ソンボ山 |
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所在地 | 岐阜県飛騨市 | |
中山集落 | アプローチ | 国道41号線を南下して猪谷を過ぎた中山集落から |
登山口標高 | 255m | |
標 高 | 1193m | |
標高差 | 単純938m | |
沿面距離 | 片道10.3Km | |
登山日 | 2007年4月8日 | |
天 候 | 晴れ後曇り | |
同行者 | 単独 | |
コースタイム |
中山集落(1時間35分)水無谷川出合(3時間15分)ソンボ山頂上<休憩35分>(分)水無谷川出合(1時間25分)中山集落 合計8時間40分<休憩35分含む> |
国道41号線と360号線に囲まれている「にっさんちゅう」(西山中)には名前のある山が五つある。 南から高山、流葉山、大洞山、漆山岳、そしてソンボ山。高山は林道から頂上まで標高差100mほどの登山道があり、ハイキングにもならない。 流葉山は山頂近くまで林道がある。冬場ならスキーリフトの終点から標高差無しの距離300mほどで頂上に立てる。 大洞山には登山道があり、神岡の小学生の遠足の場になっているという。 |
その大洞山は昨年の3月の積雪期に登っている。何処が頂上か分からないような山で、雑木林にさえぎられて視界がよくなかった。 漆山岳も昨年の3月に国道41号線の漆山から直登した。急登ではあるが標高差は1000mで雪質を選べば難し山ではない。 この山は富山平野から見える岐阜県の山として有名だ。三角形の端正な姿は何度眺めても飽きることはない。 |
一番北に位置するソンボ山は、他の4座とはちょっとイメージが違い、「西山中」の秘境といった感じがする。ソンボという名前もいい。 この山は登山道のない残雪期限定の山である。一般的な(?)コースはふたつあり、中山からソンボ谷の林道をたどるコースと、宮川の中沢上(なかそれ)から洞谷、土谷の林道をたどるコースである。(後者は一週間前の偵察コース) 厳冬期の記録がないので、今年の2月に杉原から直登する計画をたてていた。面白いコースだと張り切っていたのに雪不足で(輝山に変更)来年へのおあずけとなってしまった。 |
中山集落を抜けた神社前に、前回と同じように車両進入禁止の策がおいてあった。今回は工事用の柵が1個置いてあるだけで、「入りたい人はどうぞ」といった感じである。 登山は歩くのがあたりまえ、お宮さんの前に車を停め、9時ちょうど、林道に入る。 入口に熊出没注意と書かれた看板があった。熊撃退用のスプレーは持っているが射程距離は2mで風上からやってくれと言われている。 そんなに簡単に熊の風上に回り込めるくらいの余裕があるのなら、逃げたほうが早い。このスプレーはあまり役には立たないようだ。 |
5Km近く入ったところで後ろから車が追いついてくる。単独の釣り人だった。目的が登山だと聞いて不思議そうな顔をしていた。乗っていくか?と言うでもなく、そのまま上流へと向かって行った。 水無谷川出合の少し下流あたりで釣りをしているところへ追いつく。釣果を聞くと大きいのをばらしてしまったと言う。 「逃がした魚が小さかったという話は聞いたことがない」などとは言えないので「がんばってください」と言って別れた。 ←屋敷跡の近くにあった小さな祠 |
ソンボ谷林道は何回も橋を渡り、右岸と左岸をいったり来たりする。橋の名前は「第1号橋」から順番に号数が上がる。 第6号橋の次に渡るのが水無谷川橋である。この橋は本流(ソンボ谷)ではなく水無谷川に架かっている。 水無谷川という名前がなんとなく重複しているようで変だ。水無川か水無谷でいいような気がする。 そういえば源流の漆山岳の名前も変だ。漆山か漆岳が普通の呼び方だと思う。 |
水無谷川を渡った右側につぶれて屋根だけとなった廃屋があった。左側には石垣の階段があり、登ってみると屋敷跡がある。コンクリートの基礎や、タイルの水槽のようなものがあり、昭和初期ぐらいものと思われる。 水無谷川のほうに茶碗のかけらに混じって半分地面に埋まったヤカンの底が見えた。こんな所にも生活をしていた人達がいたのだ。 |
地図にはこのふたつの川を分ける尾根から漆山岳に向かって登山道が記されているが痕跡もない。 林道に戻ってソンボ谷をたどる。予定ではこのあたりからソンボ山に向かって北斜面に取り付くつもりだった。だが、まったく雪がない。 林道を行けるところまで、ソンボ山への雪斜面に出あえるところまで行くことにする。 |
水無川谷から700mほど行くと突然といった感じで雪道となる。よく見ると車の跡の他にブルドーザーの跡がある。ここまで除雪されていたらしい。 雪道を歩き出して分かった事は、この先は除雪をするつもりがないということだった。林道は何年も手入れがされていないようで大きな岩や倒木がそのままになっていた。 雪が切れたところは竹藪になっていた。一瞬、敗退の2文字が頭をよぎる。引き返さなかったのは、3回目のソンボだという、背水の陣のような、負けられないという思いがあったからだった。 |
地図に現れていない沢が幾重にも別れGPSの緯度と経度からだけでは正確に判断出来ない |
ありがたいことに藪こぎはすぐに終わり、雪道となる。半クラスト、半モナカ状態の雪に輪かんをはく。 この輪かんは昨年、白木峰で落としたものを、福光の石井さんが拾ってくれた物で、使うチャンスが少なくなっているとはいえ、大事なものである。 ソンボ谷を離れ、右側(左岸)の支流へと入る。雪解け水で水量の多かったソンボ谷も小さな沢となった。 小さな淵に、人影を見つけて逃げていくイワナの影が見える。こんな所でもイワナは冬を越せるらしい。 |
流れはせせらぎとなり、尾根も低くなってくる。支流はいくつにも分かれ、林道もはっきりしなくなる。 雪が切れている所は沢歩きとなる。かんじきを選んでよかったと思った。かんじきを馬鹿にしているわけではないが、36,750円のスノーシューでは歩きたくない。 山行きにはいつも持ち込んでいるカシオの高度計、磁石がいっしょになった腕時計を、今日にかぎって、複雑な地形の山なのに、忘れてしまった。 GPSにも磁石の機能はついている。だが止まっている時は信用できない。 |
GPSに示される緯度と経度から現在地を読む。現在地の地形と地図の地形を見比べて方向を読む。 大きな地形なら地図をながめるだけで、だいたいの方向は分かるのだが、低い丘陵と小さな沢が入り交じっている場所ではそれも難しい。 二万五千図では読めない支沢がいくつも出てくる。一カ所で4つもの沢が合流している所など地図を見ても何処にも載っていない。 GPSの緯度、経度から得た現在地を拾いながら、その移動軌跡から方向を判断した。それにも限界があり、最後は勘で方向を決める。 |
笹藪を登りきって小ピークに出る。灌木のあいだから見える360度方向の何処にもここより高いピークは見あたらない。 何か頂上を示すものがないかあたりを見回すが見あたらない。標識もないような山なのか?頂上は他にあるのか?と思いながら頭上に目をやると、あった。 3mほど上に楕円形の木版が枝に括り付けられていた。くすんでよく読めないが山名と標高が書かれているようだ。もう登らなくてもいいと思ったら、ほっとした。それほど今日は疲れていた。 |
時間は13時50分。6時間近く、歩き続けたことになる。ややシャリバテ気味でもある。すぐにお湯を沸かしながら、ビールで乾杯。 時間があまりない。ビスケットを2枚とカップ麺を食べ、14時25分、頂上を後にする。 腐った雪がかんじきにまとわりついて重い。スピードが上がらない。急ぐでもなく、ゆっくりでもなく、惰性で降る。 林道に出てひとまず一安心する。ソンボ谷に合流し、さらに降って標高850mあたりで雪から解放された。 |
帰りは道路脇の花に目がいく。ショウジョウバカマ、キバナイカリソウ、タチツボスミレ、エンレイソウ、ネコノメソウ... と、道路にいたカモシカが驚いて崖を駆け上っていき、円を描くようにして崖を駆け下りてきて道路に戻った。そして、そのまま道路を降っていった。 斜度60度ほどの斜面に直径30mほどの円を描いたそのスピードは人が平地を走るより速かった。恐るべし、カモシカの脚。 |
15時20分、中山集落に戻る。長い林道歩きだった。車を乗り入れれば往復で12Kmは稼げる。辛い思いはしたくないという方は車を利用した方がいいだろう。 乗り入れ禁止が少し気になるが、市道のようだから禁止するとしたら飛騨市である。だが、そんな雰囲気はない。単に安全を期して、安易に乗り入れないようにと、柵を置いてあるだけのようだ。 それでも、損をしたような気はしない。下から頂上まで歩き通した事で得た満足感の方が勝る。心地よい疲れの中、家へと車を走らせた。 |
平成3年6月5日に橋本廣さんがソンボ山に登ったのを「北越の山歩き」に書いている。ソンボ谷を車で上って水無川谷から先がぬかるんでいるからと洞谷にまわり、土谷を上部の分岐まで車で入っている。 その頃は頂上まで道があったようだ。駐車場所から45分で頂上に立っている。途中でススタケ取りの人達とすれ違ったとも書いてあった。 |