立山(雄山)



天狗平から室堂平への途中で(2005年4月10日撮影)

所在地富山県立山町
弥陀ヶ原 アプローチアルペンルート内弥陀ヶ原駅
登山口標高1930m
標   高3003m
標高差単純1073m
沿面距離片道7.5Km
登山日2005年4月10日
天 候晴のち曇り(強風)
同行者単独
参考コースタイム
山と高原地図(昭文社)
天狗平(45分)室堂(1時間)一ノ越(1時間20分)雄山(1時間)一ノ越(45分)室堂(40分)天狗平(1時間10分)弥陀ヶ原
コースタイム 天狗平<除雪風景撮影15分>(30分)室堂(59分)一ノ越(49分)雄山<休憩5分>(22分)一ノ越<休憩12分>(33分)室堂(26分)天狗平(56分)弥陀ヶ原
合計5時間8分<休憩32分含む>


 昨年、アルペンルートオープンの日の弥陀ヶ原から雄山への挑戦は一ノ越までの敗退で終わった。今年はそのリベンジである。
 営業再開の日と、終了の日に雄山の頂上に立ちたいと思うのは、アルペンルートを職場としている者にとって当然な発想だと思う。だが、挑戦者は今年も1人だけだった。
 始発のバスには報道関係者や会社の関係者が乗るので気を遣う。昨年はうっかりテレビカメラで撮られてしまい、全国放送されてしまった。以後、友人からは経理部所属であることを疑われる(決算の忙しい時期に山に行けるのか?)事となった。


営業再開の横断幕が飾ってあった立山駅
 

50年ぶりにリニューアルした新貨物車
 
 立山駅に隣接しているバスセンターで室堂の情報を仕入れると、アイゼンとピッケル以外に、かんじきも必要だとのこと。慌てて車まで取りに戻る。
 かんじきをリュックに縛り付け、8時40分のケーブルで美女平に向かう。目立たないように建物の陰から陰へ移動していたのだが、あまり効果はなかったようだ。
 テレビカメラの前に出ないように気をつけながらバスに乗り込む。バスは報道関係者でいっぱいだった。


報道関係者がいっぱいの弥陀ヶ原駅
 

拡幅作業中の除雪車に出遭い、しばらく停車
 
 弥陀ヶ原駅で降りる。ここから先は17日にならないとバスが運行されない。弥陀ヶ原から雄山頂上まで(コースタイムは往復8時間30分)6時間で往復するのはちょっと厳しい。
 報道関係者に紛れ込んで、今日だけの特別臨時バスに乗り込み、天狗平まで、文字通り、便乗させてもらう。


天狗平の広場に停まるバスと除雪車
 

天狗平からブルドーザーのトレースを借りる
 
 10時12分天狗平を出発。雪上に残されたブルドーザーの跡を歩く。15分程歩いた雪原に沢山の人がいた。雪の大谷の除雪作業の取材中だった。いっしょになって写真を何枚も撮る。気分は報道関係のカメラマンだ。15分ほど時間を無駄にする。


雪の大谷出口付近の除雪風景

雪の大谷の除雪風景


雪の大谷の除雪車を上から覗く
 

室堂ターミナルの駐車場もまだ雪の下
 
 室堂山の裾を一ノ越へと向かう。高度を落としたくないので、そのままトラバース気味に浄土山の中腹を巻く。標高を稼ぎながらトラバースを続けて行くと、ついに浄土山の岩場の上を巻いてしまった。
 最後は一ノ越から竜王岳への稜線に出る。少し戻って一ノ越に降りる。途中のトラバースは急な左斜面だが平均的に高度を稼げるので楽だ。一ノ越より上に出てしまうが、見かけほど損はしていない。新しいルートを開拓したような気分だった。
 途中で3羽の白い雷鳥に出会う。その中の1羽はもう胸が黒くなりかけていた。


浄土山の中腹をトラバースする
 

一ノ越から龍王への稜線に出て少し戻る
 
 一ノ越山荘の入り口はまだ半分雪に埋まっていた。コルの風が強いのは当然だが、かなりの強風である。西からじゃなく東からの強風が天候が下り坂であることを告げている。
 強風から逃れるように頂上への稜線に取り付く。湿雪の下は凍っているので岩やガレを拾って登る。夏なら絶対歩かない所を選びながら歩いていると思ったら可笑しかった。


まだ冬眠中の一ノ越山荘
 

雄山稜線にある小さな祠、遠くに奥大日岳
 
 足跡はない。今シーズンの雄山一番乗りは達成できそうだが心配なのは風だ。稜線でさえ身を低くしていてもリュックが体から浮き上がってはがされそうになる。頂上付近はどのくらい吹いているのだろう?
 三ノ腰から頂上直下へは右からの風を避けて左側から登る。だが頂上の風は左から(西から)吹いていた。稜線の風は合間があったが頂上の風は、止むことなく吹き続けている。


振り返えれば竜王岳と手前下に一ノ越山荘
 

頂上の雄山神社 風が強く動けず
 
 12時45分、社務所の横から頂上に出ようとしたが体ごと持って行かれそうで思いとどまる。ピッケルを出しても体が浮き上がるような風に耐えられる技術は持っていない。社務所の横に捕まりながら写真だけ撮った。
 雄山神社に参拝に行って滑落したのでは、祀られている伊邪那岐命(いざなぎのみこと)や手力雄命(たじからおのみこと)も寝覚めが悪くなるに違いない。潔く戻る。


三角点も風が強く眺めただけ
 

頂上から見下ろす室堂平
 
 弥陀ヶ原発の終バスまで3時間程しかない。乾杯する時間も必要だ。5分ほどで頂上を後にする。
 風向きが変わったのかと思っていたのだが降りの稜線では東からの風に戻っていた。山の風の怖さを身をもって感じた。
 慎重に降って13時12分、一ノ越に戻る。小屋の西側の中庭のようになっている小屋根に登って乾杯。だがあまりゆっくりしている時間はない。13時24分、一ノ越を後にする。


下山中に後立山連峰を望む
 

室堂手前から奥大日岳を望む
 
 午前中よりさらに雪が腐っていて歩きにくい。トラバース気味に歩いているのでかんじきは使わず坪足で降る。クルブシからスネあたりの雪だが時々ヒザまで潜る。
 13時58分、室堂の横を通過して雪上車の跡を歩く。14時24分、天狗平通過。
 広い雪原に出ると降り斜面なのに、正面からの風で体が前に進まない。泳ぐようにして歩いた。登りの時にこんな風が吹いたら楽だろうと、ふと思った。
 天狗山の裾を回り込んだところから今度は左からの風に変わる。山は地形によって風向きが変わる事を、ここでも学んだ。


美松から鍬崎山と弥陀ヶ原高原を望む
 

この道路に滑り落ちたら痛いだけで済まない
 
 美松から弥陀ヶ原までの急な斜面の谷側には、除雪されて深く掘られた道路が走っている。滑り落ちると危険なのでその道路を歩かせてもらった。
 15時20分、弥陀ヶ原に到着。駅で入れてもらった熱いコーヒーと御菓子が美味しかった。
 弥陀ヶ原ホテルにも顔を出し、頂上へ行ってきた報告をする。(想定内ではあったが)返ってきたのは賞賛の言葉ではなく、あきれ顔だけだった。


雪に埋もれた弥陀ヶ原ホテル
 

美女平からケーブルで下界に戻る
 
 アルペンルート営業再開の日にトップで(他には誰もいなかったが)雄山の頂上に立った。営業最終日にもラストで雄山の頂上に立ちたい。これが今年の一つの目標である。
 11月後半の立山は冬である。いったん荒れ出すと吹雪とホワイトアウトで頂上など狙える山ではない。天候次第である。
 もう一つの心配は営業終了の11月30日がウイークデーだということである。快く休ませてくれる暖かい職場環境も作っておかなければならない。