西穂高岳 |
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所在地 | 岐阜県高山市、長野県松本市 | |
西穂高口駅 | アプローチ | 神岡町から車で40分、ロープウエイで30分 |
登山口標高 | 2156m | |
標 高 | 2908m | |
標高差 | 単純752m 累積(+)800m 累積(−)50m | |
沿面距離 | 片道3.9Km | |
登山日 | 2008年4月5日 | |
天 候 | 晴れ | |
同行者 | 単独 | |
参考コースタイム 山と高原地図(旺文社) | 西穂高口駅(1時間30分)西穂山荘(1時間30分)西穂独標(1時間30分)西穂高岳(1時間)西穂独標(1時間)西穂山荘(1時間)西穂高口駅 合計7時間30分 | |
コースタイム | 西穂高口駅(43分)西穂山荘<休憩15分>(35分)西穂独標<着替え13分>(55分)西穂高岳<休憩12分>(40分)西穂独標<休憩12分>(18分)西穂山荘<着替え10分>(32分)西穂高口駅 合計4時間48分<休憩1時間5分含む> |
前日は会社の送別会で遅くまで飲んでしまった。普段はあまり2次会には行かないのだが「小窓」に行くという。「小窓」という飲み屋はその前日に仕事で室堂に行った帰りにたまたま話題に上ったお店だった。 店主が山屋でヒマラヤなどに行ったことがあるらしい。気になる。で、2次会に参加した。お店に入ってびっくり。店主とママは3年前にキラズ山に一緒に登った方だった。 |
話しがはずみ、当然のように(?)飲み過ぎてしまった。終バスで帰って風呂に入っただけで寝てしまう。山行きの準備はしていない。 翌日6時過ぎに目が覚めてから準備を始める。2日酔いで頭も痛い。家を出たのが8時だった。当然、始発のロープウエイ(8時半)には間に合わない。 西穂高岳までなら多少送れても大丈夫だ。快晴の休日に山に行かずに街にいるなんて考えられない。新穂高温泉へと車を走らせる。 |
時間がないので有料の駐車場に車を停める。ピッケルが見あたらない。近くの友人の家まで借りに戻っている時間もない。靴紐も結ばずゴンドラの駅に駆け込む。 9時36分の臨時に乗り、鍋平発9時45分のロープウエイに間に合った。1時間遅れとなったが、それぐらいならなんとかなる。 ロープウエイの中でようやく靴ひもを結ぶ。西穂高口駅でスパッツをはき、10時2分、雪道へと踏み出す。 |
人気の山だけあって2日前の雪はきれいに踏み込まれている。スノーシューを持ち込まなくてよかった。 1時間遅れだと先行者もいない。快適にとばす。と言いたいところだが気持ちが悪い。うつむくと頭が痛い。懲りない性格だ。 |
ピッケルを忘れたのが気になる。行けるところまで行くしかないか。だが、何とかなるといういつもの気楽さもある。 10時45分、西穂山荘に到着。いつもは寄らずに先に進むのだがピッケルがない。山荘で借りられるかもしれないと山荘に寄ってみる。 |
いきなり入口で名前を呼ばれる。中から出てきたのは高原さんだった。先週まで大腿骨骨折の治療で入院していたとのこと。 今日がリハビリの第1回目で西穂まで行ってきたと言う。この人のリハビリって、いったい... 山荘のスタッフにレンタルのピッケルがないか聞いた。即答で「ありません」だった。ピッケルを忘れるような奴は西穂に来るなとでも言いたそうだった。 |
高原さんが「貸してもいいが短いかもしれない」と言う。短くてもないよりいい。借りようとしたとき、彼女と一緒にいた方がこれを使ってくれと言ってピッケルを貸してくれた。 新潟から来た仲田さん夫妻。偶然高原さんと一緒になって西穂に行ってきたらしい。会ったのは今回が2回目とのこと。 偶然と好意によりピッケルが手に入った。何とかなるもんだ。(この幸運が学習能力の欠落に繋がるのだが...2週続けてデポした車のキーを忘れたり...) |
11時、アイゼンをはき、帽子をかぶって山荘を出発する。丸山付近は風が強くちょっと寒い。気温は多分、氷点下。(下山後ペットボトルの水を捨てようとしたら、部分的に凍っていた) 1時間遅れで出発して、西穂山荘で15分も使った。そのプレッシャーからか、どうしてもペースが早くなる。このオーバーペースが後でミスを誘う。 |
11時35分、西穂独標。ここで防寒具(ゴアの雨具)の上着だけ着る。1月でも2月でもオーバーズボンは履いたことがない。 ストックをたたみ、ピッケルに持ち替え、独標を西穂に向かって降る。岩にぶつかるアイゼンの歯がカリカリ音をたてている。 |
ふたつ目のピークの降りがちょっと嫌らしい。トレースは真っ直ぐに降りずに左から巻いている。そんな降り方があったっけ?積雪期限定かもしれない。 トレースをたどりながらも右の雪庇に気をつかう。ひょっとしたらこのトレースは雪庇の上で、落ちるのは今かもしれない。 |
西穂山荘〜独標の早いペースがたたって急にバテて来る。(シャリバテもあったようだ)息を整えながら少しずつ高度を上げていく。 左斜面のトラバースはアイゼンがよく効いて気持ちがいい。柔らかい雪のところはピッケルを深く差込みながら行く。 12時43分、西穂高岳頂上に立つ。登山者が1人いて、タイマーで写真を撮るのに苦労している。タイマーの代わりになって何枚か撮ってあげた。 |
お返しに撮ってくれるという。あまり記念写真は撮らないのだが、まー、たまにはいいか。帽子を取ったはずみで頭の毛が跳ね上がっていた。 降りにかかったとき、歩き方が変だと気づく。力が入らない。注意力も散漫でフラフラしている。やばい感じがした。 |
慎重に降りる。だが、降りもテンポのような、リズムのようなものがあり、慎重になればいいというものでもない。 気持ちが引けると腰も引けて危なくなる。10mほどの急な細尾根の中ほどで柔らかい雪を踏み抜いてしまった。 蒲田川方向に滑る。左に向かえばコルで止まる。左にコースを変えようとしたが変わらない。とっさに左に1回転(ローリング)したらコルだった。 |
アブネー。瞬間に「滑落」「死」「新聞」という文字が頭をかすめた。西穂ではアイゼンのジョイントが折れたときと今回で2度目だ。西穂は相性が悪い。 「2度あることは3度ある」という諺がある。これって3度目も助かるという意味なのだろうか?それとも... 「仏のフェースもスリー・タイムズまで」(ルー語)という諺もある。3回目までは大丈夫? |
13時35分、独標に戻った。まだ独標の降りが残っているが、ピッケルをストックに替える。 ようやくビールで乾杯。滑落しそうになった興奮が残っているのか、ビールが喉を通らない。少し飲んだだけでやめる。 |
13時50分、独標を降る。降りきってしまえば、もう危険なところはない。広い斜面を駆け下りた。 14時8分、西穂山荘に戻る。防寒具をぬぎ、アイゼンをはずす。足が疲れているので最初の急降がちょっと辛い。そして小さな登り返しもいくつかある。 西穂高口駅に戻ったのは14時50分だった。終ロープウエイ(16時45分)まで2時間近く残しているのだから慌てて登る事もなかった。 |
今日はまだ何も食べていなかったことに気づく。オーバーペースなだけじゃなくシャリバテもあったのかもしれない。 ロープウエイの待ち時間にラーメンを注文する。体調のせいか、ラーメンのせいか美味しく感じなかった。次回ここで何か食べるような事があってもラーメンは選ばない。 |
言い訳になってしまうが、ピッケルを忘れたのはうっかりだけではない。いつもの場所に無かったので車の中にあると思ってしまったからだ。 ストックやスノーシュー、時々登山靴も車の中に置いている。帰ってからピッケルを探したら子供の部屋にあった。何故だろう? |
飲み過ぎて準備が出来なかった。出発が遅れた。食事をとるヒマがなかった。オーバーペースになった。注意力が散漫になった。滑った。 「風が吹くと桶屋がもうかる」みたいな話しだが「前日に酒を飲みすぎると滑落する」 |
普通は落ちるとき「わあーっ」とか「きゃーっ」とか声を出すものだと思うが、鍬崎山でも、今回も声は出なかった。性格だろうか? 声を出さずに静に落ちていったら神隠しみたいな遭難になってしまう。声を出して落ちる練習をしなければ。(と、言うのも何か変だな〜...) |