白萩川遡行



小窓を見ながら休憩をいれる(2007年6月2日山岸撮影)

所在地富山県上市町
馬場島 アプローチ上市町から馬場島へ
登山口標高750m
標   高2330m
標高差単純1580m 累積(+)1675m 累積(−)95m
沿面距離片道7.3Km
登山日2007年6月2日
天 候
同行者山岸、文山、長勢、岸
コースタイム 馬場島(40分)白萩川取水口(37分)高巻道終点(1時間30分)大窓雪渓分岐(2時間10分)小窓<休憩1時間25分>(37分)大窓雪渓出合(1時間13分)高巻道(48分)白萩川取水口(40分)馬場島駐車場
合計9時間37分<休憩1時間25分含む>


 テントを担いで北ノ俣岳から新穂高温泉まで縦走する計画を立てていた。だがこの計画には見落としがあり、単独では無理だった。
 新穂高温泉に降りてから飛越トンネル入口(北ノ俣の登山口)までの事を考慮に入れていなかったのである。
 タクシーを使えばいいのだがそんな金持ちじゃない。車のデポが出来るような相棒が見つかるまで延期だ。


松尾平の上に浮かぶ小窓尾根マッチ箱ピーク

 

白萩川の林道は工事関係者以外立ち入り禁止

 
 メールで文山(ぶんやま)さんが白萩から小窓を狙っているが単独では怖いような事を言っていた。参加を申し込む。2人で行くことになった。
 危険なところは多い方がいい。長勢や岸も誘ってみる。そこへ山岸から奥穂の南陵の誘いが入る。中島と三井が岳沢でテントを張って狙っているという。
 これはすでに手遅れで断るしかなかった。すると岸から山岸と別ルートをやるとメールが入る。山岸からは単独で北穂の一般ルートをやるとメールが入る。
 結局、訳が分からないまま白萩川〜小窓ルートに話がまとまった。長勢からも参加のメールが入る。


ブナクラ谷出合から白萩川へ

 

白萩川取水口

 
 朝、6時、馬場島駐車場に集まる。文山とは全員が初対面だ。(パーティーを組んだ瞬間から敬称略)
 白萩川への林道入口には鎖がはってあり、工事関係者以外立ち入り禁止と書いてある。7時10分、潔く馬場島から歩く。
 文山の山歴は20年だという。おまけにコンスタントに年間50回は行っているようだ。ひょっとしたらこの中の誰よりもベテランかもしれない。


取水口左から高巻き道に入る

 

高巻き道はほとんど登山道となっている

 
 6時50分、白萩川取水口に到着する。取水口の左側(右岸)にコンクリートの壁があり、その裏側が登山口となっている。
 残雪期の水量が多いときはこの高巻き道を使う。小さなアップダウンがあり標高差で100m以上はロスをするようだ。
 高巻き道の上から見ても、降ってから見ても池ノ谷ゴルジュは人を寄せ付けない雰囲気に満ちていた。


高巻き最高点から池ノ谷をのぞむ

 

高巻きを降りきって池ノ谷をのぞむ

 
 白萩川に降り立ち、右岸をしばらくたどる。崩れている所もあるが難しくはない。ただ夏場はヤブになりそうなところが何ヶ所かあった。
 少し右に折れると、正面に大窓の雪渓が見えた。東仙人谷と西仙人谷との三つ叉から先は少し蛇行しているが、ほぼ真っ直ぐである。
 真っ直ぐなところは猫又谷と同じだが雰囲気は違う。猫又谷は白鷺が翼をひろげているような広くて明るい沢である。こちらは両側の岩盤がせまり、何かの巣窟に迷い込んだような圧迫感がある。


我々は左の白萩川を詰める

 

雪ではなく岩の(?)デブリ

 
 近くまで行って見ればそれほどではないと思うのだが、遠くから見あげる大窓の雪渓は壁のように見える。
 雪渓がなくなった後はどのような状態になっているのだろう。ザラ峠のようになっているのだろうか? 秋に計画しているので気になる。


徒渉することなく右岸ばかり歩く

 

白萩川雪渓の先に大窓が見えた

 
 谷が狭いので落石に注意しながらなるべる中央を行く。雪渓を転がってくる石は音がしないので怖い。
 岩盤が固いからか思ったほど石は落ちていない。この日も落石はなかった。


大窓の雪渓はまだ上まで繋がっているようだ

 

左に見える東仙人谷 詰めると赤ハゲに出る

 
 白萩川は標高1500mで三つに分かれている。真っすぐに詰めると大窓で、これが一番近い。
 左は東仙人谷で赤ハゲに向かっている。この谷がいちばんきつそうな感じがするが上部は見えない。
 そして右にあるのが西仙人谷で小窓へと続いている。


壁に見えた大窓雪渓も下から見れば普通?

 

右の西仙人谷に向かう

 
 東仙人、西仙人と名がついているが地図で見ると位置関係は北と南である。北仙人と南仙人、もしくは池ノ谷のように左俣、右俣が正しいと思う。
 最初に名前をつけた人は磁石をもっていなかったのか、何か勘違いしたのだろう。
 西仙人谷の入口は狭く、正面に岩壁が覆いかぶさるように立ちはだかっている。視界が閉ざされていて圧迫感を感じる。100mほど入って左にまがると小窓まで見通すことが出来た。


西仙人谷には毛勝谷とも猫又谷とも違う雰囲気がある

 
 両側に岩壁がせまる西仙人谷は狭く、落石は前からだけじゃなく上からも落ちてきそうだ。
 斜度も増し体力的にも辛いところである。今日は体調が悪いわけでもなかったのに高巻き道ですでに足が重かった。
 ほとんど寝ずに高崎から駆けつけた山岸はもっと辛そうだった。


右側の小窓尾根岩盤から流れ落ちる雪解け水

 

小窓尾根直下 雪渓は切れている

 
 いつもはあまり休憩を取らない仲間なのだが、今回は文山のペースが分からず何回か休憩を入れる。
 だがこのあたりでは本当に休憩が欲しいと思った。
 岸は「50歩作戦」などとうそぶきながら歩いている。50歩歩いては立ち止まって息を整えるのだと言う。まねをしてみたが50歩はきつい。40歩作戦に切り替える。それも30歩になり、20歩になってしまう。


小窓雪渓の彼方の鹿島槍と爺ヶ岳

 

小窓の西側には毛勝三山

 
 11時5分、ようやくの事で小窓のコルに立った。最後の20mほどは雪が切れ、草付きとなっていた。今はまだ草ははえていなくて枯れ草があるだけだ。
 コルに立って最初に目に付くのが「小窓の王」である。その頂を空に向けた姿は王の名にふさわしい。秋にはここを行くのだ。
 小窓雪渓は巨大なスノーボードのハーフパイプのような形で剣沢に向かって落ち込んでいる。正面に鹿島槍が見え、その右で頭を雲の中に隠しているのは爺ヶ岳だろう。


小窓の王が招いている 待ってろよ

 

左から山岸、岸、文山、長勢

 
 小窓のコルにはテントが一張り張れる広場がある。ここで車座になり昼食を取った。もちろん乾杯付きである。
 雪があるのにクーラーボックスを持ち込んだのは不覚だった。保冷剤に、缶ビールが2本に、水が2リットル、使わなかった20mのザイル...重かったぜ。


中国の桂林を思わせるような雰囲気がある

 
 張り出した雪渓の上には何張りもテントを張ることが出来るが、雪が溶けたら多分、快適にテントを張れるのは一張りだけだろう。


急な雪渓は足スキーで時間を短縮出来る

 

全体が見えない方が迫力がある?

 
 12時30分、下山開始。ガスがかかった西仙人谷はすごみを増している。適度にしまった雪は足スキーに最適だった。気持ちよく滑り降りる。


大窓雪渓をバックに山岸、文山

 

雷岩屋と書かれた岩があった

 
 雪渓が切れ、ガレ場を歩いていると「雷岩屋」と書かれた石があった。矢印の方向に30m程登るときれいな岩屋があった。
 床は白い真っ平らな砂地で3人ぐらいは寝られそうだ。じめじめした雰囲気はなく、ここなら泊まっていい。
 ビニールシートも置いてあってシュラフだけあれば泊まれそうだ。


書いてあるとおりに30mほど右に登ると岩が

 

岩屋の中にはビニールシートまであった

 
 文山が言うには、右岸にロープが張ってあるところの左岸側に小窓尾根への取り付きがあるらしい。そのうち行こうとも言う。楽しみが増えた。
 高巻き道へと取り付きはロープが垂れているだけなので行き過ぎないよう注意が必要である。登りの時ほど標高差はないものの疲れているので登り返しは辛い。


スノーブリッジの彼方に見えるのは大窓雪渓
小窓尾根への取り付きはこの近くにあるらしい

高巻き道への取り付き箇所
ロープだけが目印なので注意

 15時8分、白萩川取水口に戻る。日曜日ならここまで車で入れそうだ。時間で1時間半短縮でき、体力もそこそこ温存できる。
 馬場島からの日帰りにはちょっと辛いコースのようだ。日帰りしたいと思うのなら取水口まで車で入れる日曜日にした方がいい。


疲れた体には辛い登り返し

 

白萩川取水口に戻る

 
 15時47分、馬場島に戻る。白萩川は奥が深い。大窓や東仙人谷があり、小窓尾根があり、池ノ谷もある。
 同じバリエーションルートでも裏側の源次郎尾根、長次郎雪渓、八ッ峰よりも取り付きが早くていい。日狩り可能なルートが沢山ありそうだ。


 

 

ニリンソウ
 

シラネアオイ
 

チゴユリ