龍王岳南面フランケ



龍王岳と鬼岳のコルから見上げる南面フランケ(2008年10月4日撮影)

所在地富山県立山町
室堂登山口 アプローチアルペンルート室堂
登山口標高2450m
標   高2872m
標高差単純422m 累積(+)735m 累積(△)735m
沿面距離周遊6.2Km
登山日2008年10月4日
天 候晴れ
同行者中嶋
コースタイム 室堂(1時間)浄土山(40分)龍王岳南面<登攀準備20分>(2時間35分)龍王岳<休憩30分>(25分)一ノ越(30分)室堂
合計6時間10分<休憩他1時間含む>



室堂から浄土山へ直登して龍王の裏側(南側)に回り込む
 

南面の一番深くまで延びている尾根に取り付く
 
 今年の7月に挑戦して敗退した龍王岳南面フランケ。このときは偵察がてら岩で遊ぶつもりだったので、敗退とは思っていない。
 ビールやストーブまで持ち込んでリュックの重さが16Kgもあった。今回はパン1個と水500ml1本(飲まなかった)だけで完全に戦闘モード。


剱岳の裏から日が昇り始める(立山駅に向かう途中で)
 

お客様で賑わう立山駅は予定外だった
 

それでもなんとか室堂を8時半に出発する
 
 6時40分の始発ケーブルに乗るつもりで立山駅に行くと駅構内から人があふれるぐらいに混雑していた。
 それでもなんとか室堂に8時過ぎに到着できる。ガチャ類の整理をして余分なものはホテル立山の写真部に預けた。玉殿の湧水でお腹の中にも水分をストックする。
 8時30分、ターミナル屋上を出発。


一ノ越への登山道をはなれて浄土山へ
 

montclimの斎藤さんと遭遇←クリック
 
 龍王岳へは室堂山経由の登山道を使い、一ノ越をショートカットする。途中の急登で標高を稼ぐことが出来る。
 その急登で声をかけてこられた方がいた。リンク仲間の斎藤さんだった。お会いするのは初めて。サイト名は montclim ←クリック


室堂山から室堂を振り返る 遠くに見えるのは奥大日岳
 

こちらから見る雄山の方が格好いいかもしれない
 
 浄土山まで1時間。浄土山から龍王岳の右側を巻き、鬼岳へのコルへと向かう。降りるに従って南面の岩場が見えてくる。
 下まで降りて全体を眺める。前回挑戦した尾根の右側の一番長い尾根を選んだ。今日は逃げない。強い気持ちでのぞむ。


せっかくなので一番下まで延びている尾根から取り付く
 
 取り付きまでガレ場を登り、身支度をする。今日はクライミングシューズを持ち込んだ。ハーケン数枚とボルトも数本持った。
 ザイルは8.6mm×50mを1本。ヌンチャク6本にカラビナ、下降器、確保器等。


1P リード
 
 龍王岳の南面は1961年に名古屋大学の山岳部が登った記録があるが、ルートは不明。その後も何パーティーかは登っているらしい。
 コースは自分たちで決めていくしかない。ルートファインディングに神経を使わなければいけないが、決まったコースを行くだけの登攀と違った面白さがある。


1P 
 
 1P目をリードで行く。距離が掴みにくい。適当にビレイしやすく、ビレイ点が取れる場所で1ピッチ目を切る。
 ハーケンは使わず、岩にテープスリングを巻き付けてビレイ点を作る。これで充分。


2P 中嶋リード
 
 2Pは中嶋がリードするつるべ方式で行く。ハイマツはハンドのホールドにはなるが、シューズと岩の間に挟まると滑るので危険だ。
 それに、美しさの観点からもあって欲しくない。岩場として、なんとなくすっきりしないのだ。


2P 錆びたリングボルトを使わせてもらう
残置はここだけだった


2P ほとんどのピッチで登攀者がブラインドとなる
 
 岩壁は入り乱れていて登攀者が見えず、ザイルの伸びだけで動きを判断しなければいけない。
 2ピッチ目をセカンドで登り初めてすぐに2mほど滑落。両足を開いて危うい角度でスメアリングしながら右手を伸ばし、ガバを掴む。
 テンションをかけた瞬間にそれがボコッと折れた。両足は簡単にフリクションを失い、2mほど落ちて右腕に擦り傷を負う。セカンドでよかった。


3P リード プロテクションを取りながら行く
 

3P チムニーは岩の弱点
 
 3ピッチ目はふたたびリードで行く。角度はあるが登りやすそうなチムニーをみつけて、それをたどる。広いテラスに出て3ピッチ目を切った。


3P 遠くに鬼岳の巻き道が見える
 
 ブラインドが多く、ザイルも必然的に岩角で折れ曲がり、流れが悪くなる。セカンドのビレイに綱引きのような腕力を使った。


西側に見える角度のある尾根 次回はここをやろう
 
 4ピッチ目は中嶋が行く。左の急な草付きから行くか、右のテラスをトラバースして垂壁を直登する迷ったが確実な岩の方を選んだ。
 マルチと言ってもボルトやハーケンでビレイを取っているわけではないのでビレイ点を移動してもよかった。またしてもザイルが延びるのを見ているだけとなった。


4P 中嶋リード
ここもバンドのトラバース後がブラインドで見えない

 「プロテクションが取れない」という声だけ聞こえていた。確かにもろい岩の垂壁はかなりの高度感があった。
 その上にテラスがあったので4ピッチ目は短く切ったようだ。


4P 浮き石の多い垂壁の核心部だった
 
 5ピッチ目は大きな岩を左から巻いて右に斜上し、ザレ場に入る。ザレ場を詰めるがビレイ点がない。ザイルの残りを聞くと数メートルだと言う。
 20cmほど頭を出している岩を見つけテープスリングを巻き付けてビレイ点を作った。だが立ち上がると抜けてしまうような角度しかない。


5P リード  ガレ場で50mザイルがいっぱいに
 
 念のために近くの尖った岩にもビレイを取った。ダブルで取れば少しは安心できると思ったのだが、(ビレイ中に)テンションがかかった瞬間に折れて落ちていった。
 落石が落石を誘発して下まで延びている200mほどのルンゼ全体が雪崩のように崩れ落ちた。やはりここは最少人数で来て正解だった。


7P リード
 
 大きな岩の方にもクラックが入っていたら...滑落の衝撃に絶えられるだろうか...中嶋、落ちるなよ。
 結果、このザレ場が一番ビビッた所となった。登ってきた中嶋にそのまま5m程登ってもらい、確保してもらう。 6ピッチ目は5mか?


7P(最終ピッチ) ここを登り切りザイルを解く(頂上まで約50m)
 

7P 遠くに見えるのは鬼岳と獅子岳、五色ヶ原
 
 7ピッチ目は草付きを右に斜上し最後は簡単な岩場を10mほど登ってハイマツの生えた尾根に出る。
 頂上はみえないが角度のある壁はもうない。数メートル歩くと頂上がみえた。ギャラリーは3名。拍手も歓声もなかったのがちょっと寂しい。


龍王岳頂上で記念写真
 
 登攀具を整理し、靴を履き替えてのんびりしているところへ東陵から2人が登ってきた。聞くと東陵じゃなく北面からだという。
 北村さん(立山ガイド)に連れられたお客さんは北面ばかり4度目だとか。南面もいいよ。落石が怖いけど...


北面から登ってきた北村さん(立山ガイド)
 

浄土山から龍王岳を振り返る
 
 龍王岳の南面は高度差も斜度もそこそこで、初心者のトレーニングにはいい場所だと思う。ただ、浮き石が多く、入るのは1パーティーが限度。それも2人がベストだろう。
 今回、2人だけでのぞんだのは正解だった。大きな落石は1回だけだったが、掴んだ石がことごとく浮き石という所もあった。
 南面は広いので何回でも楽しめそうだ。簡単に日帰りできるのもいい。(個人的に)運賃が無料というのも大きなポイントである。