槍ヶ岳



槍ヶ岳山荘前より槍ヶ岳をのぞむ(2009年5月14日撮影)

所在地岐阜県上宝村、長野県安曇村
新穂高温泉 アプローチ神岡町から車で40分の新穂高温泉から
登山口標高1100m
標   高3180m
標高差単純2080m
沿面距離往復約29Km
登山日2009年5月14日
天 候曇り後吹雪後晴れ
同行者単独
参考コースタイム
 山と高原地図(旺文社)
新穂高温泉(2時間)白出沢出会(1時間30分)滝谷出会(1時間)槍平(2時間30分)千丈沢分岐(2時間30分)槍岳山荘(30分)槍ヶ岳頂上(30分)槍岳山荘(1時間20分)千丈沢分岐(1時間30分)槍平(1時間)滝谷出会(1時間)白出沢出会(1時間30分)新穂高温泉
合計16時間50分
コースタイム5時30分新穂高温泉(1時間15分)白出沢出合(50分)滝谷出合<休憩10分>(50分)槍平(2時間55分)槍岳山荘<停滞1時間45分>(1時間5分)槍平(40分)滝谷出合(50分)白出沢出合(1時間5分)新穂高温泉16時55分
合計11時間25分<休憩1時間55分含む>



登りでショートカット道を通り過ぎてしまい林道を歩く 10分ぐらいのロスか? 

 4日前の奥穂高岳に続いて槍ヶ岳を目指す。今度は単独だ。往復登山は縦走と違い、いつでも引き返せるのが強みだ。
 引き返せないくらいの体力の消耗や怪我がなければ登りの道がそのままエスケープルートとなる。


平日はこんなものか?
 

5時30分、蒲田川右俣に入る
 
 朝、5時過ぎに新穂高の無料駐車場に着いてみると車がいない。誰にも会わない山行きを覚悟する。
 身支度を終え、ロープウエイ乗り場へと向かう。途中、無人の案内所で登山届けを書く。出がけに、寝ている山ノ神に「槍ヶ岳」とだけ言ってきたが伝わったかどうか自信がなかったから...


いくつもの右からのデブリが堅く、慎重に行く
 

滝谷の橋はまだ架かっていなかった
 
 5時30分、ロープウエイ乗り場から林道へと入る。穂高平へのショートカット道を見過ごしてしまい、大回りする。10分ぐらいのロスか?
 右からのデブリが凍っていてキックステップが効かない。滑り落ちないように慎重にいく。


南沢の雪渓に迷い込む
 

槍平避難小屋m
 
 滝谷の橋はまだ架かっていなかった。水量は大したことがないので岩伝いに行く。
 濡れているとばかり思った石に飛び乗った瞬間、滑って前のめりに沢に突っ込んだ。岩は濡れていたのではなく、凍っていたのだ。
 手袋を濡らしてしまい、流したストックを探すの苦労する。手袋を濡らしてしまったことで後で酷い目にあう。


中崎尾根の上に乗鞍が頭を出してくる
 
 滝谷を渡った所で小休止を入れる。水分を取り、アミノ酸を補充する。登りでの唯一の休憩だった。
 槍平への途中でコースを誤り、南岳へ突き上げている南沢の雪渓に入ってしまう。間違いに気付き左のアオモリトドマツの樹林帯を抜け、槍平へと降った。


雲の流れが速いのが気になる
 

デブリが歩きにくい
 
 槍ヶ岳方向の雲の流れが速いのが気になる。かなりの風がふいていそうだ。今時分の高い山にはつきものだが、かなり強そうだ。
 飛騨乗越に近づくに連れ雲が広がり、風が強くなる。雪も降ってくる。気がついてみたら真冬のまっただ中だった。


もりあがって山になっているぶつかり合ったデブリ
 
 寒さより手が冷たいのがこたえる。冷たいと言うより痛いと言った方が当たっている。
 滝谷で手袋を濡らしてしまったので、予備に持っていた薄い皮の手袋しかない。立ち止まるごとに風下側に向けた胸の中で手をもみ合うが効果無し。


風速30mの吹雪から逃れて槍ヶ岳山荘へ
 

槍ヶ岳山荘のフロント
 
 飛騨乗越に出た瞬間に強風にさらされる。四つん這いになって耐える。風が収まってから動こうと我慢していたが収まらない。少しずつ移動する。
 手は痛さを通り越して感覚がなくなっている。小屋に逃げ込むことだけしか頭になかった。
 小屋に入ってから手の痛さがぶり返してくる。お腹の前で、両脇の間に挟んで痛さをこらえる。ストーブの上にかざしたりする。痛さがひくまで20分ほどかかった。


喫茶「剱」
 

入口ドアから吹き込んできた粉雪
 
 喫茶「槍」でストーブを使う許可をもらいラーメンを作る。外は風速30mもありそうな吹雪で視界は5m程しかない。
 入口ドアから粉雪が舞い込んできている。今日は帰れないかもしれないと思った。明日の仕事が気になったが遭難したらもっと迷惑をかけてしまう。とりあえずストーブで手袋を乾かした。


視界が開けた瞬間に下山開始
 

宝の木まで戻ると青空も見えてきた
 
 泊まった場合の事を色々考えているうちに視界が効いてきた。13時15分、あわてて荷物をまとめて山荘を出る。
 風は相変わらず強い。吹きだまりに積もった雪は15cm程ある。降りは向かい風だ。体を横に曲げて降った。
 飛騨乗越を越えて一安心する。後はひたすら沢を降るだけだ。


このあたりまで新雪があった
 
 降るにつれ天候が回復してくる。この天候なら穂先に立てたかもしれないと思う。が、それほど悔しさは感じない。
 頂上にこだわるときと、こだわらないときがある。どうしてそうなるのか、その違いが自分でも解らない。不思議だ。


槍平からの降り 沢に穴があいている
 

あの吹雪はなんだったんだろう?
 
 穂高平の早春の風景を眺めていると数時間前の吹雪が夢のようだ。


穂高平の牧場
 

穂高平避難小屋
 

駐車場に車はいない