猫又山 |
---|
所在地 | 富山県魚津市、立山町、宇奈月町 | |
登山口 | アプローチ | 黒部市から片貝川を登り南又発電所対岸 |
登山口標高 | 740m | |
標 高 | 2378m | |
標高差 | 単純1638m | |
沿面距離 | 片道7.3Km | |
登山日 | 2005年5月28日 | |
天 候 | 晴れ | |
同行者 | 単独 | |
コースタイム |
片貝南又発電所(50分)林道終点(2時間15分)東芦見尾根コル<休憩5分>(35分)猫又山頂上<休憩1時間>(1時間)林道終点(40分)片貝南又発電所 合計6時間25分<休憩1時間5分含む> |
一昨年の10月、仲間と登った猫又山。頂上に立った時はすでにガスに覆われていた。だが不思議と西側だけはよく見えた。下方には片貝川の猫又谷が真っ直ぐに延びている。残雪期に辿ってみたいと思った。 昨年はチャンスに恵まれず、今年もすでに遅いと諦めていた。関本さんが登ったとの情報で写真を見せていただくと、雪はたっぷりある。チャンスを逃すと山は逃げる。他に優先して猫又谷を選ぶ。 |
![]() 雪解け水を集めた片貝の清流 |
![]() 登山口の対岸にある南又発電所 |
家を出たのが5時だった。もっと早く出るつもりだったのだが準備をせずに寝たからだ。下道を走るつもりが高速になってしまった。「早起きは三文の得」の諺は今でも生きている。 魚津インターから道なりに車を走らせる。片貝川に入るのは今回が初めてだ。朝日を受けて輝く片貝の清流に思わず車を止める。 舗装道路を走っていくと通行止めになっていた。旭川ナンバーの車が停まっていて、ご夫婦らしい人が地図を見ている。道を間違えて北又側に入ってしまったらしい。手前にあった右への砂利道が正しい道だった。 |
![]() 朝日に映える新緑の林道を行く |
![]() 途中には落石やデブリもあり |
南又谷の右岸を数キロ走り、左岸に渡ったところに南又谷第2発電所がある。車が入れるのはここまでのようで、広い駐車スペースはすでに満車状態だった。 少し下流の路肩に車を停め、身支度をする。旭川ナンバーの方は富山出張中との事だった。6時35分、林道にとりつく。 200m程歩いてからアイゼンとピッケルを車に忘れた事に気づく。出遅れているという気持ちが200m戻る事を許さなかった。何とかなるだろうとそのまま先を急ぐ。 |
![]() 遠くに見える猫又谷は壁のようだ |
![]() 林道終点から雪渓に降りる |
時々、木々の間から見える猫又谷は壁のようにそそり立って見える。凍っていたら緩むまで待たされるかもしれない。戻ればよかった、と悔やみながら歩いた。 道なりに歩いていたのだが、何か変だと思った。何故気づいたのか解らないが、よく見ると右上に道らしきものがある。右に分岐しているうえに雪渓に隠れているので分かりにくい。脇道のようにも見えるが雪渓に残った足跡はそちらを辿っていた。初めての人は気をつけないといけない場所だ。 |
![]() 一直線に天を突く猫又谷 |
![]() 石黒さんとしばらくいっしょに歩く |
7時25分、林道が二つに分かれている地点に出る。右はヘアピンカーブで山に向かっていて、左は猫又谷に降りている。ここは迷うことなく左側を選び、雪渓に降りた。 雪渓に降り立ってみると猫又谷は一直線に延びて天を突いている。4Km近くに渡って見通せる雪渓は他には思いつかない。左右からの余計な支尾根に遮られていなくて、富士山のようになだらかに角度を上げているからだろう。 |
![]() 左は釜谷と猫又の間の沢 |
![]() 右は猫又谷 |
途中で休憩していた女性に追いついた。しっかりとしたステップを刻んでくる。前に会ったことがあると言われて恐縮する。昨年の秋に金剛堂山ですれ違ったそうだ。 先週の西穂は素晴らしい天気だったと言う。単独で西穂を日帰りする女性はそう多くない。(単独での猫又谷も...) その時の西穂の写真を持ってきていると言う。頂上で見せてもらう約束をして別れた。ピッチを上げる。 |
![]() 見下ろす一直線の雪渓の彼方に大倉山 |
![]() 東芦見尾根コルから見る剱岳 |
猫又山の尾根を挟んで猫又谷の左側にも雪渓がある。釜谷山との間を走っていて、猫又谷よりやや狭く、急峻である。落石も多いようで雪渓が茶色くなっている。 帰りはこちらから降ろうと思っていたのだが雪渓の上部が40〜50m程切れている。急斜面の藪こぎはやりたくない。次回の楽しみとする。 猫又谷に入ると徐々に斜度がきつくなってくる。日が当たり出したばかりで雪面も硬い。中途半端な所で進退窮まりたくない。雪面の感触を確かめながら登る。 最大斜度は30度〜35度ぐらいだろうか。つま先のキックステップが効かないのでサイドステップで雪面を捕らえる。カニのように横這いしながらジグを切っていく。 数センチの蹴り込みしか効かないので怖い。滑ったとき擦りむかないようにと、まくっていた袖をおろした。 |
![]() 猫又山頂上のお地蔵さん(多分) |
![]() 猫又山頂上から眺める釜谷山、毛勝岳 |
コルが近ずくにつれなだらかになり、雪も緩んでくる。難所を乗り越えて緊張感を解いた。 9時40分、コルに出る。雪面から浮かび上がってくる剱岳。登ったものにだけ与えられるご褒美だ。 赤谷から眺めるほどの迫力はないが全体を一望出来、そのスケールの大きさを感じることが出来る。西側にはおなじみの唐松、五龍、鹿島槍などが連なる。 コルからいきなり2カ所ほどの藪こぎとなった。あわせても10m程だがオオシラビソと笹で歩きにくい。これから雪が少なくなればもっと大変になる。いったんブナクラ側を降って、雪渓を巻いた方が楽だろう。 稜線には雪がないが東側にはべったりと付いている。今度は腐った雪が滑りやすくて歩きにくかった。10時20分、雪陵を越えたと思ったところが、あっけなく頂上だった。 |
![]() 頂上から眺める猫又谷と東芦見尾根 |
![]() 頂上のすぐ下で(石黒さん撮影) |
駐車してあった車のほとんどが山菜採りだったようで頂上には2人しかいなかった。金沢の室野さん、大沢野の松田さんとの事。それぞれ単独のスキーヤーだった 双眼鏡で覗くと赤谷山に4〜5人のグループが見える。初めは1人しか見えなかった毛勝岳も毛勝谷をつめた登山者が稜線を続々と歩いていく。毛勝の方がメジャーなようだ。 1時間待ったが約束の女性が登ってこない。雪渓を滑り落ちたのかもしれないと心配になる。11時20分頂上を後にした。 頂上から「エイッ!」と足で滑り降りた瞬間、目の前に彼女がいた。途中で道に迷ったと言う。何処をどう歩けば道に迷うのだろう。 石黒さんと自己紹介してくれた。西穂の写真は後日の楽しみにして腐った斜面を半分滑りながら降りる。 |
![]() 振り返ると猫又山と左右の雪渓 |
![]() 登ってくる登山者と広い猫又谷雪渓 |
コルからの凍っていた斜面も緩んでいて快適に滑り降りる。滑りながらすれ違った2人は旭川ナンバーのご夫妻だった。「早い!」の声が飛んでくる。 上から望む猫又谷の雪渓が思いもよらない雰囲気を醸し出していた。白鷺のように両翼を広げた雪渓は実際以上に谷を広く見せている。 白馬や剱沢の大雪渓ほどのスケールはないが美しさにおいては断然こちらの方が上だ。 名雪渓(そういう言葉があるとしたら)と言えるだろう。 |
![]() 他のメジャーな雪渓にはない美しさを持っている |
![]() 一個所だけ沢が顔を出していた |
4人のスキーヤーとすれ違い、緩斜面を歩いているときに頂上にいた松田さん、続いて室野さんに追い抜かれる。ご両人ともスキーが上手だ。 12時20分、林道終点にたどり着く。ここからは退屈な林道歩きが続く。ふきのとうを摘んだり、花を見つけて写真におさめたりしながら降る。 ショウジョウバカマも何枚か撮ったが、アップ出来るような写真にはならなかった。やはり難しい花だ。 13時ちょうど、駐車場所に戻る。日はまだ高く不完全燃焼気味だ。釜谷山まで行ってくればよかったと思った。 |
![]() ニリンソウ |
![]() オオバキスミレ |
![]() ミヤマカタバミ |
![]() サンカヨウ |
白馬や剱沢の雪渓が男性的な荒々しさを持っているとしたら、猫又谷の雪渓は女性的な美しさに満ちている。近々行こうと思っている針ノ木の雪渓はどちらに属するのか。楽しみが一つ増えた。 この美しい猫又谷の雪渓は近い将来、大ブレークしそうな予感がする。 |