称名川中廊下〜室堂



ソーメン滝を正面からのぞむ(2012年9月9日撮影)

所在地立山町室堂
天狗平 アプローチ天狗平
登山口標高2300m
標   高最低1975m 最高2430m
標高差(+)455m (−)3250m
沿面距離往復Km
登山日2012年9月9日
天 候曇り後雨
同行者文山、長勢、マイちゃん
コースタイム 天狗平(1時間50分)称名川(10分)1985m地点<休憩15分>(35分)大谷出合<休憩15分>(1時間20分)ツバクロの滝(20分)謎の窪地<休憩20分>(30分)雷鳥平(30分)室堂ターミナル
合計6時間5分<休憩50分含む>



称名川で一番簡単に降りられそうな所が一カ所ある
 
 近いのに、あまり人が入っていない称名川が面白い。称名滝の下流は道路があるので問題外。
 面白いのは称名滝から雷鳥沢までのV字峡谷だ。


天狗平鏡石の近くから歩道に入る
 

遊歩道にいた雷鳥の雌
 
 冨山新聞社発刊の「称名滝とその渓谷を探る」(昭和37年)では、この区間を3つに分けている。
 滝の落ち口から一ノ谷の出合までの2.5Kmを下の廊下、一ノ谷出合から大谷出合までの4.3Kmを中の廊下、大谷出合から紺屋川出合までの2.0Kmを上の廊下としている。


大日岳、中大日岳と地唐(立山では餓鬼の田と呼ばれている)
 
 この8.8Kmの区間の中でいちばんの弱点、降りやすそうなところは鏡石あたりから奥大日岳に向けた尾根である。
 立入禁止区間を少し歩かなければいけないが、高山植物を痛めないよう笹原を選んで歩いた。


藪こぎの途中で称名川が見えた
 

いまだに広い雪渓が残っている
 
 急な笹藪で視界が効かない。GPSで位置を確認し、磁石で方向を決めながら降った。
 最後は草付きの急斜面で、ザイルを出した。長瀬が先頭で降りる。届かなかったらゴボウで戻る予定。


最後はザイル(30m×2)を出す
 

ここならザイルなしで登り返すことも出来る
 
 降りてみたら意外に斜度がない草付きだった。ここならザイルなしで登下降できそうだ。
 標高差200m以上の壁は上部が急な竹藪で体力が要るが、危険なことはない。


氷のように堅く、広い雪渓を行く
 

ザラ場のトラバース
 
 広い雪渓に降りたって今日の遡行の成功を半分確信する。残りの半分は超えられないゴルジュや滝があるかどうかだ。
 長瀬とマイちゃんは沢靴に履き替える。前回上廊下から下流を見た時に沢靴は要らないと感じた。
 勘を信じて沢靴は持ち込まなかった。


エスケープルートは多分、少ない
 

未知の沢を行くドキドキ感がたまらない
 

今にも倒れそうな雪渓だった 遊んでないで早く通過してちょうだい
 
 結果、最後まで、靴は濡らすことがあっても靴下まで濡らすことはなかった。


沢靴を持ち込まなかったので、左岸の壁をへつる(長瀬撮影)
 
 剣岳「カニの横バイ」だって横になってしがみつかずに前を向いて歩いた方が安全で早い。
 高度感は違うが「カニの横バイ」より際どいところを前を向きながら歩いた。この方が安全な場合がある。
 「カニの横バイ」の歩き方は皆、間違えている。と思う。


正面にソーメン滝が見えてきた
 

この角度だとバスから見るのと似ている
 
 大谷出合いで小休止をとる。この先に滝があるはず。目の前に見えるのは人を拒むような絶壁。
 そこまで見に行く余裕−多分精神的に−がなかった。次回の課題とする。


大谷出合 この奥に滝があるはず 見てみたい
 
 今回の楽しみのひとつ。ソーメン滝を下から見る。
 実際に下から見たソーメン滝は圧巻だった。バスから見るソーメン滝は上部だけのようだ。
 


ソーメン滝全景
 
 角度を変えながら何度も振り返ってソーメン滝をのぞむ。飽きない。
 この角度からソーメン滝を望む人はあまりいないだろうと思う。その思いがこの眺めをさらに特別なものにする。


バスから見えるのは上の方だけのようだ
 

バスから望むソーメン滝
 

下から望む(その部分の)ソーメン滝
 
 次に見えてきたのは二万五全図にも載っているが無名の滝。どこからでも登れると思いながら近づいてみると...
 意外に手強い。


二万五千図には滝マークが載っている
 
 右岸に弱点がありそうだが微妙。ハーケンもナッツもカムも持ち込んでいない。支点がとれない。
 15m以上ありそうな濡れた壁をフリーで行くのは危険。右岸を大高巻きすることにした。


落差15mほどだが登れるかどうかは微妙
 

左岸は登れそうもない
 

上から見ると落差は20m以上はありそうだ
 
 草付きを上った後、ハイマツ帯をトラバースする。ハイマツの藪こぎは体力を消耗する。
 50mほど高巻いて30mほど降る。上流に前回(8月20日)降りた壁が見える。今日の遡行の成功を確信した。


高巻きを終えて滝の上部へ降りる
 

遠くに見えるのは立山高原ホテル
 

ここにもあったチャツボミゴケの群生
 
 沢芯から右岸を行く2人と別れて左岸から行く。そこで見つけたグリーンの絨毯。チャツボミゴケの群落。
 前回(8月20日)見つけたツバクロの滝の上部にあったものが箱庭に見えるほどの広さだ。


沢靴を持ち込んだ長瀬とマイちゃんは沢を行く
 

こちらはコケを踏まないようにするのが大変
 
 本州では草津温泉にしか生えていないと言われている貴重な植物なので踏まないように高巻きする。
 「他の植物は踏んでもいいのか?」と言われると、ちょっと困りますが...


明るい海の底にいるような感覚に襲われる(長瀬撮影)
 

前回(8月20日)雪渓に阻まれて行けなかった
 

ツバクロの滝の4段目を見に行く
 

両側と正面は100m以上の絶壁
 
 前回(8月20日)雪渓に阻まれて行けなかったツバクロの滝を見に行く。
 切り立った両岸と流れを見ると装備があっても突破するのは難しそうだ。


左岸から高巻いて謎の窪地に向かう
 

この尾根に前回の足跡が残っていた
 
 戻って、左岸を高巻く。ここからは前回(8月20日)と同じコースなのでレポートは略。


テントを張るには最高の場所がいくつもある
 

窪地からツバクロの滝(1段目と2段目)を望む
 

天空の城ラピュタから落ちてきたロボットの残骸
 

血の池が赤いのは鉄バクテリアのせい?
 
 称名川は面白い。近いのに、分からないことが多い謎の川だ。中の廊下と上の廊下の右岸は花崗岩系なのに対し、左岸は溶岩系である。
 このため、左岸は切り立った絶壁となっている。下の廊下は右岸、左岸とも溶岩系であり両岸とも切り立っていて登下降出来ない。
 ちなみにザクロ谷の両側も溶岩系であり、切り立ったV字峡となっている。


冒険は終わり、日常の世界に戻る
 
 今後の課題
1. 今回降り立った場所からすぐ下流にある滝を見る
2. 一ノ谷から落ちる不動の滝を下から見る
3. 大谷の滝を下から見る
4. 下の廊下の遡行


クロマメノキ
 

オヤマリンドウ
 

シラタマノキ