池ノ谷〜三ノ窓〜小窓〜小黒部〜大窓〜白萩川 |
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所在地 | 上市町、黒部市 | |
白萩川 取水口 |
アプローチ | 馬場島より4Km |
登山口標高 | 976m | |
最高点標高 | 2700m | |
標高差 | 2日 累積(+)1950m 累積(−)900m 3日 累積(+)720m 累積(−)1780m | |
沿面距離 | 2日8.4Km 3日7.2Km | |
登山日 | 2008年8月2日〜3日 | |
天 候 | 晴れ | |
同行者 | 岩城、中嶋、BOW | |
コースタイム |
8月2日 白萩川取水口(1時間5分)雷岩(45分)小窓尾根<休憩20分>(25分)1600mピーク<休憩30分>(1時間15分)池ノ谷二俣<休憩25分>(2時間40分)三ノ窓<休憩25分>(2時間10分)小窓<休憩20分>(1時間分)池ノ平小屋 合計11時間20分<休憩2時間含む> 8月3日 池ノ平小屋(1時間5分)大窓雪渓出合<休憩15分>(1時間10分)大窓<休憩1時間30分>(2時間30分)西仙人谷出合(1時間20分)高巻き下<休憩35分>(1時間35分)取水口 合計9時間<休憩2時間20分含む> |
池ノ谷を詰めて三ノ窓でテントを張る計画を温めていた。しかしテン泊をやめて軽量化すれば、小窓へ抜けて雪渓を降り、池ノ平小屋まで届きそうな気がする。 菊池さんや長谷川さんにも会える。それに重いリュックはしばらくは担ぎたくない。 |
8月2日 |
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今回はハードなコースなので白萩川の取水口まで車を入れさせてもらう。 6時10分、取水口を出発。タカノスワリの高巻きは急登から始まり、一汗かくところだ。 雷岩の下で靴を濡らすことなく岩づたいに徒渉する。体のバランスをとるのにストックは有効だ。 小さな沢を白萩川と並行に行くと池ノ谷と書かれた標識がある。ここから小窓尾根へと取り付く。 この標識は白萩川からは見えないので行かれる方は注意。 |
雷岩から1600mピークまで1時間10分ほどだが途中で20分の休憩を入れた。ピークでさらに30分の休憩を入れる。 文山のピッチがあがらない。顔色もよくない。と、いきなりリタイアすると言い出した。気持ちが悪く、今日のコースはいけそうもないと言う。 残念だが今日のコースは体調がよくてもハードな山行きだ。無理強いは出来ない。文山はここから単独で戻ることとなった。 |
ピークから池ノ谷に降る。半分ほど降りたところから踏み跡は左に方向を変え、水平に上流へと向かう。最後は小さな沢を降って池ノ谷へと降り立つ。 池ノ谷もこのあたりはなだらかで「行けぬ谷」とは思えない。奥の方に見えるのは剱尾根だろう。意外に近そうだ。 |
河原歩きもすぐに雪渓に変わり、二俣までは約1時間。右俣の雪渓は途中で2つに分かれていて右を詰めれば長次郎のコルへ出る。こちらは来年6月頃に計画してみよう。 |
左俣の両岸にそそり立つ岩壁は目測200n以上ありそうだ。つい、弱点ばかり探してしまう。斜めに走るバンドがいくつも交差していて、何とか登れそうな気がする。 ガスがかかったり消えたりで、はっきり見えるより幻想的だ。白萩川の西仙人谷を小窓へ詰めたときもそうだった。似たような景色だ。 |
三ノ窓は見えていてもなかなか近づかない。雪渓の幅は狭くなり、最後の100mほどで雪渓が切れてガレ場となる。 たどる人が少ないのか浮き石だらけだ。1つや2つの石が落ちるのではなく、ガラガラとまとまって崩れ落ち、体ごともっていかれそうになる。 |
三ノ窓の30m手前、左が小窓の王の肩へ向かう急登のバンドで右が池ノ谷の頭に向かう池ノ谷ガリー。せっかくなので三ノ窓まで足を延ばす。 三ノ窓のコルに、明日、チンネをやるという3人組のパーティーがテントを張っていた。偵察に行ってきたが取り付きがわからなかったと言っている。 チンネは岩壁全体に沢山のルートがあるので何処から取り付いてもいいような気がするのだが... |
小窓の王側へのバンドを登る。幅1mほどの急登だ。振り返ると対岸に池ノ谷ガリーが見える。まるで(岩が流れ落ちる)滝のようだ。 辛い登りもここまで。あとは軽いアップダウンがあるだけだ。小休止後、小窓へと降りる。 |
小窓尾根の北側を水平にたどり、すぐに右に折れ、小窓雪渓側へと降る。岩で踏み跡が不明瞭なところもあるので注意が必要だ。 50mほど降って左にまがり、やや登り気味に水平に行く。ここで最初の雪渓のトラバースとなる。アイゼンとピッケルを出す。 |
雪渓は凍っているような堅さだ。ピッケルのスピッツェが刺さらず、バランスを取る程度にしか使えない。完全に凍っているところはピッケルでステップを切った。 もし、滑ったら。数百メートル滑り落ちて、岩に激突。痛かったではすまない。距離は短いがザイルで確保すべきところだろう。 |
雪渓が堅くてピッケルのスピッツェが刺さらず、ピックで確保(岩城撮影) |
ふたつ目の雪渓は30mほど上で切れていたので高巻いた。もう危険なところはない。小窓コルまでゆっくり降りた。 コルから西仙人谷を見下ろす。残雪期に往復したことはある。だが急な草付きとゴーロで、明日、ここを降りる気にはなれなかった。予定通り大窓から降りることにする。 |
小窓雪渓を降り、左側の鉱山道へと入る。取り付きにペンキで丸印が書いてあるが分かりにくい。鉱山道自体が荒れてきて、もう道と呼べないような状態だ。 17時30分、池ノ平小屋に到着。リュックを下ろすと同時にビールを注文する。つまみも出して小屋に入る前から宴会モードに突入する。 |
今シーズン初めて湧かしたという露天五右衛門風呂で一番湯。ビール片手に風呂にはいるなんて1年に1回、あるかないかだ。 この五右衛門風呂の弱点はすぐ横(5m)がテント場なのに更衣室がないということだ。男はいいが女性は...でも中嶋もBOWも入ったのは明るいうち...だったぞ? |
昨年、剱岳・点の記の撮影隊がこの小屋に泊まった。その時の木村監督の命名で今年からメニューに加わった点の記ラーメン。 アイデアとして「三角に切った海苔に穴をあけて載せる」「四角く切った焼き豚(三角点の石柱のつもり)を麺の真ん中に立てる」を提案していたのだが、不採用だった。 |
上が醤油で下が塩、味噌もある |
この日の小屋泊まりは我々4人と、九州からの巨山(きょやま)さんだけ。テン場には何人かいたようだ。 いったん寝たあと起き出してきて、消灯時間を1時間も遅らせてしまった。時間が分からなかったとはいえ、ごめん。 |
8月3日 |
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5時、朝食。実は朝食に点の記ラーメンをいただいたのだ。ノートに書き込まれた「美味!美味!」に負けて。 いきなり朝からラーメンの写真では申し訳ないと思い、前日の最後に載せた。(夜食で食べたのではありません) |
6時25分、3人に見送られながら小屋をあとにする。小屋の北側から藪に入り、流れのない沢を降る。沢には索道のバケツのようなものや、ケーブルカーの車輪のようなものが転がっていた。モリブデンの運搬に使ったものか? |
藪を抜けるといきなり雪渓となる。ここが小黒部谷の源流である。スプーンカットで足スキーも出来ず、カカトのキックステップで降る。 小屋から500mほど小黒部谷を降ったところが大窓雪渓の出合のはずだ。行けば分かるだろうと、何も考えず降った。 |
意外に早く左側に大きな雪渓が出てくる。ちょっと変だと思ったがGPSが示す緯度、経度は間違いなく大窓雪渓の出合だった。 ここから大窓まで標高差650m。大窓まで休まずに歩けるペースを探りながら登る。コル近くでは立ち止まりそうになるのをこらえる。タイムは1時間10分だった。 |
大窓のコルは大きい。地蔵さんの前でウイスキーの雪割りを作る。もう今回の山行きは終わったような気分だった。その考えがあまかった事を後で知ることとなる。 大窓からはかすかにジグを切った鉱山道の跡があり、これをたどってゴーロに出る。ゴーロの最後に石垣が組んであった。 |
モリブデンを運んだ鉄索があったらしい。その鉄索の鉄塔跡のようだが、石垣の上に残っていたのは木柱の跡だった。 戦争中に鉄が必用になり、鉄塔を木製に代えたのかもしれない。しばらく降った藪の中にも石垣があった。 残っていたのはこの2つだけだった。 ←石垣の上に縦に埋まった木柱 |
茶色い色の石の中に異質な青い石がいくつもある。モリブデンを掘ったときにいっしょに出てきた石ではないかと思う。 大窓、小窓、池ノ平あたりにあったモリブデン鉱山の事を知る人は少なくなり、文献も少ない。このまま歴史の中に埋もれていくのだろうか? |
大窓から小さな沢のような藪の中を真っ直ぐに降りてきた。藪のない右側にある沢が近づいてくる。そちらに向って藪を漕ぐとトラ縄があった。 このトラ縄に5mm×20mのロープを繋いで沢へ降りた。沢に降り立ってみると30mほど上流の岩に右向きに矢印が書いてある。そこからは簡単に登れそうだ。 望遠で撮りました→ |
徐々に雪渓が現れてくる。ズタズタに切れた雪渓はくせ者で、登れない、降りられないで高巻きを強いられる。 高巻けるところはまだいいほうで急なガレ場だったり、岩場だったりする。西仙人谷出合まで2時間半もかかってしまった。 |
雪渓が切れたところは白萩川の左岸だった。左岸には壁になっていて降れないところがある。午後になると水量は多い。流木を橋にして右岸に渡った。 もうすぐ登山口だが出来るなら足は濡らしたくない。 |
タカノスワリの高巻きでひと汗かいて取水口(登山口)へ戻る。15時25分だった。取水口を出ようとしたところへ文山の車が上がってきた。 迎えに来てくれたようだ。持ってきてくれた冷たい桃が美味しかった。ありがとう。 チャンスはまたあるはず。その時はいっしょに行こう。 |