桑崎山



桑崎山稜線より望む笠ヶ岳(2005年2月25日撮影)

所在地飛騨市山之村
山之村森茂 アプローチ冬期間は神岡から伊西トンネル越えで山之村へ入る
駐車場所標高1020m
桑崎山標高1728m
標高差単純708m
沿面距離片道3.8Km
登山日2006年2月25日
天 候
同行者豊本
コースタイム 森茂牧場1020m地点(2時間35分)桑崎山頂上<休憩1時間28分>(1時間20分)駐車場所
合計5時間23分<休憩1時間28含む>


 富山市大山町にある「鍬崎山」と同じ呼び方の山が神岡にある。呼び名は同じだが、こちらは「くわ」の字が違う「桑崎山」である。
 登りたいと思っていたが、どう取り付いて良いかも分からないまま忘れかけていた山だった。そこへ豊本から誘いが入る。そうだ桑崎山だ。桑崎山は登らなきゃいけない。


除雪された道路から雪面にはい上がる
 

山吹峠への広い雪原
 
 桑崎山は飛騨市神岡町の山之村にある。山之村は三方を双六川、高原川、跡津川に囲まれ、標高が1000m近い盆地状の珍しい地形の村である。
 そこの出土品の鑑定から歴史は縄文時代にまでさかのぼるらしい。又、越中から和田川を上り、唐尾峠を越えこの村に入り、さらに山吹峠を越えて鎌倉に向かったという鎌倉道がこの地を走っていたと言う。
 甲斐の武田信玄が越中を攻めたとき、この鎌倉道を通ったという言い伝えもある謎に満ちた地である。


振り返った彼方には先週登った池ノ山が...
 

その池ノ山のアップ
 
 冬期間、山吹峠は除雪されていないので神岡から伊西トンネルを越え森茂に向かう。森茂牧場から先は行けないと思っていたのだがキャンプ場の先まで除雪されていた。標高は約1000m。
 山吹峠の方に向かっていく2人のスキーヤーが見えた。同じく桑崎山を目指しているのだろう。身支度を終え、9時5分、出発。


右奥に桑崎山の頂上が見える?
 

桑崎山の稜線
 
 気温が低く、日が当たっているのに雪面は凍ったままだ。広い雪原を振り返ると跡津川を隔てて池ノ山が見えた。先週、頂上を踏んだ山だ。
 笹津山、大高山、池ノ山と南下してきて、今日は桑崎山である。意図したわけではないが面白い。来週、さらに南下して行くのだろうか? 
 曲がりくねった道路はショートカットする。山吹峠の看板のあるところから道路を離れ、左側の沢筋に入った。


山吹峠手前の標識 ここから左に入る
 

小さな尾根の間を行き、左の尾根を登り切る
 
 右の小さな尾根を意識しながら進む。左側は杉の植林地帯だ。GPSの電波を拾うため、杉の少ない右側の尾根下を歩く。
 やがて沢が狭くなり、深くなってくるので左の小尾根に逃げる。この小尾根は右の尾根に合流して小さなピークを作っている。
 そのピークを左から巻くようにして左にコースを取ると、正面に桑崎山への真っ白な尾根が見えた。2人の先行者が上の方に見えた。


小ピークを左に巻くと正面に桑崎山への尾根が
 

振り返ると遠くに白山、右手前に天蓋山
 
 このあたりから視界が開け、右側に乗鞍岳、御岳が見え出す。振り返ると白山が中空に浮かんでいる。30度ぐらいの急登をキックステップで登る。灌木もなく、スキーには快適な斜面だろう。
 登り切った緩斜面の先に第2の急斜面が見えた。その斜面も灌木が少ない。右側に白いごつごつした山が頭を擡げてきた。焼岳のようだ。


天空に浮いているように見えた白山
 

その右手前に山之村の名峰、天蓋山
 
 白山と金剛堂山の間にいくつもの山が見える。だが五箇山地区の山は不案内だ。昨年大滝山を目指したときも、間違えてマルツンボリに向かったりした。
 金剛堂山あたりからも特徴的に見える山は三ヶ辻だと思う。これさえ「さんがつじ」と読んで豊本に「みつがつじ」だと訂正される始末だ。


120cmのショートスキーで直登する豊本
 

笠ヶ岳をバックに記念撮影
 
 正面を向いたつま先のキックステップは疲れるのでサイドを使ったステップで斜め気味に登る。邪道だと言われてもこの方が楽なのだ。
スタートからクトー(スキー用のアイゼン)をつけた豊本は快調だ。多少の斜面は直登していく。
 右に見える焼岳は笠ヶ岳に続く斜面に沿って我々といっしょになって登っているように見える。最後までその姿を大きく現すことはなかった。


距離は短いが気持ちのいいゲレンデ
 

笠ヶ岳と一緒に歩く
 
 山と対峙している時は雨が降っていてさえ楽しい。ましてや晴れていて遙かな山並みが見渡せるときはなおさらである。
 こんな素晴らしい時間を与えてもらったことに感謝する。


笠ヶ岳の右に乗鞍岳と御嶽山がその存在感を余すことなく自己主張していた
 
 乗鞍岳はマイカーの乗り入れが規制されて関係者の経済的打撃が大きかったようである。より沢山の人に山を紹介する事と、自然を守る事が相反する事なのか? もう少し知恵をしぼれば両立できた事なのか? その答えを見つけるにはまだまだ時間がかかるのだろう。


もちろん白山も負けていない
 

飛騨神岡高校山岳部の先生と生徒
 
 11時40分、頂上に出る。頂上には先行していた2人がいた。1人はクロスカントリーのスキーを持ち込んでいる。話を伺うと飛騨神岡高校の山岳部の先生と生徒だった。
 飛騨神岡高校の山岳部と言えば昨年、全国大会で準優勝している学校である。生徒の方は地元山之村の人間でクロカンスキーは子供の頃からの足代わりに使っているという。
 部外活動だと言っていたが、先生と生徒が個人的なつきあいで山に登っているのを見て、羨ましく思った。何故だろう?


黒部五郎岳と双六岳も大きい
 

双六岳の右奥に黒々とした槍ヶ岳
 
 立山からは遠いと思っていた桑崎山だったが意外に近かった。灌木に邪魔されていたが剱岳が大きく見える。目の前の北ノ俣や黒部五郎もあまりにも大きくて、どこかの里山かとおもったくらいだった。
 当然槍も笠も大きい。神岡の魔女は天蓋より桑崎がいいという。納得である。頂上の展望だけでなく、その道中の視界がいいからだ。


笠ヶ岳をバックに滑る豊本
 

乗鞍岳と御岳山が絵のように
 
 13時8分、頂上を後にする。スキー場のゲレンデより滑りやすいとご機嫌の豊本をカンジキで追いかける。
 標高1400mから下は雪が腐ってきて、急斜面では膝上から腰まで埋まるようになった。カンジキをはいた。
 小ピークを越えて右の小尾根を行く。先に降りた飛騨神岡高校2人のシュプールは沢には降らずに尾根をたどっている。そちらのコースをたどる。


初めて見た大量のカモシカの糞
 

駐車場所に帰り着く
 
 我々が取り付いたところより少し下の道路に出た。それほど大きな違いはなかったようだ。下にアップしたカシミールの地図の青い線が下山時の軌跡である。
 道路からの取り着きに、何本かの木に赤いテープが巻いてあったが、曲がった道路をショートカットした際に、通り過ぎてしまったようだった。


カモシカの赤ちゃん? 親は見あたらなかった
 

三井金属栃洞鉱の廃砂ダム
 
 14時28分、駐車場所に戻る。若者が数人、ボードで遊んでいた。ここは40年前の大津山によく似ている。近くの斜面にスキーを持ち出しては遊んでいた大津山。自力で登っては滑った。同じような光景がまだ、ここにあった。


赤色が上山時で青色が下山時の軌跡 頂上で会った神岡船津高校の山岳部の跡を辿って下山