日照岳



日照岳頂上から御母衣ダム湖を見下ろす(2005年3月27日撮影)

所在地岐阜県白川村、高山市
御母衣湖登山口 アプローチ国道156号線御母衣ダム湖
登山口標高767m
標   高1751m
標高差単純984m
沿面距離Km
登山日2005年3月27日
天 候快晴
同行者豊本
コースタイム 登山口(1時間39分)1160mピーク<休憩5分>(1時間35分)1534mピーク<休憩5分>(1時間5分)日照山頂上(1時間23分)登山口
 合計7時間11分<休憩1時間14分含む>


 土曜日の夕方、豊本からメールが入る。日照岳へスキー登山に行こうと言う。翌日の予定はまだ決めていなかったので渡りに船と即決した。
 6時、桜ヶ池クアガーデンで待ち合わせる。予定より20分ほど早く落ち合い、高速で白川郷まで走る。御母衣ダムの湖畔のトンネルを出たところで空いたスペースに車を停めて身支度をする。
 右側の尾根にスキーで滑った跡があるのみで他に足跡は見あたらない。


国道156号線からいきなりこの尾根に取り付く
 

初めはなだらかな広い雪原を行く
 
 7時6分、道路脇でスキーをはき、標高差1000mを意識しながらペースを作る。なだらかな歩きやすい沢沿いを400m程登ると谷が深くなってくる。
あらかじめ辿る予定だった左側の尾根も急に斜度を上げて行くようなので沢を離れて尾根へとトラバースする。この尾根が最初の急登である。
 ラッセルは20cm前後の深さで苦にはならないがシールに雪が付き、重い。スキートップの表側にも雪が付き、重さを倍増させている。豊本にシール用のワックスを借り、しばらくは快適に標高を稼いだ。


右奥に見えるのは1534mピーク
 

急登ではジグを切る
 
 急登を登り切ったところが1160mの小ピークだ。一息入れる。ブナに混じった立派な針葉樹は檜のようだ。
 このピークからやや右にコースを変え西に向かって第二の急登となる。シールワックスを塗ったにも拘わらず又、雪が付き出す。湿雪と新雪を繰り返すとよくないようだ。表面が太陽熱で湿雪になっていて中が粉雪という場合など一瞬で雪が付く。
 湿雪の尾根を避けて右側の北斜面にジグを切って行く。いったん棚のような尾根に出た後、同じく西の方向へと急登が続く。


滑りやすそうなブナ林の尾根
 

靴擦れをものともしない豊本さん
 
 2週間前の唐松岳では天候が悪かったのでツエルトや非常食など、フル装備だったのでリュックが重かった。そのため、滑りを楽しめなかった。転倒して打った胸がまだ痛い。
 その教訓から思いっきり荷物を軽くした。もちろん天候もいいからだ。装備は防寒具、ヘッドランプ、医薬品、ミニ工具セット、雨具ぐらいで20リットルのリュックで十分、事足りた。
 食料はパン1個とおにぎり1個、ポカリスエット1本、それに缶ビールが1本とスルメ。非常飲料としてコンビニで買ったウイスキーのポケット瓶1本はおまけである。


北側に姿を現した三方崩山
 

雪庇の彼方に御母衣ダム湖
 
 標高を稼ぐにしたがって廻りの風景が変わってくる。北側に白く鋭利な頂上を見せているのは三方崩山のようだ。大白川からの平瀬道を行くとき、右側に見える山だ。
 10時30分、1534mピークに到着。靴擦れに悩まさている豊本がやや遅れている。
 天気はいいのだが南側からの風が強く、体温を奪われないようにセーターを着込んだ。内側から暖めるためのウイスキーも少しいただく(^_^)
 小休止の後、やや左にコースを変え、南西に向かって尾根を登る。前の三つの急登に比べればなだらかで雪質も変わり、歩きやすい。


山頂下のなだらかな斜面
 

日照岳山頂 彼方に白山
 
 前方に見えるピークが南側からの大きな雪庇を持った尾根との合流点のようだ。そこまで登り切ってしまえば頂上は目と鼻の先のはずだ。気合いを入れ直して一気に登り切った。
 この合流点から西に方向を変え、樹木の少ないなだらかな斜面を登って11時50分、頂上に立つ。
 頂上は長径が15m程の楕円形で四方が見渡せる。西の方角に見える真白な山は白山だ。昨日積もった雪のせいもあるが、その真白な独立峰はおおらかで神々しい。流石に加賀の名峰である。左に別山が連なり、右に見えるのは野谷宗司だろうか?
 遙か南側に見える大きな平原は日本海と太平洋の分水嶺、ひるがの高原のようだ。何故か、若い時に初めて見たときから憧れを持ってしまった高原だった。


西側に見えるピークは山頂より3m高い(^_^;)
 

北西に見える霊峰白山
 
 頂上に立ったとき、西に続く尾根の先がこちらより高く見えたのでそちらが日照岳の頂上かと思った。が、足下に日照岳頂上の標識があり、ほっとした。だが、地図で見ると確かに向こうの方が3m高い。
 南側からの風が強いので北側の斜面に降って昼食をとる。目の前に三方崩山、左側に白山を望みながら乾杯。
 軽量化を図ったのでつまみは小さなスルメだけだった。少しのお酒と少しのつまみと言うのが、静かな山に似合っている。
 慎ましい宴だったがあっという間に時間は過ぎる。12時54分、四方の風景を目に焼き付けて頂上を後にした。


山頂を後にする
 

御母衣ダム湖をバックに
 
 右側の雪庇に気をつけながらシュプールを描く。パウダーとは言わないまでも雪質はかなりいい。灌木が少なく樹木同士の間隔が広いのもスキーにはもってこいだ。
 刈り開けて圧雪されたゲレンデを滑るのも楽しいが、本来、自然の中を自由に滑るのがスキーだったはずだ。そう確信させるほど未知な斜面への滑降は楽しい。


右の雪庇を気にしながらの滑り
 

雪質はだんだん重くなってくる
 
 標高が下がるに連れ、雪が腐ってくる。重い雪面にスキーを突っ込んでしまい、一回転してしまう事も何回かあった。
 そういう事も全て縫合して楽しいのがバックグラウンドスキーだ。登山靴ではなくスキー靴だったら、スキーがもう少し長かったら、小さな雪庇ぐらいダイブしてしまっただろう。


真白なオコジョが目の前を通り過ぎた
 

巨大バームクーヘン(置いてあるのは携帯電話)
 
 小休憩の時、小さな白いものが走るのが目の端に止まった。見るとオコジョのようだ。初めて見たオコジョが冬の真白に変身したものだった。木の淵の雪の穴からこちらを伺っている顔がその凶暴さに似合わず可愛い。
 最後の急登を滑り降りて止まったとき、後ろから雪の固まりがぶつかってきておもわずよろけてしまった。自分で作った雪のバームクーヘンが追いかけて来たのだった。無防備だったのでかなりのショックを受けた。
 14時17分、1000mの滑降の余韻を楽しみながら、最後の緩斜面を滑り終え、道路脇に降り立つ。


駐車場所まで無事帰り着く
 

ロックフィールダムの御母衣ダム
 
 日はまだ高く、廻りを見渡すと名残を惜しむかのように青い山が迫ってくる。風の臭いも霞んだ景色も、もう冬山が終わったことを告げていた。

注意1.
 降るとき、1534mピークで真っ直ぐ降りてしまうと別の尾根へ降ってしまう。そちらの方が明瞭な尾根で間違えやすいので気をつけよう。視界が効けば途中で右への支尾根へ修正をかければ近くに戻れるが、左の支尾根を辿るとトンネルの上を越えてダム湖畔まで降りてしまう。

注意2.
 駐車スペースが道路脇の広くなっている部分しかない。正式な駐車場ではないので気をつけよう。