立山(雄山)



雪の大谷出口付近での除雪風景(2004年4月10日撮影)

所在地立山町
弥陀ヶ原 アプローチ立山駅からケーブル、バスで1時間弱
登山口標高1930m
標   高3003m
標高差単純1073m
沿面距離7Km
登山日2004年4月10日
天 候
同行者単独
コースタイム弥陀ヶ原(1時間12分)天狗平(43分)室堂(1時間5分)一ノ越<休憩15分>(28分)室堂(32分)天狗平<休憩12分>(53分)弥陀ヶ原 合計5時間20分<休憩27分含む>


左に唐沢岳、中央奥に燕岳、常念岳、大天井岳、右へ野口五郎岳、槍ヶ岳、穂高連峰(一ノ越から)

 アルペンルート営業再開の初日に雄山の頂上に立ちたいと思っていた。決算の真っ最中で皆に迷惑をかける事になるが他の日では意味がない。心の中で謝りながら山に向かった。


立山駅のオープンセレモニーの横断幕
 

美女平駅でのスタッフ達
 
 8時過ぎに立山駅の駐車場に車を停める。8時40分の始発のケーブルまでしばらく時間があるので、駐車場で時間をつぶし、立山駅の隅で始発のケーブルを待つ。仲間の働いている所へ遊ぶに行くのはやはり気が引ける。
 佐藤武彦さんと久しぶりに顔を合わせ、話をする。相変わらずのご活躍で今日はお客様を連れて弥陀ヶ原ホテル泊まりとの事。「熊のアップの写真を撮りたい」などと言っていた。
 美女平でバスに乗るところをテレビカメラに撮られ、隠しようのない事実として県内放送されてしまう。
 後日、会社の常務会でも放映され、ドジを絵に描いたような最悪なスタートとなった。


弥陀ヶ原ホテル前
ホテルの壁にはまだバスより高い雪の壁が

雪の中から掘り出された弥陀ヶ原駅
10時45分出発

 9時始発のバスは報道関係者も乗り合わせ、撮影のためにゆっくり走る。そのため弥陀ヶ原到着が10分遅れの9時40分だった。
 9時45分、弥陀ヶ原を出発。除雪された県道は歩行禁止なので、300m程歩いたホテルの300トン水槽へつけられた雪の階段から雪面にとりつく。10歩ほど歩いてすぐ戻った。雪面がカリカリに凍っていてステップが切れない。アイゼンを履いて再び歩き出す。


弥陀ヶ原ホテルと鍬崎山(2090m)
 

称名峡谷一ノ谷付近と関学のヒュッテ
 
 高度を稼ぎながらオオシラビソの樹林帯をトラバースしていく。美松下のヘアピンカーブあたりは灌木が雪の下になり、スキー場のようになっていた。滑落したら除雪された道路に落ちてしまう。
 初めて弥陀ヶ原ホテルに勤務した日にスキーヤーが道路に落ちて亡くなった事を思い出す。30年ほど前の6月1日だった。今はまだ4月、雪の高さはもっとある。
 ストックをピッケルに代えて、いったん道路際まで降りる。せっかく稼いだ標高だが安全を第一とする。それで安全というわけではないが、スピードをつけて落ちるよりはましだろう。慎重にトラバースして樹木のあるところで一気に直登して美松坂に出る。


天狗平へ向かってのトラバース
 

天狗平に置いてあった山岳警備隊の雪上車
 
 美松には関西学院大学のヒュッテがあり、その三角屋根を雪の上にのぞかせていた。遠くには称名峡谷の一ノ谷付近が見える。
 ここからは危険なところもなく、天狗山の裾を天狗平に向かってトラバースして行く。左には奥大日岳、七福園、中大日岳と連なっている。中大日岳の雪庇がすごい。
 天狗平で道路を渡り谷側を歩く事にする。山側は取材陣でいっぱいのはずだ。


雪上車の跡をたどる
正面は国見岳、左奥が浄土山

ロータリー除雪車による高原道路の除雪風景
車体は見えないが吹き上げられる雪が見える

 ホテル立山に向かって直進する予定だったが、雪上車の跡があるのでそのトレースをたどる。雪面に吹き上がる雪はロータリー車による除雪のようだ。大勢の取材陣がカメラを回している。こちらにコースを取ったのは正解だったようだ。
 ターミナルの駐車場は除雪の最中だったので、いったん大谷を降り、登り直してホテルの裏に回る。
 室堂平には縄が張ってあり、指定範囲以外へは出られないようになっている。登山者は届けを出せば出られるという事だ。営業再開の時期を早めるとスキーヤーやボーダーが山に入り、環境を破壊するおそれがあるからだと言う。自然保護の観点からの処置らしいが素直に納得する気にはなれない。
 縄の外から来たものが、いったん中に入って外に出る許可をもらうのも変なので、そのまま雄山に向かう。監視員は2カ所にいたが何も言わず見送ってくれた。


ホテル立山と別山、左奥に剣岳
 

一ノ越山荘。頂上を往復して弥陀ヶ原まで戻る
体力と時間がないと判断。 頂上を断念。

 標高を落としたくないので浄土山の裾をトラバース気味に行く。左に見える室堂山荘は営業再開に向けての除雪中だった。
 浄土山の北斜面は雪が柔らかく歩きにくくなる。小休止を取ってアイゼンとピッケルをかんじきとストックに代えた。振り返るとスキー登山者が2名後を追ってきていた。
 時間に追われてピッチをあげ過ぎたのかペースが落ちてくる。最近覚えた疲れてきたときの歩き方、「休まずに歩き続けられる最高のスピード(ペース)」をつかむ。そしてそのペースを維持する。
 我慢の登りだったが一人には完全に置いていかれた。


一ノ越にあるトイレは埋まっていた
 

13時、一ノ越を後にする
弥陀ヶ原の終バスは15時55分

 12時45分、もう一人の方といっしょに一ノ越に立つ。一ノ越山荘はまだ雪の中だ。弥陀ヶ原から一ノ越までは3時間だった。弥陀ヶ原の終バスは15時55分なので残った時間は3時間10分しかない。
 普段なら50分もあれば雄山を往復出来ると思うが体力があまり残っていない。体力を使い切った後で弥陀ヶ原まで2時間で降りられる自信もない。残念だが頂上をあきらめるしかなかった。
 ビールで乾杯した後、13時、一ノ越を後にした。スキーの人達も室堂に引き返すらしい。


浄土山の裾をトラバース気味に室堂へ
 

ホテル立山と中大日岳
 
 祓堂までは一気に駆け下りるが、その後の浄土山の裾野のトラバースが斜度もなくなり、辛い歩きとなった。
 室堂から天狗へは登りとは逆の国見岳側を歩く。雪の大谷を見下ろしながら雪上車の跡をたどる。雪の大谷を見た感じでは今年の積雪は少ないようだ。15mにも満たないかもしれない。


国見岳の裾を走る雪の大谷
 

雪の大谷、奥に大日連山
 
 天狗平までは水平道を歩いているようで、疲れから辛い歩きとなった。圧雪車のキャタピラの跡でさえ足にこたえる。
 途中、国見岳の裾から見る剣岳が美しい。富山県条令がなかったら連休中に登りたい山だ。(昨年は県条例を知らなかったので登ってしまったが...)
 天狗平で日焼止めを塗るが手遅れだった。ゾンビのような顔で1週間を過ごした。
 室堂から圧雪車で降りてきた会社の仲間が14時半の天狗平からの通勤用のバスに誘ってくれた。頂上にも行けず、バスにも乗ったでは情けない。14時10分、丁重にお断りして弥陀ヶ原を目指した。


国見岳の裾から見た剣岳
 

大日岳と美松のヘアピンカーブ(通称)
 
 午前中凍っていた美松のヘアピンカーブの斜面も柔らかくなっていた。帰りは、かなり高い位置を歩く。ヘアピンカーブの向こうに大日岳が美しい。
 雪が柔らかくなっているとは言え斜面は急だ。慎重に歩を進める。弥陀ヶ原ホテルの水槽のある場所で道路を横切り、ホテルに向かって直進した。
 15時5分、ホテルに到着する。終バスまで50分の余裕があった。50分あれば一ノ越から雄山頂上まで往復出来たはずだが、その時は又疲れ方が違って時間内に弥陀ヶ原まで戻れなかったかもしれない。来年にかけよう。


鍬崎山と弥陀ヶ原高原
手前に見えるのは弥陀ヶ原ホテル

弥陀ヶ原駅前に停めてあったロータリー除雪車