白木峰



雪に埋もれた頂上の標識

所在地富山県八尾町、岐阜県宮川村
国道471号白木峰倶楽部 アプローチ八尾町より車で40分
登山口標高555m
標   高1596m
標高差単純1040m
沿面距離往復9.6Km
登山日2016年1月31日
天 候晴れ
同行者単独
コースタイム 国道471号(1時間5分)尾根<休憩5分>(1時間45分)夏季登山口<休憩5分>(55分)白木峰頂上<休憩35分>(1時間45分)国道471号
歩行5時間30分+休憩45分=6時間15分



 
 


 
 


 
 


鳥瞰図
 


 最近の一番の悩みが天気予報である。
 当たるときは当たるが、当たらないときはまったく当たらない。(あたりまえか)
 天気予報はよくなく、日曜日でもあったので起きたのは7時半。窓を開けてみると外は快晴。
 「遅くなっても今日は山へ行きたい」。慌てて山行きの用意をした。


国道471号線の一番奥まで車を入れる
 

すぐ近くにある冬季閉店中の軽食喫茶「白木峰倶楽部」
 

 朝食を作って食べ、コーヒーを沸かし、パッキングを終え、登山用の服に着替えて家を出たのが9時。
 向かったのは白木峰。他に思いつかなかった。白木峰の麓、軽食喫茶「白木峰倶楽部」(冬季閉店)の近くに車を停める。
 時間は9時40分。身支度を終え、出発したのが9時55分。遅すぎる。頂上に届くのか?

 頂上に届かなくても雪の上を歩けるだけでいい。適当なところでランチを楽しんで帰ればいい。
 ふと、そんな考えが頭をよぎる。全てウソである。敗退したときの言い訳を用意しているに過ぎない。
 それに「必ず頂上に立つ」という強い意志がないと届くものも届かない。


21世紀の森の管理棟(冬季閉館中)
 

白木峰林道は冬季閉鎖
 

 まずは林道をショート・カットする。しばらく林道をたどり21世紀の森を突き抜けて再び林道に出る。
 杉ヶ谷の橋を渡って50m程で林道を離れ尾根に向かう。尾根に出る最後の斜面が最初の核心部。
 それを越えればあとは尾根をたどるだけだ。


積雪が少なく尾根筋は灌木がうるさい
 

広い斜面は灌木が少ない
 

 歩きながら時間配分を考える。登りに4時間かけると頂上は14時。休憩に30分。降りを2時間とすると16時半に登山口。明るいうちに戻れる。
 そのためには最初の林道交差が11時10分。次の林道交差が12時。夏の登山口が13時...
 頭の中ですべての時間をセットした。


大好きなブナ林が目の前に広がる
 

 目的地も決めずに彷徨う雪山が大好きなのだが、たまにはこういう山行きも必要だ。
 目的地の到達時間を設定し、そこまでのペース配分を考える。汗をかかないで歩けるか? 休憩時間がとれるか? 敗退をどの時点で決めるか?
 自分の雪山総合力を試せる絶好のチャンスでもある。


最初の林道との交差
 

頂上まで林道とは4回交差する
 

 コース的には難しいところはない。体力勝負である。強いて言えば杉ヶ谷を越えて尾根に出るところの急登。
 夏の登山口からの急登も、深雪か? クラストしているか? などで違ってくる。
 危なそうだから遠回りでも林道をたどろうと考えてはいけない。急斜面なところでは林道は消えている。一番危険なトラバースを強いられるだけだ。


最後の急登 手前の鞍部が夏の登山口(標準コースタイム40分)
 

 雪が少ないときは灌木帯に悩まされる。5m、10m先を見ながらコースを選ばないと行き詰まる。
 林道を二回横切って夏の登山口手前の小ピークに出る。夏ならここから頂上まで30分。


急登を見上げる
 

無雪期の登山口にあるトイレ
 

 急登はややクラストした雪面に新雪が積もって滑りやすい。スノー・シューズを蹴り込みながら登る。
 ここで滑っても灌木があちこちにあるので、怪我をしてもたいしたことにはならない。

 誰もいない雪山の単独登山で、動けなくなるような怪我をしたら怪我だけではすまなくなる。常に、最新の注意は必要である。


無雪期の登山口を振り返る
 

この林道の横断が核心部かも
 

 1400mを越えたあたりから急に冷えてきた。風も強くなってくる。
 太陽にさらされているのに樹氷は凍ったまま。持ち込んだ寒暖計はマイナス2度を指している。途中で脱いだ、フリースのセーターを着た。


見事な冬季限定の登山道(?)
 

 みっつ目の林道交差からの登りが急登で、雪山に慣れていない初心者は登れない。
 ここは灌木の多いところを選んで腕力で登った方が楽だ。腕力のない人には辛いところ。


振り返れば後ろに見える「仁王山」
 

 そこを登りきれば、難しいところはない。頂上まで雪上の登山道のようなことろを行くだけ。
 ずっと左手に見えていた仁王山が後ろに見えてくる。仁王山に登ったのは2回だけ。次回は仁王山か?


気温が低く(氷点下)太陽が出ていても樹氷は溶けない
 

白木峰山荘
 

 頂上はクラスト状態。風で飛ばされて雪はない。歩くとスノー・シューズがカチャカチャと音を立る。風が強く雪煙が舞っている。
 前に登ったときもそうだった。そのときは雪庇の陰でランチを取った。


頂上の看板と標識
 

頂上より白木峰山荘と仁王山を見下ろす
 

 今回もその場所を見つけたが風向きが逆だった。少し戻って風のないところを探す。
 最初の林道交差の陰で遅いランチを取った。


気温が低く(マイナス2度)風が強い
 

少し降って風を避けた場所でランチ
 

 ブナの生い茂った林をあちこちで見かける。それをブナ林と呼ぶ。
 だが、栃の生い茂った林(トチ林)、楢の生い茂った林(ナラ林)などは見かけない。何故だろう?
 ブナ林のブナの樹齢が揃っているのも謎のままだ。


これは雑木林ではなくブナ林 何故こうなるの?
 

 14時25分に頂上を出発して16時10分に登山口に戻る。予想より早かった。
 大長谷温泉は5時までやっている。久しぶりに入館。時間が遅かったからか貸し切り状態だった。
 こじんまりとしたいい温泉である。


以外に早く降りられたので入館(5時閉館)
 


こじんまりとしたいい空間
 

露天風呂は冬季閉鎖
 

 白木峰の名前の由来が面白い。白木峰は大木がなく明確な頂上がない山なので、積雪期に遠くから見ると白い峰にみえる。そこから「白き峰」→「白木峰」となったと思っていた。
 だが、1973年、北日本新聞社発行の「越中の百山」には次のとおり書かれている。

八尾町史によれば、ヒノキを「しらき」、ブナを「しろき」と呼び、ブナが多いこの山を「しろきみね」と名付けたという古老の話がでている。昔はしろき峰といっていたらしい。これが真実だとすれば我々も「しろき峰」と呼ぶべきである。

 山の名前は時代と共に変わっていくので、今更「しろき峰」とは言えないが、面白い話である。
 また、白木峰の東側(万波川両岸)は飛騨と越中で300年間にわたり領土争いが続き、決着がついたのは1964年(昭和39年)である。(富山県の負け)
 「宮村光次」著の「飛越国境争いと大長谷村炭焼き一揆」(140頁)に詳しく書かれている。


頂上からながめた夫婦山