錫杖岳前衛峰左方カンテ |
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所在地 | 岐阜県高山市 | |
登山口 | アプローチ | 新穂高温泉への途中にある槍温泉から |
登山口標高 | 965m | |
標 高 | 2168m | |
標高差 | 単純m | |
沿面距離 | 往復Km | |
登山日 | 2008年10月19日 | |
天 候 | 快晴 | |
同行者 | 山岸、中嶋、岸 | |
コースタイム |
駐車場(1時間10分)錫杖沢出合(35分)錫杖岳取り付き<身支度他15分>(4時間25分)終了点<休憩15分>(45分)懸垂錫杖沢出合<身支度15分>(45分分)錫杖沢出合(50分)駐車場 合計10時間<休憩時間他50分含む> |
昨年、いきなり挑んだ錫杖岳前衛峰。同じメンバーで同じ時期(昨年は10月21日)に再度挑戦する。 昨年も完登しているのでリベンジではない。リベンジではないが、昨年は余裕がなかった。ピッチごとの記憶が曖昧なままで終わっている。 朝、5時半に中尾温泉入口の駐車場で群馬の山岸と待ち合わせる。金沢、富山組は笹津第二ダムで合流して国道41号線を南下。 5時半ちょうどに到着する。山岸は既に到着して待っていた。まだ夜は明けていない。5時50分、身支度を終え、出発。 |
槍温泉横の登山口から錫杖沢出合の降り口まで約1時間。出合から錫杖沢の左岸の踏み跡に入る。前衛峰の真下まで約35分。かなりの急登で一汗かく。 突き当たりの岩壁を右に15mほど回り込むと左方カンテの取り付きである。ちょうど最終組のセカンドが取り付くところだった。 |
今年は中嶋とザイルを組み、1ピッチ目をリードで行く。先行パーティーはチムニーから取り付いていたが、左側のカンテから行く。 昨年はチムニーから取り付いてプロテクションも取らずに1P目を切った。カンテから登った方が高度感があり、コースとしてもすっきりしている。 |
2ピッチ目は中嶋がリード。ここはテラスを4mほど移動し、岩棚を3mほど登ったところから取り付く。 1ピッチ目のビレイ点のまま2ピッチ目のビレイを取ったので、ザイルが木の枝にひっかかり、流れが悪くなった。ここはビレイ点を移動した方がいいかもしれない。 下部が3m、上部で1mほどの幅の広いチムニーとなっている。中ほどで少しかぶっているところがある程度で難しくはない。 2ピッチ目のビレイ点は狭いテラスで、先行している山岸と中嶋が立っているだけでいっぱいだった。セルフビレイを取ってしばらく待つ。 |
3ピッチ目をリードでいく。3mほど登って最初のプロテクションを取ったあとが難しい。昨年もここで行き詰まり、腕がバンプしかかったところだ。 ホールドもフットホールドもなく、上にあるリングボルトまで40cm、その上にあるはずのホールド(見えない)までさらに数十cm。 プロテクションから50cmほど上にあるボルトに下がっている紐を信じてA0で伸び上がり、体が横向きになりながらもヌンチャクをボルトに通した。なんとか通過。 |
4ピッチ目は中嶋がリード。狭いチムニーで高度感はないが落ちれば痛いのはいっしょ。横の壁を使って足を突っ張ったりでクリア。 ここまで1Pと3Pのカンテを池原、2Pと4Pのチムニーを中嶋が登ったことになる。ツルベでやっているからしょうがないのだが...少し変えてもよかったか? |
5ピッチ目は再びリードでいく。最初のスラブは途中からホールドが少なくなる。その代わりハーケンは沢山打ってある。 左側の縦に走っているクラックは手のひらが入るのでハンドジャムが使えそうだ。フットホールドが危ういのでほぼ片手だけで体重を支えなければならない。やってみたが痛すぎる。テーピングをしていないと使えない。 プロテクションを取ったヌンチャクでA0させてもらう。スラブを登り切って斜めのテラスを右に斜上し、アオモリトドマツの生えている岩壁を5mほど登って5ピッチ目を切る。 |
5ピッチ目のビレイ点は広いテラスとなっていてリュックを下ろし、ゆったり出来るところである。先行している山岸や岸とここでいったん顔をあわせた。 右に見える垂壁の彼方に穂高連峰が連なり、かなりの高度感を味わえる。 |
6ピッチ目は中嶋がリード。最初が難しく、昨年は横に生えている木に登って取り付いた。2つ続けて打ってあるハーケンに届けばA0で何とかなる。 その後の10mほどが狭いチムニーになっていて背面の壁の使い方がポイントとなる。中嶋は上手にチムニーを抜けてカンテへ回り込んでいく。この最後が意外に難しく、かなりの時間を使って越えていった。 幸い高さは2mもないところだったのと、ザイルの伸びに助けられ、ソフトランディングだった。だが手のあちこちにザイルでこすった火傷を負う。何故、ヌンチャクが抜けたのか不明。 狭いチムニーは後ろの壁を、足で突っ張り、腕で突っ張り、フットホールドをバックで取り、最大限利用させてもらういながら抜ける。 6ピッチ目の最後はアンダーのホールドを見つけ、靴のフリクションを効かせて一気に伸び上がり、50cmほど上にあったカチを掴んで抜けた。 |
7ピッチ目のスラブをリードで行く。昨年は右側の樹木の生えている近くを通ったが今年は中央を行く。フレーク状のホールドを横に、アンダーに使いながら狭いテラスまで登り切る。 途中のテラスからは難しいところもなく最後のピッチを切った。中嶋を待って、ザイルを解き、前衛峰の上に出る。 |
そこはちょっとした別天地。天空の城、ラピュタを思わせるような穏やかな風景が広がり、目の前に穂高連峰がパノラマ写真のように連なる。 ここは登った者だけが見ることを許された楽園に違いない。 |
乾杯したいところだが恐怖の懸垂下降が待っている。ここの懸垂は本当に怖い。1ピッチ目と2ピッチ目は35〜40mほどだと思うが3ピッチ目は45m、4ピッチ目は40mぐらいありほぼ垂直。 3ピッチ目の降りは100m下の錫杖沢に向かって吸い込まれるように消えていく。下降点はおろか降りていく岩壁も見えない。 |
本当に登攀が終わったと思えるのは錫杖沢に降りたった時である。ほっとした瞬間、あらためて登攀の喜びがこみ上げてくる。 錫杖沢を30mほど降り、左の踏み跡を20mほどたどって取り付きに戻る。登攀用具をしまい、帰り支度をする間、何とも言えないくつろいだ気分に包まれた。 |