編笠山



編笠山からのぞむ赤岳、権現岳(2013年1月27日撮影)

所在地長野県諏訪郡富士見町
登山口 アプローチ富士見町高原スキー場
登山口標高1350m
標   高2524m
標高差単純1174m 累積(+)1174m 累積(−)130m
沿面距離片道5Km
登山日2013年1月26〜27日
天 候26日 雪    27日 晴
同行者長勢、マイちゃん
参考コースタイム
 山と高原地図(旺文社)
登山口(4時間15分)編笠山(20分)青年小屋
登り合計4時間35分

青年小屋(30分)編笠山(3時間)登山口
降り合計3時間30分
コースタイム 登山口(4時間15分)編笠山(20分)青年小屋
登り合計4時間35分←見事にコースタイム通り

青年小屋(35分)編笠山(2時間10分)登山口
降り合計2時間45分1  



 
 

 
 
 長勢から入った白鳥山の予定が変わった。大型の寒波が来ているので日本海側を避けたらしい。
 八ヶ岳南側の編笠岳から権現岳。「青年小屋」の冬季避難小屋で一泊の予定だ。

1月26日


 朝、出発の予定が、いろいろあって真夜中の出発になってしまった。
 寝ているところを起こされて出発。サングラスやカシオの腕時計やポットなど、大事なものを忘れてしまう。


富士見高原スキー場の駐車場に駐車
 

立ち入り禁止の看板は車用のもの
 
 神岡から松本に抜け、中央高速道に入る。諏訪SAで朝食をとり、富士見高原へ入った。
 登山口近くの駐車場に停めてあった車は登山者のようだ。編笠岳か? 西岳か?
 「避難小屋」の大きさは9畳。快適に寝られるかどうかは宿泊人員に反比例する。


林道を何回か横切って登山道へ
 

唐松の樹林帯に入っていく
 
 身支度を終え、8時45分、出発。4人と思われるトレースをたどり、登山道に入る。
 途中でトレースは西岳の方向へと消えて行った。登山の濃度(と言うものがあればだが)は濃くなる。


赤いテープや布に助けられながら行く
 
 登山道は斜度を上げて唐松林となる。かすかに残っているトレースをたどりながら行く。
 唐松林を抜けた後は背の低い青森トドマツの樹林帯となり、覆い被さった枝が面倒くさい。


背の低い青森トドマツを抜けると
 

強風にさらされた石と雪のミックス
 
 森林限界を超えてほっとしたのは間違いだった。左からの風速10mを超える強風が吹き付けてくる。
 油断していると倒される。(実際、1回倒された) おまけに右足のスノーシューズがはずれて強風の中での、はき直しを強いられる。


編笠山頂上の標識を覆うエビのしっぽ
 
 強風と寒さと足場の悪さで思うように標高を稼げない。「撤退」の2文字も頭をよぎる。
 辛くても休めない。立ち止まっていたら、どんどん体温をうばわれていく。前へ進むしかない。
 こんな中で1人でも進退きわまった者がでたら、どうすればいいんだろう?


北東への降りは樹林帯
 

青年小屋が見えてほっとした
 
 13時ちょうど、頂上に出た。感激はない。すぐに降りの道を捜す。
 登りは適当に登っても必ず頂上にたどり着く。だが、降りは難しい。反対の方向へ降りてしまうことさえある。
 編笠岳のような円錐状の山は特に危ない。降りる角度を10度間違えただけでも、数百メートルも離れた場所に降りてしまうだろう1。


青年小屋の冬季避難小屋
 
 幸い、こちら側は樹林帯で登山道が分かりやすかった。青年小屋をみつけて一安心。裏に回って冬季小屋にたどり着く。
 置いてあったスコップで入り口を掘り出し、小屋に入った。入り口の寒暖計はマイナス28度を指していた。


まだ1時半だというのに氷点下28度
 

小屋は真っ暗で夜のようだ
 
 小屋には2カ所に窓があるがガラスがないので開けられない。真っ暗な中で昼食宴会を始める。
 ストーブを三つ焚くと寒暖計はマイナス24度まで上がった。だがそれ以上にはならなかった。


吐く息がゴジラのように真っ白
 

布団は20組ぐらいあった
 
 もう何人かいたらもっと暖かくなったかもしれないが、あいにくの貸し切り状態。
 それに、部屋の温度がもう4〜5度上がったとしても、たいした違いはなかっただっただろう。
 凍った壁がキラキラと輝いて「天空の城、ラピュタ」の飛行石を思い出させた。


真夜中に目が覚めたら氷点下30度
 

赤ワインは凍っていた
 
 時間の感覚がなくなり、夕方が真夜中のような気がして寝てしまった。
 顔に冷たいものが落ちてくるような気がして目が覚めた。ヘッドライトをつけてみると、確かに何かが降っている。
 吹き込んでくる雪? それとも室内で雪が発生?
 真夜中の12時過ぎから2次会(?)を始めた。ボトルに半分残っていたワインは凍っていた。
 寒暖計はマイナス30度。それ以下のメモリはない。外は何度になっているんだろう?

1月27日


 業務用冷凍庫の中のような部屋で一夜を過ごした。沢山あった布団に助けられたのかもしれない。
 8時35分、小屋を後にする。寒さと強風に権現岳はあきらめた。


天候は回復方向
 

権現岳をあきらめて早めの下山
 
 アタックしていたら、往復するのに5時間はかかっただろう。登れても降りは危ない。
 厳冬期の権現岳は、ネットで調べても三ツ頭からのものばかりで、編笠山からのものはなかった。


権現岳はガスの中に隠れている
 

青年小屋と編笠山
 

青年小屋入り口
 
 小屋の前から富士山が見えた。山が見えたと言ってはしゃぐのは富士山だから?
 だが、槍ヶ岳や剱岳もそうだ。有名な山が遠くから見えると喜ばれるのかもしれない。


権現岳と編笠山の鞍部から富士山が見えた
 
 インナーグローブをリュックの奥深くパッキンしてしまい、手につけているのはアウターだけ。
 手が強烈に痛いが、強風の中で、リュックのパッキングをし直す気にはなれない。我慢する。


鞍部に小さく見えるのは青年小屋
 

編笠山頂上付近からのぞむ赤岳、権現岳、三ツ頭
 

富士山は北アルプスから眺めるより近い
 

編笠山頂上の長勢とマイちゃん
 

富士山の右側に連なる南アルプス連峰
 

登山口まで戻ると北岳や千丈岳は見えなくなる
 
 頂上からは、昨日の記憶をたよりに左に方向を変えて降りる。
 視界が悪く、トレースが消えていることを想定して、降る方向を頭にたたき込んでおいた。


昨日は強風が吹いていた岩と雪のミックス
 

今日は快適な下山となった
 
 樹林帯の入り口を見つけるのが難しいかと思っていたが、トレースが残っていたので助かった。
 残雪期の剱岳早月尾根も何ヶ所かに広い雪原があり、降りで登山道を見つけるのに苦労した経験がある。
 (昨年もそこで道を間違えた遭難騒ぎがあった)


背の低い青森トドマツの樹林帯
 

背の高い人は大変
 

唐松の樹林帯にもどる
 

平坦な登山道にもどって一安心
 

唐松林を行く
 
 降りは速い。一度通ったところなので感激もうすい。
 11時20分、登山口に戻った。あとの楽しみは暖かい温泉と美味しい蕎麦。


唐松の樹林帯の上に見えた編笠山
 

11時20分、駐車場にもどる
 

鹿の湯で汗を流す
 

そば処「藤亭」
 
 スキー場のすぐ近くにある温泉「鹿の湯」で体を温め、そば処「藤亭」で蕎麦をいただく。
 マイナス30度から戻っての温かい温泉と、その後のビールと、美味しい信州の蕎麦。
 (文章には書き表せないので、そのときの気持を想像してみてください。)


天ザルそば
 

トロロそば+オプションのご飯と味噌汁
 

中央高速道からのぞむ西岳、編笠山、三ツ頭
 
 後日談ですが、両手が軽い凍傷にかかって、しびれています。左手の人差し指は痛くて物がつかめません。
 何回か経験しています。「ほっとけば治る」です。