上高地散策



河童橋から奥穂をのぞむ(2008年12月8日撮影)

所在地安曇村
釜トンネル アプローチ国道158号線釜トンネルから
登山口標高1310m
標   高1510m
標高差単純200m
沿面距離片道6.5Km
登山日2008年12月8日
天 候晴れ
同行者単独
コースタイム 釜トンネル入口(30分)釜トンネル出口(1時間20分)河童橋<休憩1時間>(1時間10分)釜トンネル入口(25分)釜トンネル出口
合計4時間25分<休憩1時間含む>



新釜トンネル内はGPSに記録されていない

 
 人生のビッグイベントというようなものがいくつか重なって慌ただしい1ヶ月だった。山にでも行けばストレスが解消されるのかもしれないが、その余裕もなかった。
 アルペンルートの営業も終了し、リフォームの引越も終え、ようやく、なんとか平常の(?)生活に戻った。久しぶりに山に向かう。
 行き先は西穂高岳。平野部にも雪が積もり、相当の積雪量が予想される。だが、1ヶ月分のうっぷんをはらせるのは里山じゃない。


ロープウエイ乗り場の入口に貼ってあった運休中の張り紙

 
 7時50分、新穂高温泉ロープウエイ上の駐車場に車を停める。だが駐車場は空 っぽ。いつもなら始発のロープウエイめがけてやって来る団体のバスもいない。なんとなく、いやな予感がした。
 手当たり次第、車に放り込んできた山用具をリュックにパッキングし、登山靴に履き替え、ロープウエイ乗り場に行ってみると...運休中の張り紙が...
 それはないでしょう〜当たらなくてもいいときだけ予感は当たる。(ような気がする)


通行止めとなっている安房峠への分岐点 多分10台ぐらいは停められるだろう

 
 この、盛り上がったモチベーションの持って行き場がない。例え1人であっても西穂の頂に立つつもりでいたのに...
 近くの山は低山ばかり。かと言って、今から槍ヶ岳の日帰りは無理。ふと、(テンションは下がるが)上高地を思いつく。
 平湯のバスターミナルに行ってみるとバスは10分前に出たばかりで次のバスは2時間待ち。1日に4本しかない。


釜トンネル入口

 

釜トンネル出口

 
 前回、釜トンネル付近は駐車禁止でガードマンが立っていた。だが今日はウイークデイだし、まだ、冬季のシーズン前だ。何とかなるだろうと車で乗り込む。
 思った通り、安房トンネルへの分岐点はガラガラだった。車を停めさせてもらって再度身支度をする。
 アイゼンとピッケルをストーブとカップ麺にかえる。カップ麺は平湯バスターミナルで調達した。


西穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳、明神岳

 
 新釜トンネルは長さ1310mで、途中の勾配が11%もある急なトンネルだ。照明がないのでヘッドランプを出す。
 約、30分で通り抜ける。抜けた先は粉雪の世界だった。工事関係の車が出入りしているらしく、道路は踏み固められていてスノーシューは必要ない。
 顔が痛い。温度計を出してみるとマイナス10度。そんな状況にいることが妙に快い。Mだったのか?


大正池と穂高連峰

 
 雪上散歩と言うには、ほど遠いが、1人で歩いているのが気持ちいい。年末年始からの上高地は人であふれている。
 それはそれでいいとして、まったく1人というのが最高。ある意味、贅沢だ。この時期の上高地は超美味しい穴場かもしれない。


冬季休館中の上高地帝国ホテル

 
 冬季休館中の上高地帝国ホテル。山小屋ほどの怖さを感じないのは何故だろう。冬季休館中の槍ヶ岳山荘は、かなり怖かった。
 中に誰かいるのかいないのか?いるとしたら人なのか獣なのか、それとも山で亡くなった...ビールが買えなかった残念さより、怖さの方が勝った。


気温はマイナス10度

 

平湯バスターミナルで調達したカップ麺

 
 その日はコルでも頂上でも、まともに立っていられないほどの強風で単独だったこともある。今日は単独でも晴天で、風もない。
 誰もいないバスターミナル。誰もいない河童橋。1人というのもいいが、こういうシチュエーションなら、女性が1人、いてくれてもいい。


焼岳と梓川

 
 と、そこへ、スノーシューをはいた若い女性が1人通りかかった。心を見透かされたようで声をかけられなかった。お互いに会釈を交わしただけ。
 リュックが小さいのは日帰りだからだろう。スノーシューをはいているのが可笑しい。多分、上高地スノーシューハイクに憧れた女の子。少し先で左に消えた。
 ちょっと損した気分。素直に「こんにちは」と言っていれば状況は変わっていたかもしれない。


スノーシューの要らなかった道路

 
 12時過ぎ、彼女には悪いが(残していくのが気になるが)上高地を後にする。午前中青かった山の色は午後から茶色に変わっている。
 今まで色が変わるのは時間帯のせいだと思っていたが、天候の変化かもしれないと、ふと思った。晴れているときが青く、曇ってくると茶色くなるのかもしれない。


平湯バスターミナルの露天風呂(平湯の森は休館中だった)

 
 釜トンネル入口の中ノ湯温泉の売店。お客さんはほとんど期待できないのに営業している。温かい缶コーヒーを買って飲んだ。
 卜伝の湯は通年営業らしいが、今日は入る気がしない。平湯に戻る。予定していた「ひらゆの森」は休館中。バスターミナルの温泉に入った。
 湯につかりながら、ぼんやりと上高地を考える。富山からだと、小佐波御前山や来拝山と同じくらい気軽に雪上ハイクが楽しめる、意外な穴場だと思う。