水晶岳 鷲羽岳 三俣蓮華岳



鷲羽岳から見た黒部五郎岳(2004年9月19日撮影)

所在地富山県大山町 長野県
高天原〜
 黒部五郎小屋
アプローチ
高天原標高2130m
黒部五郎2340m
標高差累積(+)1500m 累積(−)1290m
沿面距離16Km
登山日2004年9月19日
天 候雨後晴れ
同行者単独
参考コースタイム
 山と高原地図(旺文社)
高天原(2時間20分)ワリモ北分岐(1時間30分)水晶岳(1時間20分)ワリモ北分岐(1時間)鷲羽岳(1時間)三俣山荘(1時間)三俣蓮華岳(1時間30分)黒部五郎岳
合計9時間40分
コースタイム高天原(3時間13分)ワリモ北分岐(59分)水晶岳(58分)ワリモ北分岐(54分)鷲羽岳<休憩54分>(35分)三俣山荘<休憩15分>(47分)三俣蓮華岳(1時間13分)黒部五郎岳
合計9時間50分<休憩1時間10分含む>


 高天原山荘の夜は雨風の音で何回も目を覚めさせられた。暗い中で5時前から皆ごそごそし始める。我々も荷物をまとめる。
 朝食は5時半からだった。皆と一緒に下山するか、一人で岩苔沢を登るか、迷ったまま朝食を終える。
 6時20分、雨の中、小屋を出発する。小屋から数分で岩苔沢への分岐点に出た。これ以上決定を延ばせない。
 だが意外と歩き出してしまった後、心は決まっていた。二人と別れて岩苔沢を登る。


この稜線を秋元、中林が登っているはず
 

これから登っていく岩苔沢を見上げる
 
 雨の中、樹林帯を登る。一人になってみると熊鈴を忘れたことが気になりだす。お互いに会いたくはないのだろうが出会い頭ということがある。
 声を出したり、ストックを打ち鳴らしたりしながら歩いた。
 途中に水晶池への分岐点があった。しばらく辿ってみたが、どんどん下っていて、距離も分からないので引き返した。
 せっかくの看板なので池まで何キロとか書いてあればいいと思った。


岩苔沢を振り返ると薬師岳が正面に見えた
 

岩苔乗越
 
 急におなかが痛くなってくる。背に腹は代えられずトイレットペーパーを持って藪に入る。雨具を着たままの急斜面ではやりにくい。雨でトイレットペーパーは濡れるし、さんざんな目にあう。情けなくなり、本日一番落ち込んでいる時間だった。
 気を取り直して樹林帯を登る。雨が上がってくると徐々に明るくなってきた。薬師岳の上に青空が広がってくる。薬師岳の左に見える高天原峠から続く稜線を眺め、秋本と中林が歩いているのを想像する。
 目の前に岩苔乗越が見え、左側には水晶岳がその黒い山肌を見せ始める。広がる青空が単独でこちらに向かった事のご褒美のようだった。


岩苔乗越から見た水晶岳
 

ワリモ北分岐にリュックをデポ
 
 稜線に出てしまえば水はない。最後と思われる岩苔沢で2リットルのナイロン袋に水を補充する。
 9時15分、岩苔乗越へあっけなく着いてしまった。振り返ると岩苔沢の上に薬師岳がその大きな山容を誇っている。雲ノ平も遙か下に見える。
 ここから南に向かえば三俣蓮華は近い。だがそのときは水晶も鷲羽もあきらめなければいけない。迷わずワリモ北分岐へ向かう。
 9時33分、ワリモ北分岐。ここまでコースタイムよりも1時間も遅い。テントを担いでいるせいだろうか?


水晶岳
 

水晶岳頂上
 
 ワリモ北分岐でリュックをデポして水晶岳に向かう。リュックをおろすと嘘のように体が軽い。水晶岳へは走るように向かう。
 右に見える白い山は野口五郎岳のようだ。堂々としたきれいな山だ。そしてそれに連なる山並みは裏銀座にあたるのだろう。
 稜線から少し右に降ると小さな小屋があった。水晶小屋だった。小さいとはいえ裏銀座との分岐点(合流点?)に建っている大事な小屋だ。
 10時32分、最後の急登を登り切って水晶岳頂上に立つ。その先に赤牛岳が続き右下に黒部ダムも見える。
 薬師岳から続く越中沢岳、鷲岳、浄土山、立山も見える。後立山は針ノ木、蓮華の先はガスでよく見えなかった。  


赤牛岳と右奥に黒部ダム
 

野口五郎岳は真っ白だった
 
 小休止の後、水晶岳を後にする。今日の宿泊予定地は雲ノ平を挟んで向こうに見える黒部五郎岳のテント場だ。先を急がなければいけない。
 後で分かったのだが、水晶小屋の裏が赤岳だった。ほとんど登る価値なしみたいな山だったが知っていれば登っただろう。


水晶小屋 正面が客室
 

水晶小屋を後にする
 
 小屋を出てすぐのところで若い二人が笑顔を向けてくる。誰だろうと思ったら高天原でいっしょになった池袋からの二人だった。
 もうすっかり意気投合している。女性の方は三俣蓮華に泊まると言っていたはずで、男性の方は双六小屋まで行くと言っていた。
 だが「もうここまできちゃったので、いっしょに三俣に泊まるつもりです」と言っていた。『ここまできちゃった』とはどういう意味なんだ?と思わず突っ込みを入れたくなったが思いとどまった(^_^;)
 もう手でもつなぎそうな勢いの二人と別れて11時30分、ワリモ北分岐に戻る。


ワリモ岳は頂上の下に標識がある
 

鷲羽岳からワリモ岳を振り返る
 
 ワリモ北分岐から再びリュックを背負い、だらだらと登る。11時48分、ワリモ岳の標識に到着する。
 頂上はすぐ上なのだが道がない。赤岳に続いてここもパス。ワリモ岳からだらだらと降り、又、だらだらと登る。
 12時26分、鷲羽岳の頂上に到着する。ビールがないのでウイスキーで乾杯! (水晶岳へは空身でいったので財布を忘れ、水晶小屋でビールが買えなかった)
 ちょっと格好悪いと思ったが、カップラーメンを作る。お湯で作る白飯やドライカレーなどもあったが、ラーメンが一番簡単だった。


鷲羽岳頂上
 

大天井岳、常念岳が近くに見えた
 
 ガスが引いてきて針ノ木の後ろに、鹿島槍ケ岳、五龍岳、白馬槍ヶ岳、白馬岳、白馬旭岳などが見えだす。
 東側には餓鬼岳、燕岳、大天井岳、常念岳が続き、手前に槍の北鎌尾根、さらに手前に硫黄岳が見える。残念ながら槍ヶ岳はガスの中だった。
 約1時間の休憩後、13時20分、鷲羽岳を後にする。降り始めるとすぐ目の前に池が見えた。鷲羽池だった。


鷲羽池と大天井、常念、北鎌尾根、硫黄岳
 

鷲羽から見た三俣蓮華岳、丸山、双六岳
 
 ガレ場、ザラ場をだらだらと降り13時55分、三俣山荘に到着する。小屋の前では従業員のお姉さん達が休憩を取っていた。
 この日1本目の缶ビールで喉を潤す。お姉さんによれば三俣の巻き道は足場が悪いので頂上を越えていった方がいいとの事。時間もあまり変わらないらしい。
 「頂上まで1時間!」と言う。「リュックを担いで?」に「1時間10分」が帰ってきた。
14時10分、小屋を後にする。


三俣山荘
 

三俣山荘フロント兼売店
 
 途中のベンチで学生らしい二人の女性が休憩していた。なんとなくゆっくりしている。いや、とってもゆっくりしている。スタイルもピクニックのようだ。そして私のリュックがまだ新品だとか余計なことを言っている。
 双六小屋まで行くと言っているが動きそうにない。「まだ少し距離があるから急いだ方がいいよ」と言い残して頂上に向かった。
 上から見下ろしてみると、双六への巻き道と三俣頂上への分岐点で迷っている。ストックで近道の方を指したのだが、うなづいてこちらの方に登ってくる。
こちらも関わっている余裕はないので先を急ぐことにする。暗くなる前にはなんとか双六小屋に着けるだろうとは思ったが、色々な人が山に来ているようだ。


三俣蓮華岳への登山道から鷲羽岳を振り返る
 

三俣蓮華岳頂上
 
 途中ですれ違ったTシャツ姿の男性は三俣山荘に寄ってから黒部五郎小屋に行くと言っていた。登り方にも色々なバリエーションがあるようだ。
 14時57分、三俣蓮華岳の頂上に立つ。三俣山荘から47分だった。リュックの重さにも慣れてきたのだろうか?
 頂上から西に向かって降り始める。リュックの重さと勢いを片足で受け止めなければいけない。リュックが重いと降りもそれなりに辛い。
 黒部五郎小屋への最後の急降は岩が露出した沢のような道で、これも辛かった。


黒部五郎小屋に到着
 

黒部五郎小屋
 
 16時10分、黒部五郎小屋に到着する。小屋のフロントでテン場を借りて缶ビールを調達する。面倒なので夕食もお願いした。
 初めてのテント設営でとまどう。家の中でバラしてみたことはあったが組み立てるのは今回が初めてだ。手順前後もあったが何とか組み立てた。
 夕食は6時からだ。一人でテントの中にいても暇がつぶせない。談話室もあるから早めに来ていて下さいと言われていたのを思い出して5時半頃小屋に入る。
 談話室はいっぱいで入れる余地がない。それだけじゃなく入れる雰囲気でもなかった。帰ろうかと思ったが廊下でもテントより暖かい。


黒部五郎小屋の夕食(少し食べた後)
 

先週、奥丸山へいっしょに登った友人達と遭遇
 
 もたもたしている時、見たことのある人が通りかかった。なんと先週奥丸山にいっしょに登った夏江さんだった。
 夏江さんがいるということは深雪さんもいるはず。部屋に行ってみると二人は個室をぶんどっていた。
 このあたりの山小屋には顔が利くらしい。おまけに山岳警備隊にも顔が利くらしく非番の山岳警備隊の若者を1人ボディーガードとしてつれて来てた。
 寺地山から北ノ俣を越えて黒部五郎まで1日で来るのが夢だと言っていたが、それを実現したようだ。不安だったので山岳警備隊員を要請(?)したらしい。


初めてのテン泊
 

テントの中はぐちゃぐちゃ(初心者なので)
 
 早速個室で小宴会。さらに食堂でも合流して小宴会。小屋のご主人からのビールの差し入れもあり、とんでもない展開になっていった。「山は広いようで狭い」
 いつまでも騒いでいるわけにはいかないのでテントに戻り一人寂しく寝ることにする。祭りの後の寂しさを実感。