。ストックなど使える場所じゃなかった。 |
3点確保で登れば危なくはない |
この薄利したような岩は幅50cm 厚さ10cm |
左下の写真は、こんなところにも丸印が付いているのは「間違いなくここが登山道ですよ!」という意味なんだろうか? 右下の写真は、実際は右の方にスラブ状の足場があり、岩のてっぺんに手をかけながら歩けば難しくはない。馬ノ背だからと言って、またがってはいけない。 |
ここは○印がなくても迷わないと思うが... |
怖い人はまたがってもいいが、お尻が痛いぞ |
馬ノ背を越えた後は、なだらかな道をだらだらと登る。ガスで見えないが歩いているだけで奥穂の頂上に着くはずだ。 12時16分、奥穂高岳頂上(3190m)に立つ。奥穂高岳はこのルートの最高峰だ。何も見えないが2回目の休憩を取った。 |
危険な場所はこれが最後 |
奥穂高岳 |
小休止の後、穂高岳山荘に向かう。昨年の10月に歩いたときは、横殴りの風に雪が混じっていた。今日は快適に降る。 穂高岳山荘の赤い屋根が見えてくると最後の急降だ。ハシゴと鎖場で渋滞になっていたが、ここまで来ればもう慌てる必要はない。ゆっくり降りる。 |
穂高岳山荘への最後の下り |
このハシゴと鎖場は渋滞になるようだ |
12時40分、穂高岳山荘前の広場に降り立つ。ロープウエイの西穂高口駅から6時間だった。ペース配分がうまくいったようでそれ程疲れていない 山荘の食堂に入るとラーメンを食べている人が目立つ。昨年、もうここではラーメンは食べないと誓ったのだが注文してしまう。800円。リュックに缶ビールが入っているのだが缶ビールも注文する。これは580円。 水分補給と塩分補給を兼ねてラーメンは完食する。 |
穂高岳山荘前(12時40分) |
ガスが晴れて涸沢が見えた |
夏山の午後は雷が怖い。13時10分、穂高岳山荘を後にする。白出沢は富山から見ると表玄関なのだが、かなりマイナーなようで、誰にも会わない。 降りだしてすぐに雨が降り出した。ガスもかかってきて暗くなってくる。嫌な予感がする。 と、いきなり近くで雷が鳴った。 普通は遠くで鳴って、徐々に近づいてくるものだと思っていた。「何これ? これからは雷様と呼びます。近づかないで下さい。」 |
白出沢への下り |
雨が降って近くで雷が3発なった(^_^;) |
セバ谷の雪渓の近くで4人の登山者とすれ違う。やはり雷を気にしていた。上に行くほど怖いからと、しばらく様子をみるような話もしていた。 下へ行けば安全という訳でもないが稜線で出会うよりはマシだ。どんどん標高を下げる。この日は3発だけだったが3発とも近くだった。 |
落石注意の沢を横切ってから樹林帯の急降 |
重太郎岩切道 |
荷継小屋跡から樹林帯に入る。雨は上がっていた。コメツガの根と岩で出来たような急な降りが続く。樹林帯を抜けると白出沢の右岸の崖に出来た道を下る。重太郎の切り出し道と言われる道だ。 鎖の代わりに鉄筋棒がはってあり、注意して渡れば危なくはない。降りきったところに重太郎橋が架かっている。3寸角を4本束ねた橋だ。 15時、ここで休憩を取り、2回目の乾杯。荷物を軽くする。 |
白出沢にかかる重太郎橋 |
白出沢を渡ってからは樹林帯になる |
10分の休憩後、15時10分、重太郎橋を出発する。そこから先は急なところはなく、気持ちよく樹林帯を歩く。白出避難小屋の手前から雨が降り出したが通り雨だと思い、雨具の上だけをリュックの上から羽織って歩いた。 これが失敗で、雨はやまず、さらに強くなり、靴の中まで雨水が入るようになった。この雨は穂高平小屋まで降り続いた。 穂高平小屋で復旧した登山道の入口を聞くと、やめた方がいいと言う。小屋にいたお客さんまでやめたほうがいいと言う。そこまで言わせて登山道に入るわけにはいかず林道を歩く。 |
白出沢避難小屋 この少し手前から大雨になる |
新穂高ロープウエイに帰り着く(16時55分) |
16時55分、新穂高温泉の駐車場に到着する。着替えぐらい持ってきていればよかった。ズボンは家へ帰るまで濡れたままだった。速乾じゃなかったようだ。 駅の自動販売機で買った熱い缶コーヒーが美味しかった。いつもはコカコーラなのに今日は熱いものが飲みたかった。 体力も時間も余裕を残して帰ってきた。雨にさえ遭わなかったら完璧な山行きになっただろう。 穂高の山々は素晴らしい。このコースを秋にもう一度辿る事を誓いながら471号線を下った。 |