毛勝山



阿部木谷から大明神沢出合付近を見上げる(2005年6月4日撮影)

所在地魚津市、宇奈月町
片貝川登山口 アプローチ片貝川左又谷から阿部木谷にはいる
登山口標高930m
標   高2414m
標高差単純1484m
沿面距離片道4.6Km
登山日2005年6月4日
天 候晴れ後曇り
同行者単独
コースタイム 駐車場所(13分)最終堰堤(2時間47分)毛勝山頂上<休憩25分>(58分)最終堰堤(17分)駐車場所
合計4時間40分<休憩25分含む>


 先週辿った猫又谷雪渓の美しさに魅了されてしまった。そうなると毛勝谷の雪渓が気になりだす。(山が)逃げないうちに登らなくてはいけない。他の山に優先して毛勝山を選ぶ。
 先週、片貝の第四発電所の先で通行止めになっていたのが気にかかる。ネットでは片貝山荘まで車で入っているようなので、多分大丈夫なのだろう。


駐車場所から毛勝谷を見上げる(6時00分)
 

最終堰堤までの道が悪かった(昔は車道?)
 
 片貝の第四発電所の先に通行止めの看板が立てられていた。だが入ってはいけないという雰囲気はない。この看板は「何かあっても自己責任で」という意味なのだろう。
 2Km程走ると右側に片貝東又発電所が見えてくる。その前の廃墟のような建物が片貝山荘のようだ。元は発電所の宿舎だったのだろうか。山荘の名からはほど遠い。
 その少し先で右折して東又谷の橋を渡り阿部木谷を登る。堰堤の上を走り左岸に渡って300m程で広場に出る。車が2台停まっていた。ここで車を降りる。


最終堰堤の上は10m程のゴーロ帯
 

雪渓に一個所穴があいていた
 
 登山靴を履き、スパッツをつける。上流を眺めると堰堤が連なっている。最終堰堤とはどれだろう。
 6時ちょうどを待って林道を歩く。ヘアピンを2回折り返したら雪渓が現れた。その先は道が悪い。以前は車道だったようだが灌木が生えていて歩きにくい。
 横の土手をつたって上った堰堤が最終堰堤だった。予備知識通りのゴーロ。それも10m程で雪渓の下になる。阿部木谷は猫又谷とは違って幅が狭く、両側面が切り立っている。
 一部雪渓に穴が開いていた。穴の深さを見たかったが怖くて近づけなかった。しばらく雪渓の真ん中と両サイドは避けて歩いた。


上に見えるのが大明神谷、毛勝谷は左に迂る
 

大明神谷出合から左に曲がり毛勝谷雪渓を登る
 
 阿部木谷の雪渓は最終堰堤の少し先で右にカーブしている。そこを曲がると正面に尾根が見え右に雪渓が延びている。この雪渓は大明神谷の雪渓で今回は辿らない。かすかに左に消えていく登山者が1人見えた。
 同じ山塊にありながらこの二つの谷は性格を異にしている。なだらかに両翼を張った広い猫又谷に比べて急峻な壁に挟まれた狭い峡谷。上から下まで見通せる視界のよい猫又谷に比べて曲がりくねっている峡谷。
 猫又谷が天使の谷ならこちらは悪魔の谷のようだ。


両側から絶え間なく落石があり気が抜けない
 

三又出会付近、真ん中の雪渓を行く
 
 大明神谷出合から左にコースをとって毛勝谷に入る。岩の崩れる音に振り返ると出合の下で側面から岩が数個阿部木谷に落ちている。先ほど歩いていたところだ。
 さらに数分後、大明神谷で大きな岩の崩れ落ちる音がする。まだ7時前だというのに気温が高いからだろう。
 毛勝谷でも両サイドから岩の崩れる音がする。雪渓まで落ちてくる岩は少ないが気持ちはよくない。


雪渓で迷ったら遠くまで続いている方を選ぶ
 

ガスがかかると支沢に迷いやすいので注意
 
 途中で先行するスキーヤーを捕らえる。下に停めてあった豊橋ナンバーの若者だった。その先にもう1人先行者が見える。その先行者は先週が猫又で先々週が毛勝だと言っていたらしい。それならその先行者は先週、猫又で会った松田君だ。
 豊橋の若者は岩が多く狭い雪渓にがっかりしているようだ。猫又谷の素晴らしさを説いて来年は是非猫又谷を滑るよう勧める。ふと富山の山を弁解している自分に気がついた。
 腐っている雪は表面だけで中は硬く、斜度を増すごとに滑りやすくなってくる。途中の大きな落石の上でアイゼンをはく。
 アイゼンをはくと蹴り込まなくてもいいので楽だ。若者と別れて先を急ぐ。


コルの手前数メートルは竹藪だったが夏道が?
 

コルに出た瞬間だけ釜谷と猫又が見えた
 
 落ちてくる岩で怖いのは円盤状の岩だった。雪面を転がり出すと止まらない。狭い谷の真ん中を転がってくる。横を転がっていった岩は豊橋の若者に向かって行く。何回も「らーくー」と叫ばされた。  三又の出合から真ん中の雪渓を選ぶ。このあたりからガスがかかりだして上も下も見えなくなってくる。落石は音だけで判断しなければいけない。雪の上を転がる岩は音が小さくてかなり怖い。
 支沢に入り込まないように注意しながら登る。足跡があるからといってそれが正しいコースとはかぎらない。二叉から左の本谷に入る。斜度は45度ぐらいありそうだ。


毛勝山頂上の薬師如来像?(9時00分)
 

セルフタイマーで決めて見ました(^_^;)
 
 前方に笹藪が見えた。コルだった。笹藪の中に夏道のようなものが見える。毛勝谷からコルに向かう方向についている。獣道だろうか。
 コルに出た瞬間、視界が効いて釜谷と猫又が見えた。猫又から釜谷へはもう雪渓が切れている。左側の尾根を辿り毛勝に向かう。だが先行者の足跡がない。雪渓を間違えて登ったのかと思い地図を出してみる。間違えていない。
 しばらく登って振り返るとボーサマ谷のコルの向こうにスキーヤーが見えた。「マツダー」と叫んだら振り返った。「イケハラダー」と叫ぶと「釜谷まで言ってきます」と帰ってきた。


コルから少し降ると晴れていた
 

アイゼンで滑る、滑る、滑る...
 
 又すぐにガスがかかり、視界が効かなくなってしまった。頂上への距離感も方向も分からないまま雪渓の淵を歩く。左の方に小さな広場が見えた。毛勝山頂上だった。猫又のように石仏があり、三角点もある。
 9時ちょうど、だった。石仏はお地蔵様のように見えたが手に壺を持っている。薬師如来だろうか。とりあえず雪渓にビールを埋める。
 視界がまったく効かず、景色が楽しめないので反対側を降ってみた。夏道があるはずだが確認出来なかった。もっともほとんどは雪の下に隠れていた。
 9時では食欲もなく、乾杯だけにする。豊橋の若者は何処へ行ったのか上がってこない。
9時25分、頂上を後にした。


昨日今日に落ちたばかりの石がいっぱい
 

三又あたりから又ガスがかかり出す
 
 コルに降り、右に折れる。45度の斜面を一気にアイゼンスキーで降る。とガスの中から若者が現れた。コルから40m程の所だった。
 コルはすぐそこだと言うと「残念ながらGPSがあるので標高も場所も分かっている。こんなものを持っていると楽しくない。」と言っていた。
 再びアイゼンスキーに戻る。三又出合あたりから又、ガスがかかり出す。歩いても歩いても雪渓は続く。思わず「こんなに歩いたっけ?」
 斜度がない雪渓ではアイゼンを履いていると滑りながらの歩行は出来ない。アイゼンをはずせばいいのだが面倒なのでそのまま歩いた。


最終堰堤のゴーロにたどり着く
 

駐車場所の取水口(10時40分)
 
 10時23分、最終堰堤にたどり着く。朝方は気づかなかったニリンソウが咲いていた。猫又でも帰りに気づいた花だ。朝はつぼみで日中に咲く花なのだろうか。
 キクザキイチゲも咲いている。写真を撮りながら降り、10時40分、駐車場所に戻る。あっけない山行きだった。
 だが来年の楽しい計画を思いついた。仲間を誘って車をデポし、三山を縦走するのだ。落石の心配を考えると気温の低い午前中に毛勝谷から登った方がいい。釜谷の頂上で宴会をするのだ。毛勝からも猫又からも、どちらから見ても羨ましがるだろう。うん、なかなかいいアイデアだ。