奥穂高岳 |
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所在地 | 長野県穂高町 | |
上高地登山口 | アプローチ | 上高地河童橋 |
登山口標高 | 1505m | |
標 高 | 前穂高岳3090m 奥穂高岳3190m | |
標高差 | 単純1685m 累積(+)1950m 累積(−)1950m | |
沿面距離 | 15Km | |
登山日 | 2004年11月13日 | |
天 候 | 晴 | |
同行者 | 豊本 | |
参考コースタイム 山と高原地図(旺文社) | 河童橋(2時間30分)岳沢ヒュッテ(3時間)紀美子平(1時間40分)奥穂高岳(30分)白出のコル(5時間30分)白出沢出合(1時間30分)新穂高温泉 合計14時間40分 | |
参考コースタイム トレッキングマップ(ジオ) | 河童橋(2時間30分)岳沢ヒュッテ(3時間)紀美子平(2時間)奥穂高岳(40分)白出のコル(5時間20分)白出沢出合(1時間30分)新穂高温泉 合計14時間30分 | |
コースタイム |
河童橋(1時間55分)岳沢ヒュッテ<休憩8分>(2時間54分)紀美子平<休憩20分>(48分)吊尾根途中<休憩5分>(1時間5分)紀美子平<休憩10分>(2時間20分)岳沢ヒュッテ<休憩10分>(1時間33分)河童橋
合計11時間28分<休憩53分含む> |
一週間前に西穂高から見た吊尾根には雪はなかった。上高地の岳沢から奥穂に登り、白出へ抜けてみたいと思った。 穂高を横断するためには車が2台必要となる。何人かに声をかけてみると豊本さんが手を挙げてくれた。 山小屋が閉まっている時期なので多少の不安もあり、ありがたかった。 |
梓川沿いから眺めた穂高連峰、左から西穂、奥穂、前穂 |
雪が降らないことを祈っていたのに、木曜から金曜にかけて雪が降ってしまい、行ってみなければ解らない状態になってしまった。 栃尾の道の駅で朝5時に待ち合わせ、車を一台、新穂高温泉にデポして平湯温泉に向かう。 あかんだな駐車場へは6時に到着し、車の中で各々朝食を済ませる。一台しかいなかった駐車場にも何台かの車が入ってきてほっとする。 6時50分、シャトルバスで平湯温泉バスターミナルに行き、いったん降りて乗車券を買い、又同じバスに乗る。 |
上高地バスターミナルから見た焼岳 |
岳沢の奥に奥穂高岳が顔を覗かせる |
上高地のバスターミナルに降り立ってみると登山者は見あたらない。この時期に山に入ろうとする人は少ないのだろう。 上高地は2日後の15日に営業の終了を予定しているので今年度最後の週末となる。立山の山の中で勤務していた頃の閉山時のうれしさと寂しさの入り交じった複雑な気持ちを思い出しながら眺めると感慨深いものがあった。 7時30分、河童橋を渡る。 |
岳沢から奥穂方面を眺める |
岳沢ヒュッテが間近 |
しばらくは梓川沿いに歩き、岳沢へと左折する。小さな沢に架かっている木の橋をいくつか渡ると徐々に斜度を増していく。 距離の長いコースなのでゆっくりペースを作る。天然クーラーの風穴も今日はその必要もなく、右に見ながら通過する。この時期の風穴は意外と暖かいのかもしれない。 標高1900mあたりから上は登山道にうっすらと雪が積もっていた。獣以外の足跡はない。我々以外の入山者はいないようだ。 9時25分、無人の岳沢ヒュッテに到着する。 |
岳沢ヒュッテを後にする |
テン場を過ぎていよいよ重太郎新道へ |
小休止後、岳沢ヒュッテを出発して重太郎新道へと向かう。急登の日陰部分はまだ凍っているところもありアイゼンを装着した。 二人ともすり減った登山靴だったので凍っていなくてもアイゼンは必要だった。だが岩と雪とのミックスの道でのアイゼンは意外と体力を消耗するようだ。 |
ハシゴを登る豊本さん |
かもしかの立場から西穂、間ノ岳、天狗 |
「かもしかの立場」という場所がある。面白い名前で「俺の立場」はどうなるんだよ、などと突っ込みを入れたくなる。 雪の積もったこの季節の重太郎新道は登山道を歩くと言うよりは岩を登っていると言った方がいいようだ。 岩に書かれた○印を拾いながら歩くが雪の白さに隠れてしまう。雪の季節は黄色いペンキの方がありがたいと思った。 |
雪の付いた重太郎新道の急登にアイゼンを装着 |
岩の露出が多い所をアイゼンで歩く豊本さん |
標高を稼ぐに連れ、左側に西穂高岳、間ノ岳、天狗の頭、ジャンダルムが、右側には明神岳が迫ってくる。その迫力は素晴らしい。 どちらも歩いている方向(前穂高岳の方向)に傾いている。この岩の層が天狗の逆スラブを造り、スパッと切れ落ちた滝谷などを造っているのだろう。 |
右手には明神岳が見える |
乗鞍岳の左に御岳山 |
足場が悪く、予定の時間より遅れ気味になっていく。11時半には紀美子平に着きたかったのだが12時半になってしまう。 小休止を取り、エネルギーを補給する。気温が低く汗をかかないので水の変わりにウイスキーで水分補給とする(^_^) 結局、この日はペットボトルを2本と缶ビールを1本持って行ったがどちらも飲まず、たんにリュックのお荷物になっただけだった。 |
体調が悪かった豊本さんだがこのファイト |
紀美子平と明神岳 |
体調が思わしくなかったようで、豊本さんがちょっと疲れているが、ここからしばらくは水平道に近い道だ。本人もやる気十分なので吊尾根へと向かう。 トラバース道は雪に埋まっていて、左に切れ落ちた雪面になっている。堅い部分とサラサラな部分が不規則に現れ、歩きにくい。 路肩が見えるているので(見えないところもあったが)それほど危なくはない。だが1人だけではないので蹴り込みを入れながら、ステップを切って歩いた。 |
奥穂をバックに...(紀美子平) |
吊尾根の登山道は雪で埋まっており、ストックで バランスを保ちながらのキックステップの連続 |
けり込みを入れた雪が下からの強風に舞い上がって顔面に吹き付けてくる。いよいよ冬山の様相を呈してきた。 尾根の上に出ると目の前に常念岳が見えた。振り返ると前穂高岳が吊尾根の先にせり上がっていて剱岳を見ているようだ。ジャンダルムも手が届きそうなくらい間近に見える。 これを見るために山登りをしているんだと思えるような景色だった。 |
ジャンダルムとロバの耳 |
振り返ると剱岳にように見える前穂高岳が... |
このあたりの標高は2950mぐらいなのでまだ奥穂まで標高差で200m以上ある。怖いのは奥穂から最後の白出のコルへの降りだ。 そこにどれだけの雪が付いているかが分からない。南向きの斜面でさえこの雪なら北西を向いた最後の急降は予想がつかない。 そこまで行って降りられなかった場合、上高地まで戻る体力と時間があるかどうか?無理に降りて滑落の危険を冒すか? うまく降りられても雪の積もった白出のガレ場も歩きにくいだろう。浮き石に乗ったり、岩の間に足を突っ込んでの捻挫の危険もある。 同じ道を帰るのは残念だったが撤退を決意する。 |
吊り尾根の向こうに常念岳が顔を出す |
時間的に縦走を断念して重太郎新道を降る |
撤退を決めたから安全という訳でもなく、慎重にトラバース道を戻る。このときの豊本さんは疲労のピークだったようで、顔色は真っ白で唇は縦にひび割れ、まるで本物の遭難者のようだった。 体調の悪さに気づかず、大変なところまで付き合わせてしまったことを深く反省する。「申し訳ありません」→豊本さん。 |
重太郎新道の降り |
重太郎新道の降り |
紀美子平まで戻り、再びウイスキーで水分を補給をする。気温が低く、缶ビールは飲む気がしなかった。 14時50分、ストックをたたみ、両手を使いながらゆっくり重太郎新道を降り始める。もう17時の終バスは間に合わない。タクシーに乗るつもりだった。 かもしかの立場を過ぎたあたりで雪が少なくなってきたのでアイゼンをはずした。いっぺんに歩きが楽になる。 17時15分、岳沢ヒュッテについた頃にはもう真っ暗だった。ヘッドランプを点け、最後のエネルギー補給をする。ウイスキーのポケット瓶はすでに空っぽだった。 |
焼岳が光線の加減で富士山のように見える |
岳沢ヒュッテで日没となる(焼岳と乗鞍岳) |
19時、河童橋に到着する。ホテル白樺荘に飛び込み、タクシーの手配を頼むと釜トンネルは19時で閉鎖されてタクシーは呼べないと言う。 しょうがなくそのホテルにチェックイン。2人だけの大宴会で盛り上がることとなってしまった(^_^;) |
反省その1.この時期の3000mの山は季節風と積雪と気温に細心の注意が必要。 実際、雪の心配をして白出の方から登ろうとも思った。白出沢と白出のコルからの登りをクリア出来れば、上高地のほうに降りるのは比較的楽だし、引き返すことも出来ると思ったからだ。だが上高地発の終バスの時間が17時というのがネックでやめた。 反省その2.岩と雪とのミックスでのアイゼンは想像以上に体力を消耗する。 本には書いてなかったが、今回の重太郎新道の経験で解った。 反省その3.交通情報は事前に出来るだけ正確に調べておく。 終バスの時間はチェック済みだったが、釜トンネルが夜間閉鎖だとは知らなかった。 及第その1.頂上まであと200mのところで引き返したこと。 もう少しだからと無理をしていたら多分、危なかった。ツエルトは持っていたがあの強風と寒さでは耐えられる自信はない。 |