一ノ越<剱岳北方稜線敗退> |
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所在地 | 富山県立山町 | |
室堂登山口 | アプローチ | 立山黒部アルペンルート |
室堂標高 | 2425m | |
一ノ越標高 | 2695m | |
標高差 | 単純270m | |
沿面距離 | 片道1.9Km | |
登山日 | 2006年10月8日 | |
天 候 | 吹雪 | |
同行者 | 単独 |
山仲間と計画した北方稜線がお互いの都合や天候で延び延びになって、ついには流れてしまった。残るは単独しかない。 10月6日から9日まで、年休まで取って4日間の休日をつくる。予備日を2日間みてある。往路は雨でもしょうがないが復路−北方稜線−は晴れて欲しい。 あいにく6日は雨、7日も雨で家で停滞。 |
室堂周辺の除雪が遅れて美女平で待機する |
美松あたりで先行するバスを写す |
8日は朝から雨だったが9日の晴れマークを信じて家を出る。この日が今年のラストチャンス。次はない。 立山駅で7時のケーブルに飛び乗る。美女平に来てみるとバスが動いていない。室堂手前の雪の大谷で除雪が間に合っていないとの事だった。 「えっ?雪が降っている? そんなこと聞いてないぞ。」とりあえず室堂まで行ってみることにする。1時間待たされてバスに乗った。 室堂は真冬だった。積雪は10〜20cm程だが風が強く、玉殿の湧水も氷っている。雨だと思っていたので雪山の装備は持ってきていない。 前日の剱沢でガイドが雪渓を踏み抜いて行方不明になった遭難があったばかりだ。こんな吹雪の日は危なくて歩けない。 池ノ平小屋まで行けたとしても復路、北方稜線をたどる技術も装備もない。このまま引き返す気にもなれず、せめて雄山にでもとオーバーウエアを着て一ノ越に向かった。 |
室堂ターミナル前にある氷った玉殿の湧水 |
一ノ越に向けて室堂平を行く |
室堂山荘から先に踏み跡はなかった。祓堂あたりから道が不明瞭になり、何回か吹きだまりに足を取られて前のめりに雪に突っ込んだ。 一ノ越手前では石段が氷っていて、逆に吹きだまりを選んで歩くほうが安全だった。山荘前もツルツルに氷っていた。 小屋に入いると、大勢の登山者がたむろしていた。「何処から来たんですか?」 「下から来たんですか?」などと驚いている。 「降りられるんですか?」とか「道は分かるんですか?」の問いに、大丈夫です、ただ露出した道は凍っているので雪の上を歩くように、とだけ注意した。 考えてみれば雪の上を歩いたこともない都会のハイカーにとっては遭難するような天候に思えたのだろう。(実際、甘く見ない方がいいような天候だった。) 出て行った10人ほどの半分が戻ってきた。泣いている子供もいる。まともに風を受けると、飛んでくる雪で顔が針で刺されたように痛い。 |
青いまま氷漬けになったアザミ |
赤いまま氷漬けになったナナカマド |
ヘルメットを被りアイゼンをはいて雄山に向かう。と、小屋を出た瞬間にリュックカバーを飛ばされてしまった。 リュックカバーは大きく空に舞い上がったあと、何故かぐるっと回って小屋の風上(室堂側)の石垣の間に落ちた。風の通り道は想像も出来ないような所にあるらしい。 アイゼンをはいているのに風が強く、思うように近づけない。少しずつ近づいて行って、もう少しというところでリュックカバーを飛ばされてしまった。横を抜けていこうとするリュックカバーをストックで捕まえようとしたが届かなかった。今度は戻ることなく、一直線に御山谷に消えて行ってしまった。 なんとなく嫌気がさして雄山を諦める。行き先変更自体が遭難への危険信号でもあった。ヘルメットをリュックにしまい、ウエアの風防で顔をめいっぱい覆う。顔にあたる風雪を最小限に抑えながら室堂を目指した。 |
登山道も分からなくなってくる この後デジカメのバッテリーが寒さでダウン |
一ノ越で諦めて午前中に立山駅に戻ると... |
室堂ターミナルに戻り、美女平行きのバスに飛び乗る。標高を下げるに従って窓の外は雪の世界から紅葉の世界へと変わっていく。タイムマシンに乗って季節を逆戻りしているかのようだった。 午前中に立山駅に戻る。立山駅は3連休の観光客で賑わっていた。吹雪の山の中を1人で歩いていたのに、あっという間に都会の喧噪をそのまま持ち込んだような立山駅に立っている。1時間前の出来事が遠い過去の別の世界の事のように思えてくる。やっぱりタイムマシンに乗ったのかもしれない? 北方稜線のために用意した4連休が中途半端な半日で終わってしまった。お預けをくったような1年が長い。来年まで気力と体力を維持出来るのだろうか? |