鍬崎山水平道偵察



このカラ杉谷を詰めると鍬崎山(2006年7月22日撮影)

所在地富山市(旧大山町)
粟巣野登山口 アプローチ粟巣野スキー場
登山口標高640m
標   高1030m
標高差単純390m 累積(+)450m
沿面距離片道5.3Km
登山日2006年7月22日
天 候曇り時々晴
同行者単独
コースタイム 粟巣野スキー場(57分)貯水池<探索7分>(18分)大品山分岐<休憩10分>(1時間7分)カラ杉谷<休憩1時間>(1時間35分)貯水池(30分)粟巣野スキー場
合計5時間40分<休憩1時間20分含む>


 千寿ケ原から真川、湯谷川を詰めてザラ峠に立てないかと、長い間考えていた。真川を詰めるのは堰堤が多すぎるし中には高さ100mを超すものもある。
 砂防工事トロッコの線路敷を歩くことも考えたが、おそらく歩行禁止だろう。長いトンネルの中で列車に出会うのも怖い。
 地図を眺めているうちに対岸、鍬崎山の裾を巻いている水平道があることに気づいた。粟巣野スキー場の上から真川のスゴ谷出合まで続いている。


粟巣野スキー場から導水管の点検路に取り付く
 

千寿ケ原(立山駅)を見下ろす(6倍望遠)
 
 スゴ谷出合から真川林道をたどって立山温泉跡あたりでテン泊すればザラ峠まで届きそうな気がする。
 だがザラ峠までの湯川谷は未知の世界。最初の日にもう少し上流の兎平か刈込池あたりまで行っておけば翌日の行程が楽だろう。
 刈込池の上にある新湯地獄の底には宝石が眠っているという伝説もある。ロープと網を持ち込んであさってみたい誘惑にもかられる。


粟巣野にある厚生年金の宿泊施設(6倍望遠)
 

辿ってきた導水管をみおろす
 
 このコースは単独では怖い。長勢に声をかけると乗ってきた。今週末にでも行こうかという勢いだ。
 しかし梅雨の季節はまずい。沢も増水しているだろうし、地盤も緩んでいる。ましてや鳶山の裾を通ることになる。落石だけじゃなく、崖ごと崩れてくる事もあり得る。
 山行日は比較的安定している8月の上旬を予定した。心配なのは鍬崎山を巻いている水平道だ。二万五千図にも五万図にも載っているが歩いたという話を聞いたことがない。
 梅雨の合間を縫って下見をすることにした。


大品山自然歩道に合流(木立のトンネル)
 

轍のように見えるが車は何処からも入れない
 
 9時40分、粟巣野スキー場を出発する。大品山への登山道もあるが、粟巣野スキー場の横を通って千寿ケ原の発電所へ降りている導水管の点検路を使わせてもらう。こちらの方が短時間で標高を稼げる。
 導水管の横にあるコンクリートの階段を標高差で250mほど登ると、大品山登山道と交差する。ここから登山道をたどる。
 細尾根を過ぎた後は広い道路となり、轍のような跡がある。だが貯水用のダムやサージタンクを作ったときにインクラインがあっただけで車は入っていないという。


北電の貯水池は立ち入り禁止
 

ここから左に折れて水平道をたどる
 
 標高1000mの貯水池から左に折れて、水平道をたどる。大品山自然歩道と書いてあるが崩れている箇所もあり、一般的とは思えない。
 貯水池から約900m、尾根を回り込んでの大品山への分岐に人が立っていて驚かされた。導水管の取り付きに停めてあった車の主だった。大品山へ登るという。
 後日、メールで知ったのだが、米田さんといい、昨年の5月から山を初めて、既に72回の山行きで82座に登っているという。
 その勢いだとあっという間に登る山がなくなりそうだ。


大品山への自然歩道(登山道)
 

ここで右に上がれば大品山へ
 
 分岐の標識によれば右に折れると大品山で直進すると北電のカラ杉谷取水口となっている。と言うことはカラ杉谷までは行けそうだ。
 逆に言えば、カラ杉谷まで行かないと偵察にならないということだ。ちょっと距離があるが水平道をたどることにする。


自然歩道から先は自己責任の世界
 

真川の砂防工事施設を見下ろす(6倍望遠)
 
 ここからは一般道ではなく北電の取水口点検用の道路だ。登山のために歩いてはいけない道なのかもしれない。自己責任の世界でもある。
 尾根付近は安定しているのだが沢に近づくと荒れてくる。大きく崩壊している場所があり、50m近い高巻きを強いられた。
 その後も幅10m程に渡って崩れているところがあった。ステップを切りながら渡ったが、雪面のように簡単ではない。ピッケルが欲しいと思った。


対岸に見えた弥陀ヶ原と大日岳
 

崩壊して道路がなくなっている 結構怖い
 
 ここは鍬崎山の北面である。真川を挟んだ対岸に弥陀ヶ原と大日岳が見える。見慣れているようで見慣れていない風景が続く。
 水平道は谷の奥へと向かって行く。その谷がカラ杉谷のようだ。地図ではカラ杉谷は鍬崎山の頂上に向かっている。
 やがてこの沢を鍬崎山まで詰めようとする日が来るかもしれないと思った。


鍬崎山へと続くカラ杉谷
 

北電の取水施設
 
 12時15分、カラ杉谷に出あう。谷は水量が多く、濡れずに徒渉するのに手間取った。対岸の路は不明瞭で灌木も伸びている。やはり手入れはされていないようだ。
 この道を使ってスゴ谷まで行くことは出来ない。偵察に来てよかった。リュックを担いでここまで来て引き返すのでは辛い。


取水管とトンネル
 

こんな看板で墜落が防げるとは思えないが...
 
  沢で休憩をとるのは水場が近くていいのだが、うるさいのが難だ。缶ビールを1本飲んだ後に日陰に退散した。
 カラ杉谷の対岸を見るとかすかに水平道が分かる。カラ杉谷でうろうろしていたのは実際の水平道より少し下の方だった。
 偵察は不完全だったが、草に覆われていて歩けそうもないのは同じだ。戻って確かめることはしなかった。


雨が降り出すといやな箇所
 

貯水池まで戻る
 
 崩れた崖を渡り、崩落箇所は高巻きして大品山分岐まで戻る。余裕があれば大品山にも登ろうと考えていたが時間切れだった。
 ヨシナ(神岡ではミズナ、正しくはウワバミソウ)の小さいのを少し採った。厚揚げといっしょに煮しめにすると美味しい。
 14時50分、貯水池に戻る。導水管の横をたどり15時20分、粟巣野スキー場に戻った。


粟巣野集落と常願寺川
 

遠くに千寿ケ原を見下ろす
 
 帰りに粟巣野スキー場の平井山荘に寄る。オーナーの平井さんは有峰にキノコ狩りに行って来たそうで、疲れて寝ていた。
 水平道偵察の話をするとカラ杉谷から先は北電が年に1回草刈りをするという。それがいつ頃なのか分からないが望みは残った。
 ただ、北電の専用道路を歩くのは国交省の砂防軌道を歩くのと同じくらい、違反なのかもしれない。


粟巣野からスゴ谷まで歩けるかの偵察だったが、カラ杉谷から先へは進めなかった

 帰り際に平井さんから面白いものをもらった。佐々成政の隠した軍用金の隠し場所を示した地図だ。明治32年に発見した後、事故にあったと書かれている。
 地図によると鍬崎山と大坂森山とトラオトシ谷の交わったあたりに隠したてあるらしい。大岩の大きさや距離、洞窟の深さなどの図面も付いている。
 そのまま信用する気にはなれないが、読み取れない文字もあるロマンに満ちた地図である。