笈ヶ岳



帰路、西日を浴びる笈ヶ岳を振り返る(2008年4月29日撮影)

所在地富山県南砺市、岐阜県白川村、石川県吉野谷村
桂湖登山口 アプローチ国道156号線より右折して桂湖へ
登山口標高580m
標   高1841.4m
標高差単純1261m 累積(往復)2115m
沿面距離片道8Km
登山日2008年4月29日
天 候晴れ
同行者中嶋
参考コースタイム
 富山県の山(山と渓谷社)
登山口(3時間)天ノ又(1時間30分)避難小屋(1時間)大笠山(不明)笈ヶ岳(不明)大笠山(1時間40分)天ノ又(1時間50分)登山口
合計9時間+大笠山から笈ヶ岳の往復
コースタイム 登山口(2時間30分)天ノ又(50分)避難小屋(40分)大笠山(48分)鞍部<休憩10分>(1時間32分)笈ヶ岳<休憩1時間18分>(2時間24分)大笠山<休憩10分>(1時間16分)天ノ又(1時間42分)登山口
合計13時間20分<休憩1時間38分含む>



コルから大笠山までは稜線を避けて左側の雪渓をトラバースした

 
 赤谷のトレーニングに行きたいと中嶋から誘いが入る。大笠から、どうのこうのというメールに安易に「はい・はい」と返事をしていた。らしい。
 前日になって真面目に行き先を調べた。ジライ谷から登った笈ヶ岳に、今回は大笠山から行くらしい。


桂湖の最奥 車はここまで

 

新しくなった吊り橋

 
 朝の5時に出発したいと言う。6時でもいいんじゃないかというこちらの意見の中間を取って5時半になった。
 朝、3時起床で3時半出発。富山西インターから五箇山インターまで高速を利用する。岐阜県境で庄川をはなれ境川に入る。
 打越トンネルを抜けると桂湖だ。湖畔を走る頃に夜が明けてきた。湖の最奥、桂橋まで車を入れて中嶋を待つ。
 ちょっと早く着きすぎて4時50分だった。こちらの土地勘がなさすぎる。


吊り橋を渡るといきなり5本の鉄ハシゴ

 

遠く天ノ又(てんのまた)が見える

 

こんなにきれいなシャクナゲを見たのは初めて

 
 中嶋も5時過ぎにやってきた。会の仲間を誘ったのだが「1泊する山に日帰りでは行きたくない」と断られたそうだ。岸も白山に行ってしまったと言う。
 単独では許してもらえなかったらしいので「かなり恩を売れそう」な気がした。


天ノ又手前の大きくうねった雪原 池が出来そうな地形だ

 
 桂湖の最奥に車を停め、5時22分、出発。車止めから50mほど歩いて吊り橋を渡る。昨年、架け替えられた新しい橋だ。
 渡りきったところから、いきなり鉄のハシゴとなる。それを5本登り、クサリ場を過ぎると傾斜の緩い細尾根に変わる。


その雪原を振り返る中嶋

 

天ノ又でようやく大笠が見えた

 
 フカバラノ尾根と名付けられた大笠山の東尾根は1200mあたりまで急登が続く。1300mあたりからなだらかになり、やがて広い雪原となる。
 雪原の中央部が池のような地形になっているが水が貯まらないのだろう。貯まれば深さ5mぐらいの池になりそうだ。


行く手のコルに細い雪陵

 
 この雪原を150mほど登ったところが前笈ヶ岳(1522m)で三等三角点がある。今回は雪の下で見えない。
 前笈ヶ岳のすぐ先が天ノ又(1550m)である。桂湖を出発するときに見えた、ツンと尖った山だ。


雪陵を降る中嶋

 

ブナオ峠への縦走路

 

大笠山が近づく

 
 天の又からは大笠山への稜線が見通せる。左に笈ヶ岳を見ながら標高を稼がないまま、アップダウンを繰り返す。
 大きな岩山に近づくと鞍部に避難小屋の緑色の屋根が見えた。回り込んでみると入口が除雪してあった。
 いきなり中から人が出てきてびっくりさせられる。7人パーティーで6人が笈ヶ岳を目指しているという。


奈良岳、見越山、大門山、赤摩木古山

 
 頂上近くに見えた人達がそうらしい。避難小屋は狭くて7人で寝たら足が伸ばせなかったとも言っていた。確かに小さい。
 ここから岩山の右側の急登をトラバース気味に登る。ペース配分を間違えたらしく、このあたりから疲れが出て来た。


雪に埋まった避難小屋

 

回り込んだら入口が除雪してあった

 

笈ヶ岳へと続く雪庇の張り出した稜線 遠いぜ

 
 下から見て頂上に見えたのは単なる尾根だった。頂上はそこから左に(南西に)150mほど行ったところにあった。6名のうちの2名が戻ってくる。
 9時22分、大笠山頂上。4時間で登っている。石盤や木製のベンチなどがあって頂上らしいたたずまいだ。一等三角点があるはずだが気がつかなかった。そのまま通過する。


大笠山頂上

 

笈ヶ岳への稜線の雪庇はズタズタに切れていた

 
 大笠山と笈ヶ岳の単純標高差は20mだが、降り330m、登り350mのアップダウンがある。稜線の雪庇にさえ注意すれば、ただ歩くだけだと思っていたのだがあまかった。
 稜線の雪はズタズタに切れていて降りられないし、降りられても登れない。右の藪に逃げる。2人が戻ってきた理由が分かった。


切れている雪庇は越えられず、右の竹藪へ逃げる 何ヶ所も藪こぎとなった

 
 乗っている雪陵は稜線をはずしている。庇状にはなっていないが雪庇には違いない。底雪崩がおきたら一緒に谷底だ。
 切れた雪庇を降って登って、藪をこいで雪庇に出てを繰り返し最初の鞍部に出る。ここで4人に追いついた。


底雪崩がおきたら、多分、助からないな

 

アイゼンをはいていないので見た目以上にきつい

 
 最初の小さなピークでアイゼンを履く。宝剣岳、錫杖岳の斜面をみて判断した。正解だった。
 中嶋はここでかんじきをデポする。軽量化のため、ビールは持ってこなかったと言っていた。使わなかったかんじきは500g。缶ビールのロング缶1本分だ。


最初のピーク(宝剣岳)をのぞむ

 

2番目のピーク(錫杖岳)と奥に笈ヶ岳をのぞむ

 
 ブナ林を降り宝剣岳を登る。疲れが出てきて一気にはいけない。少しずつ標高を稼ぐ。
 藪を漕いだ後に短い急登が待っていた。ここはアイゼンの前歯2本のキックステップと短く持ったストックをアックスのようにして登った。
 ピーク手前で1箇所藪を漕ぎ、宝剣岳(1741m)頂上を越える。宝剣岳降りの笹藪でアイゼンの爪を引っかけて1回転。飛んだサングラスを探すのに一苦労する。


3番目のピーク(?)笈ヶ岳への急な雪渓

 
 右斜面のトラバースと灌木帯を乗り越え、最後は右側から直登すると錫杖岳(1780m)である。いよいよ笈ヶ岳は目の前となる。
 鞍部へと降り、急な雪渓を登り切って11時50分、笈ヶ岳の頂上に立った。6時間歩き続けた。


頂上で記念撮影

 

「200名山を狙う熟女の会」の方々

 
 軽く食事を済ませて引き返せばいいのにモツ煮込みうどんなど作り、まったりしてしまった。4名パーティーも登ってきて賑やかになる。
 この方達は避難小屋でもう1泊するそうだ。一緒にゆっくりも出来ない。13時10分、帰路をたどる。大笠山への登り返し330mがきつかった。


宝剣岳を降って登り返し(350m)にかかる中嶋

 
 笈ヶ岳は南陵から登るのが一般的だ。一般的と言っても登山道がないので残雪期にかぎられる。
 南陵は仙人窟岳、国見山、瓢箪山を経て白山スーパー林道へと続く。南陵から西に派生する尾根はシリタカ山、冬瓜山を経てジライ谷に降りている。


右の冬瓜山(ジライ谷コースの通過点)の奥に白山の峰々が連なる(望遠で引っ張っている)

 

大笠山の南西に広がる千丈平

 
 ズタズタに切れていた大笠山手前の稜線は左側(西側)の斜面を大きくトラバースする。千丈平がすぐ左下に見える。
 千丈平は長さ1Km以上で幅も500mはある広い盆地となっている。以前、冬瓜山から眺めたとき、間近に見たいと思ったのだった。実現できた。


大笠山へは左側の雪渓をトラバースする

 

天ノ又へのアップダウンの続く稜線

 
 最後は大笠山の南西斜面を直登し、15時35分、大笠山に戻る。バテバテで10分の休憩を入れた。
 雪山には水は豊富にあると思って少ししか持ち込まなかったのが失敗だった。水は作ればあるが作らなければない。作っている時間がなく、そのまま大笠山を後にする。
 途中、水増量作戦でペットボトルに雪を詰めながら降る。しばらくすれば雪が溶けて水になっている。おまけに冷たい水が飲める。


庄川を挟んで東側に見える大滝山、カラモン峰、人形山、三ヶ辻山 (望遠)

 
 雪渓が切れるところまでアイゼンをはいたまま降った。フカバラノ尾根の最初の急降はアイゼンに助けられる。
 降りに使う筋肉は登りと違うのかそれほど辛くはないが、体が疲れているので息が上がる。汗も噴き出す。中嶋は(多分自分も)くちゃくちゃな顔になっている。
 18時40分、桂湖に戻る。明るいうちに戻れてよかった。アップダウンが多く、累積標高差が2100m以上もある。
 達成感のある山行だった。抱き合って喜びを分かち合いたい衝動にかられたがセクハラになりそうなのでやめた。