白萩川〜大窓〜池ノ平小屋



大窓のガレ場から雲海を振り返る(2007年9月29日撮影)

所在地富山県上市町、黒部市、立山町
馬場島 アプローチ上市町より車で40分
白萩川取水口976m
池ノ平小屋2042m
標高差累積(+)1765m 累積(−)693m
沿面距離7Km
登山日2007年9月29日
天 候曇り後晴れ
同行者文山、長勢、中嶋
コースタイム 白萩川取水口(2時間25分)西仙人谷出合(2時間45分)大窓コル<休憩25分>(2時間5分)池ノ平山北峰<休憩20分>(42分)池ノ平山南峰<休憩8分>(1時間5分)池ノ平小屋 合計9時間55分<休憩1時間含む>


 春の連休にブナクラ谷から赤谷、白萩、赤ハゲ、白ハゲを越えて大窓から白萩川を降る計画を立てた。これは技術的な問題で赤ハゲで敗退。
 6月に白萩川から小窓を往復した。そのとき大窓が気になった。
 昨年の10月、北方稜線を降雪で敗退。このみっつが繋がって大窓から北方稜線をたどるコースを思いついた。


白萩川の高巻き道から池ノ谷をのぞむ

 

高巻きを降りて白萩川をのぞむ

 
 馬場島に集合して身支度を終え、暗いうちに白萩川の取水口まで車を1台入れさせてもらう。回収は日曜日の夕方だ。工事関係者には迷惑をかけないだろう。
 明るくなるのを待って6時40分、白萩川取水口を出発する。白萩川をそのまま溯行する事も考えたが安全をとって高巻きコースを選ぶ。
 危険回避というより長丁場なので登山靴を濡らしたくなかった。


下流は大きな石もなく快適に歩く

 

ガスがなければ正面に大窓が見えるはず

 
 この高巻きは標高差で170mほど登る。段差があって歩きにくい所もあり、水量が少なければ避けたいところだ。
 高巻きの降りから池ノ谷が見える。両側の岩壁が迫った迫力ある谷だ。そのうち行けるところまで入峡してみよう。


ガスがうすくなり、かすかに大窓の稜線が見える

 

東仙人谷、大窓、西仙人谷の三本の沢の出合

 

白萩川の左岸は急峻な小窓尾根

 

東仙人谷出合

 

西仙人谷出合

 
 大窓の手前左に東仙人谷出合があり、すぐ右側に西仙人谷出合がある。この出合から大窓の急登が始まる。以前はここに滝があったようだが今は左右どちらからでも登れる。
 西仙人谷の滝の方が登りにくそうだ。


狭くなってきた白萩川を振るかえって見る

 

大窓(中仙人谷)は大きな岩がゴロゴロしている

 

雲海の上に出る

 
 中仙人谷に入ると急に岩が大きくなってきて、中には2階建ての家の様な大きさの岩もある。所々V級程度の短い岩場がある程度で難しくはない。
 広い沢の中に出来た小さな沢なので両側からの落石の心配もなく下流より安全である。遠くから見たほど急でもなく快適に歩いた。


こんな所を歩いたらもう普通の登山道には戻れない

 

中仙人谷にはちょっとした岩場感覚のところもある(長勢撮影)

 

ガスの晴れ間に富山平野まで見えることもあった

 

ガスが引いた瞬間、目の前に予想外のピークが現れた 右方向に藪をこぐ

 
 遠くから見ると大窓へは単純なひとつの沢に見える。だが実際に入ってみると小さく切れ込んだ沢がいくつかあった。
 大猫山の登山道から見たときはふたつの沢があり、右の沢は池ノ平山の方に向かっていたので左に入ればいいと安易に考えていた。だが左の沢はシロハゲの方に向かっていた。
 大窓直下の涸れ沢はすぐに藪の中に消えている。どちらの沢から行っても藪を漕いでこの真ん中の沢に入らないといけないようだ。
(←大猫山登山道から見た大窓)


大窓直下のガレ場

 

大窓コルにあったお地蔵さん

 
 左の沢から草付きの斜面を30mほどトラバースしてハンノキなどが茂る藪に入る。藪のトラバースは辛い。
 30mほど藪をこぐとコル直下の短いゴーロの沢に出る。このゴーロ帯は幅5mで長さ50mほどしかない。上端からまた藪に入る。が、ジグを切った古い道があった。
 鉱山道だと思われる。これをたどり再びゴーロに出て最後は10m程の草付きを登り切る。10時50分、コルに出た。取水口から5時間10分。


雲海に浮かぶ坊主山の彼方に後立山連峰が連なる

 
 大窓の西方にある富山平野は雲海の下になって見えなかった。東側の後立山連峰は白馬槍から鹿島槍までが雲海の上に浮かんでいる。
 雲海が広がった景色は余計なものが隠され全貌が見渡せるときよりもきれいである。山々は海に突き出した半島であったり、ぽつんと浮かぶ島であったりする。
 弥陀ヶ原では大日から続く山並みが半島であり、鍬崎山や白山が島だった。


白馬槍、天狗ノ頭、不帰ノ儉、唐松岳、五龍岳

 

五龍岳、鹿島槍

 
 11時15分、池ノ平山に向かう。5時間で大窓まで登れなかったら戻ると言っていた中嶋もついてくる。
 所々ハイマツやハンノキの下に隠れ、見えなくなるが踏み跡はしっかりしている。見失っても稜線を登っている限り、大きくはずすことはない。


池ノ平山への稜線から振り返る 白ハゲ、赤ハゲ、赤谷山の彼方に見えるのは毛勝三山

 
 登り切った最初のピークの先に見えたのが2561mの池ノ平山。地図ではこちらが池ノ平山になっていたり南側にある2555m峰が池ノ平山になっていたりする。
 勝手だが、こちらのピークを池ノ平山北峰と呼び、南側にある2555m峰の方を南峰と呼ばせてもらうことにする。


登り切った最初のピークから池ノ平山北峰(2561m)をのぞむ 右奥は剱岳本峰

 
 最初のピークと北峰の間に高さ20mほどの小ピーク(岩コブ)があり、ここは左側から巻く。直登しかけた長勢が行き詰まり、懸垂下降で降りてきた。
 左からの巻道もコル手前でスッパリ切れ落ちている。手前にあるクラックの入った高さ4mほどの岩を登る。下から2m、3m地点にハーケンが打ってあった。
 距離は短かかったが安全を期してザイルを出す。ここのフィックスロープも古くて使い物にならない。
 北峰頂上直下の壁は右側の灌木帯から登った。


池ノ平山北峰(2561m)から南峰(2555m)をのぞむ

 
 北峰から見た坊主頭のような南峰はコース取りが北峰より難しそうだ。南峰北壁の中央付近にフィックスロープが見える。
 実際に行ってみると岩壁の取り付きに左のガリーに向かう踏み跡があった。長勢がそちらに向かう。一見、V級ぐらいの岩だ。取り付く。
 フィックスロープは古くて、安心して使える状態ではなかった。最後の足場のないところは草付きをわしづかみにして強引に体を引き上げる。


途中のコブ岩は左から巻く ザイルを出した

 

6m低い南峰の方が池ノ平山本峰か?

 

なだらかな尾根の先に赤い屋根の仙人池ヒュッテが見えた

 
 中嶋が後に続き、ガリーに向かった長勢が横から戻ってきた。文山はトップロープで安全を期す。そこからは難しいところもなく、14時20分、池ノ平山南峰(2555m)に立った。
 東に延びた尾根の彼方に赤い屋根の建物が見える。池ノ平小屋ではなく仙人池ヒュッテのようだ。仙人山は手前の尾根に隠れて見えない。


池ノ平小屋への降りはしっかりとした道があり、最後は草原の中を行く

 
 長勢はビールで乾杯している。此方は文山とウイスキーで乾杯。軽量化を図ったのでビールは小屋までおあずけだ。
 頂上から小屋までは普通の登山道と思われるほどの踏み跡があった。池ノ平小屋から往復する登山者が多いのかもしれない。
 小屋の手前の斜面はなだらかな広い草原となっていて、北方稜線のなかのオアシスのような場所となっている。


15時35分、池ノ平小屋到着

 

屋外五右衛門風呂 この右に屋内風呂がある

 
 15時35分、池ノ平小屋に到着する。小屋の監理人である菊池さんは「本当に来るとは思っていなかった」と驚いていた。
 名古屋の岩月から菊池さんの友人を通じて大窓経由の予約を入れてあったのだが大窓経由というのが半信半疑だったらしい。


時間が余り、小屋の前でくつろぐ

 

小屋の中の団話室兼食堂

 
 ビールで乾杯。露天風呂に入れてもらう。時間をもてあましウイスキーをちびりちびりやる。夕食前に仕上がってしまいそうだった。
 菊池さんは色々な研究会や山岳会に所属、もしくは主催しているようで、その中に鉱山研究会というのがあった。
 神岡鉱山やカミオカンデに興味を持っていて一度訪れたいという。来年案内する約束をした。



池ノ平小屋に泊まった我々以外の10名4パーティー