上高地散策



河童橋から奥穂を望む(2005年4月2日撮影)

所在地長野県上高地
釜トンネル アプローチ国道158号線釜トンネルから
登山口標高1310m
標   高1510m
標高差単純200m
沿面距離片道6.5Km
登山日2005年4月2日
天 候曇り
同行者単独
コースタイム 釜トンネル(43分)大正池ホテル(44分)河童橋<休憩27分>(1時間22分)釜トンネル
 合計3時間26分<休憩27分含む>


 山でのんびりしてみたくなり、ゆったりした山を思い浮かべようとする。が、意外とレパートリーが少ない。ふと、神岡の友人が上高地に行ってきた事を思い出す。午後から1人で穂高の夕焼けを見に行ったらしい。孤独力を鍛えたかったという、勇敢な女性である。
 うん、静かな上高地の雪上漫歩もいいかもしれない。穂高連峰を眺めながら1人、コーヒーを飲んでいる姿が目に浮かんだ。


中ノ湯温泉への分岐点に車を停める
 

新旧釜トンネルと中ノ湯温泉売店出店
 
 行き先が上高地なのでゆっくり、8時頃、家を出る。コンビニで粗挽きソーセージやカップスープなどを仕入れる。上高地はやはり、おでんやラーメンという雰囲気ではない
 41号線から472号線に入り、栃尾温泉で右折して蒲田川を渡り、平湯温泉へと車を走らせる。栃尾温泉手前で見えた真っ白な焼岳が上高地への期待を盛り上げる。
 安房トンネルを出てすぐ左の中ノ湯温泉(安房峠方向)への入り口に車が数台停めてあった。スキーを担いだ5人が出て行くところだった。


釜トンネルのツララ
 

大正池と岳沢、穂高連峰
 
 その空いているスペースに車を停める。身支度をしている間に松本ナンバーがもう1台入ってくる。車を停めて普段着のまま出て行こうとしている。
 何処へ行くのか尋ねると、釜トンネルを抜けて行けるところまでとの事。ショルダーバッグを担いだ男性と、その腕に捕まりながらのアベックが釜トンネルの方へと消えて行く。イメージとはミスマッチな2組に、やや気勢をそがれる。


雪に埋もれた上高地帝国ホテル
 

河童橋と西糸屋
 
 釜トンネル入り口の標高は1300mを超えている。念のためアイゼンとスノーシューを持ち込むことにする。小さな25リットルリュックにアイゼンを詰め込んだ代償はストーブだった。ストーブがなければ、粗挽きソーセージやカップスープにコーヒーも意味がない。乾杯用のおつまみはサラミサーセージだけになってしまった。
 駐車場所から釜トンネルまでは約200m。9時54分、旧釜トンネルに取り付く。トンネル部分は中央だけで両端はスノーシェードになっている。
 大きなツララが何本も下がっていて、ここはまだ冬であることを感じさせた。


梓川に戯れる(餌を求める?)鴨達
 

河童橋近くには数組のパーティーがいた
 
 先行していたアベックをトンネルの中で追い越し、トンネルを出てから5人のスキーヤーを追い越す。5人は恥ずかしそうに焼岳滑降の偵察だと言っていた。焼岳を滑降するなんて格好いいのに、何故恥ずかしそうにしているのだろう?
 トンネルを出てからは雪上散歩だと思っていたのだが、道路は除雪されていた。そう言えば立山だってもう室堂近くまで除雪されいている。
 山奥にまで除雪機械を入れる事は環境破壊とは言わないまでも、自然の景観を損ねているのは確かだ。自分の職場であるアルペンルートも謙虚になるべき事は多々あるだろう。


春を待つ河童橋
 

河童橋と焼岳
 
 大正池の彼方に穂高連峰が姿をあらわし始めた。独標から奥穂までノコギリの歯のように連なり、岳沢を挟んで右側に前穂、そして明神岳が大きく手前に張り出している。
 引き返してくるパーティー何組かとすれ違う。どのパーティーも高齢だ。
 車道歩きが嫌になりかけた頃、左側に上高地帝国ホテルが見えた。前の広場を除雪しているらしく、ブルドーザーの音が聞こえ、黒煙が上がっていた。
 しばらくしてバスターミナル前に出る。この広場はまだ除雪されていない。不思議と、単なる雪景色より、雪に埋もれた建物を見る方が山深く分け入ったような気分にさせてくれる。
 バスターミナルから道路を離れ、梓川の畔に沿って歩く。積雪量は少なく、1mぐらいだった。


梓川右岸を降るパーティー
 

上高地にはこんなパーティーも?
 
 11時21分、河童橋到着。五千尺ホテル前では数組のパーティーが宴会中だった。道路の除雪もここまでのようだ。
 河童橋を対岸へ渡っていく人。対岸から現れて渡ってくる人。廃墟の街を亡霊が彷徨っているような、不思議な光景が目の前で繰り広げられていた。
 サラミをかじりながらの缶ビール。左から独標、ピラミッド、西穂、間ノ岳、天狗の頭、奥穂と連なる岩稜に今年は何回、足を運ぶことになるのだろう。


本年6月でその役目を終える旧釜トンネル
 

トンネル入口にはタクシーが4台停まっていた
 
 11時58分、河童橋前を出発。林道歩きはうんざりなので、まだ除雪されていない右岸を歩く。坪足でのザラメ雪は滑って歩きにくい。
 穂高橋を渡り、帝国ホテル横を通って左岸の林道に戻る。後は又、退屈な林道歩きを続け、13時20分、釜トンネルを抜けた。
 釜トンネル入り口にある中ノ湯の売店前にいたタクシーの運転手が声をかけてくる。タクシーが4台も停まっていて、冬季限定のタクシー乗り場になっているようだ。
 売店でコーラを買って車に戻る。来年はもう少し早い時期、除雪される前に訪れよう。そうすれば今日よりさらに素敵な雪の上高地に出会えるだろう。