輝山(てらしやま)



平湯温泉から輝山への東尾根の急登を行く(2007年2月17日撮影)

所在地岐阜県高山市
平湯温泉 アプローチ国道471号線平湯温泉
登山口標高1220m
標   高2063m
標高差単純843m 累計873m △30m
沿面距離片道2,8Km
登山日2007年2月17日
天 候晴れ後曇り後雪
同行者深雪
コースタイム 平湯温泉(3時間5分)輝山<休憩1時間30分>(1時間20分)平湯温泉
合計5時間55分<休憩1時間30分含む>


 高原川と宮川の間にソンボ山という山がある。富山県境の宮川の橋を渡った中山の集落から宮川と高原川に挟まれた尾根を分けてソンボ谷が走る。
 そのソンボ谷の源流にある山がソンボ山である。

 生まれ育った標高850mの大津山から眺める高原川の対岸に見える山は無名峰である。そしてその無名峰の裏にあるのがソンボ谷とソンボ山だ。大津山からは見えない。
 父はそのあたりのことを「にっさんちゅう」と呼んでいた。子供心にも不思議な響きがあり、「にっさんちゅう」を心の中で「日山中」と読み直していた。

 行ったことのない「にっさんちゅう」は大人になってからも、ある種の憧れを伴った特別な地域となっている。そして何故か、国道神岡線(41号線)で登っていないのは「にっさんちゅう」にある、この山だけである。


土砂崩れで通行止めの手前で車を停める
 

9時25分、国道を少し戻って、ここから取り付く
 
 今年こそは登りたいと計画していたのに雪が少ない。前日に確かめるとほとんど雪がない。急遽、ソンボ山を諦めて別の山を探す。
 天蓋山、福地山が頭に浮かぶ。だがなんとなくイメージが違う。ふと、思い出したのが輝山だった。
 中林に連絡を取ると、今は2000m超の山に行く体力がないとキャンセルしてくる。そんなに大げさな山でもないんだが...


最初はかなりの急登 35度以上あると思う
 

オオシラビソの樹林帯に入る
 
 と言うわけで深雪との2人山行きとなる。女性と2人だけで登ることは避けてきたのだが、今回は間に合わなかった。避けてはきたが、本音を言えば嫌いじゃない。
 いちどやってしまえば後は節操もなく、誰とでも、何処へでも行ってしまいそうである。(相手がいっしょに行ってくれればであるが)

 さて、輝山(てらしやま)はスキーの山として、最近、脚光を浴びているようだ。ネットで調べてみるとほとんどが平湯峠の南尾根から取り付いている。
 他には朴の木スキー場側の南南西尾根と福地温泉からの北北東尾根があるだけで、平湯温泉からの東尾根を直登しているのは見あたらない。当然、そのコースを選ぶ。


雪の中から顔を出していた名残秋
 

ムシカリ(オオカメノキ)の天然ドライフラワー(?)
 
 平湯温泉のバイパス国道(471号線)はトンネルの手前で土砂崩れがあり、通行止めになっている。そのトンネルの平湯温泉側に車を停めさせてもらう。
 国道を100mほど戻り斜面に取り付いた。いきなりの急斜面は30度以上はありそうだ。MSRライトニングは硬い雪の上に柔らかい雪が積もっていると弱い。
 鍬崎山でも感じたが、30度を超すと一気に滑りやすくなる。ライトニングの爪が硬い雪に届かないためだろう。
 それでも他のスノーシューと比べたら滑らない方だとは思う。


MSRライトニングアッセントデビューの深雪
 

笠ヶ岳から穂高連峰、乗鞍まで見渡せる
 
 標高1750mあたりでミズナラ林からオオシラビソの樹林帯に代わる。スキーヤーがこの尾根を選ばない訳が解った。シラビソの密度が濃すぎる。
 右に笠ヶ岳、左に乗鞍の北に位置する大崩山、四ッ岳、後ろに穂高連峰を見ながら登る。12時10分、平湯峠からの南尾根と合流する。標高は2000m。

 西からの風が冷たい。青空はいつの間にか白くなっていた。登りで脱いだ1枚を着直し、稜線上を北上する。
 標高差は残り50mだが登り返しもあり、距離もまだ600mほどある。深雪が少しバテ気味なのが気になった。もう少しだ。がんばれ。


12時30分、輝山頂上
 

おでんにラーメンに...2人では食べきれない
 
 12時30分、オオシラビソの密集を回り込むとその先に登りはなかった。そこが頂上だった。スキーの跡が沢山ある。朴の木からの南南西尾根からのようだ。
 稜線上の強い風が嘘のように頂上は穏やかだった。喉の渇きを癒し、空腹を満たしてくれる昼食は、登山における一大イベントである。
 その楽しさを思い浮かべながらパッキングをするので、いつも必要以上に持ち込んでしまう。担いで登って、担いで降りる。重いだけなのに、この癖は治らない。


神戸から来たという北北東尾根からの6人
 

14時ちょうど、入れ替わりに下山開始
 
 1時間半のゆったりした時間の後、帰り支度をしているとスキーヤーが登ってきた。神戸からの方達で6時間をかけて登ってきたという。最近人気の福地温泉北北東尾根からだった。
 2時ちょうど、入れ替わりに頂上を後にする。降りはトレースをたどらずに新雪の中を行く。その方が歩きやすいし、速い。


おっと、何しているの?
 

降りで対岸に見える白谷山とアカンダナ山
 
 正面にアカンダナ山と、そのすそを走る安房峠越えの国道158号線(冬季閉鎖中)を眺めながら降る。
 最後の急降はスノーシューをぬいだ。カカトが長すぎてスキーをはいているような状態になってしまい、湿雪を降るにはむいていないからだ。
 15時20分、平湯温泉の国道471号線上に降り立つ。新しい山、新しいコースは面白い。岩山のバリエーションルートを攻略する楽しみと似ているのかもしれない。


総じてスノーシューは降りに弱い?
 

15時20分、平湯温泉に戻る
 
 平湯温泉「ひらゆの森」へ直行する。以前は三井金属の社員用の寮施設で、父の関係で利用させてもらったことがある。その後、経営者が代わり、増改築が繰り返され、現在の大きな施設となっている。
 武田信玄が見つけたとのいわれがあり、平湯温泉で最も古い温泉との事。露天風呂が6つもあって驚いたのだが、女性の浴場には10個もあった。(館内図より)


平湯温泉「ひらゆの森」で温泉に入る(500円)
 

露天風呂だけでも6つもある大きな温泉
 
 かんじきやスノーシューなら平湯温泉からの東尾根が一番いいコースだと思う。近いことと、南尾根のかったるい林道歩きがないことだ。なによりもシンプル。
 朴の木からの南南西尾根が最も近く標高差もないが、冬の北西の風を遮ってくれるのが平湯からの東尾根だ。

 スキーをやる方は福地温泉に車をデポ出来るならこのコースを選んだ方がいい。東尾根から登って北北東尾根を滑る。最短で登って最長の距離を滑ることが出来る。
 いっぱい歩いて体をいじめたいと言うM的な人はこの限りではないが...


「ひらゆの森」のフロント(帳場)
 

廊下は全て畳敷きだった