黒部川/水平道



辿ってきた黒部川水平道を振り返る(2005年10月23日撮影)

所在地富山県宇奈月町
阿曽原温泉 アプローチ下廊下途中
阿曽原温泉845m
欅  平595m
標高差単純△250m 累積(+)940m 累積(−)1190m
沿面距離9.5Km
登山日2005年10月23日
天 候
同行者長勢、岸
参考コースタイム
 山と高原地図(旺文社)
阿曽原温泉(1時間50分)折尾谷(1時間20分)志合谷(1時間30分)水平道分岐(20分)欅平
合計5時間
コースタイム  阿曽原温泉(1時間30分)折尾谷(50分)志合谷<途中休憩10分>(1時間20分)水平道分岐(25分)欅平
合計4時間25分<休憩20分含む>


 夜中にかなりの雨が降っていたが、明け方は止んでいた。4時前から人が起き出して動いている。5時前に出発していくパーティーもいた。
 長勢は銀マットが寒くて4時半頃から起き出す。銀マットの半分は私が敷いていてさらにその上にエアーマットを敷いていたのだった。暖かかった。すまぬ長勢。


テン場より望む阿曽原温泉小屋
 

仙人ダムからの近道だというテン場前のトンネル
 
 写真を撮るために温泉まで往復する。心配していた右膝はやはり痛む。一晩ぐらい温泉に浸かったぐらいではなおらなかったようだ。
 欅平までは半日のコースなのでゆっくり食事を取って、6時40分、阿曽原を出発した。山の上は雪で真っ白になっている。


阿曽原温泉を出発
 

阿曽原温泉小屋を振り返る
 
 しばらく登り気味にトラバースしていくと、いきなり急登となった。一気に右膝にくる。拾った木の杖に体重を分散させながら登る。
 登り切った後に小さなアップダウンをいくつか繰り返すと水平道となる。黒部川との標高差は200m以上だ。
 落ちても怪我人の出ない登山道と言われている黒部峡谷下廊下。その理由は「落ちた人は全員死ぬ」からだとか。


折尾谷の下をくぐる小さなトンネル
 

志合谷のトンネルは長かった
 
 対岸に水平道が見えるのに、折尾谷へと入っていくのでなかなか近づけない。目の前に滝が現れ、折尾谷かと思ったが、それはさらに奥だった。
 ようやく折尾谷のトンネルを抜けて黒部川へと戻る。この後もう一回、志合谷を渡るために西へと大回りする。
 志合谷のトンネルは200m程あり、真っ暗なのでヘッデンが必要だ。


トンネルの中はヒカリゴケがいっぱいだった
 

山岸さんと予定通りすれ違う
 
 この志合谷付近が絶壁をくりぬいたような水平道になっている。写真でよく見かけるのはこのあたりのようだ。
 リュックをひっかけて落ちたとかいう話を聞いたことがあったが道幅は十分にあり、危険なことはない。左側に番線が2本張ってあり、怖いと思ったら、それにつかまりながら歩けばいい。


雨が降っても大丈夫
 

壁面に番線(針金)が張ってあるので安心
 
 ここに道をつけようと思った方はよほど頭が悪かったのか、卓越した頭脳をもっていたのか? 今なら誰もこんな所に道をつけようとは思わないだろう。
 我々のような一般の登山者でも奥深い峡谷を簡単に歩くことが出来るようになったことはありがたい。だが自然の風景をゆがめてしまったことも否めない。


水平動を行く岸(長勢撮影)
 

水平動を行く岸とike(長勢撮影)
 
 水平道を歩いているとき、前から見覚えのある顔がやってきた。欅平から1日遅れで入ってきた群馬の山岸である。
 仕事の都合でいっしょに入山出来ず、欅平から入って途中で会うことにしたのである。北鎌以来の再会だった。話はつきなかったが一緒に行くわけにもいかず、それぞれの方向へと分かれた。


左が白馬槍、中央が天狗の頭、右のガスの中が唐松岳でその左が不帰嶮
 
 10時30分、水平道から欅平への分岐点にたどり着く。高圧線の鉄塔があり、刈り開けてあるので登山者の格好の休憩地になっている。
 名剣山と奥鐘山の間から雪をまとった後立山連峰が見える。この位置から見るのは初めてで山の名前が同定できなかった。(帰ってからカシミールで調べたのが上の図)


喧噪の欅平駅 (血液が足りないんです!)
 

奥鐘橋と欅平駅
 
 欅平へは杖に頼り切っての降りとなった。杖に頼りすぎて、土に刺さった杖を引き抜いた瞬間、左目を突いてしまう。
 それほど痛くもないし視力も普通だ。人間の体はよく出来ていて、瞬間的に目をつぶるようになっている、と思ったのだったが、実際は白目を突いていた。1週間ほど左目が真っ赤だった。


名剣温泉へ向かう長勢と岸
 

名剣温泉 25年ぶりに平田と再会
 
 11時5分、降りきったところが黒部峡谷鉄道の欅平駅前だった。乾杯の後、名剣温泉の平田に会いに行く。雷鳥バレースキー場のレストランにいた頃、彼は隣のヴィンテル名剣の支配人をやっていた。25年ぶりの再会である。
 名剣温泉に入ると帳場に彼がいた。お客さんの対応に追われている。接客の合間を見つけて声をかける。「おー!」と言う。憶えていてくれた。
 風呂に入っていけと言われたがトロッコ電車の時間もある。又来るよと言って名剣温泉を出た。次に来るのはいつになるのだろう?


トロッコ電車の機関車
 

いっしょに乗り合わせた4人
 
 トロッコ電車は満員で予約がないとなかなか乗れないのだが、長勢の配慮で工事電車の客車に乗せてもらう。ありがとう。
 工事電車には株主さんも優待券で乗れるらしく、同じ客車に4人の女性が乗り合わせる。汗の臭いが充満しないように窓を開けて走った。


排砂で有名な宇奈月ダム
 

黒部峡谷鉄道宇奈月温泉駅
 
 宇奈月温泉に着いたとき雨が降り出す。山岸は雨が降り出す前に阿曽原に着いただろうか?と、ふと気になった。
 富山地方鉄道の電車で立山駅に向かう。いつもは登山口に車を停めているので電車を二つも乗り継ぐのは妙な感じだ。
 昨年から暖めていた下廊下。終わってしまった寂しさのようなものを感じながら、列車の揺れに身を任せる。いつの日か、逆コースで辿ってみたいと思った。