キラズ山



 

所在地富山市東猪谷
アプローチ西猪谷から橋を渡って舟渡へ
登山口標高225m
キラズ山標高1188m
標高差単純963m
沿面距離8.4Km(GPSデータより)
登山日2018年2月27日
天 候晴れ
同行者単独
コースタイム 駐車場所(1時間35分)尾根(1時間55分)キラズ山頂上<休憩1時間35分>(1時間45分)舟渡(15分)駐車場所
登り3時間30分+降り2時間=歩行5時間30分
歩行5時間30分+休憩1時間35分=合計7時間5分



キラズ山周遊


カシミール図


キラズ山上山


キラズ山下山(ルーファイが難しい)

 無雪季のキラズ山は登山口まで車で入ると簡単に登れる山である。だが、頂上の視界がよくないのと登山道が歩きにくいので、登る人は少ないようだ。
 唯一、ススタケの季節だけ賑わう山である。


神通川対岸の蟹寺集落から見たキラズ山(2018年2月20日偵察時に撮影)

 まだ、かけ出しの頃に3連敗(2002年12月)した山だ。その後、富山トレッキングクラブの山行きに参加させてもらって1勝(2005年3月)をあげた。積雪期の登頂は1回だけである。ルーファイが難しい山だったという記憶がある。


東猪谷舟渡のいちばん奥に車を駐める

ここから先は除雪されていない

 何回も地図を見ているうちに西尾根から登れば難しいところもなく最短で登れることに気づいた。
 何カ所か急登があるが難しくはなさそうだ。今冬の候補に挙げていた。


尾根の先端に作業道がありカモシカのトレースも

出だしは雪の少ない急登

 猪谷の舟渡集落の先は除雪されていなかった。身支度を終え、取り付ける場所を探す。尾根を回り込んで石垣が切れたところに作業道があった。カモシカもそこを通っている。


カモシカの足跡にあった糞はカモシカのものとは違う

斜度は40度ぐらい

 杉林の中にかすかに作業道らしきものがあり、それをたどる。それもすぐに分からなくなってしまう。急登を直登する。
 杉林の中は雪が締まっていて歩きやすい。ところどころ小さな平らな場所に出るが地図には載っていない。視界も効かないので現在地がつかみにくい。


横山との境のキラズ山西尾根に出る

南側の山々(山之村?)と国道41号線が見えた

 右側に急な尾根がせり出してくる。横山から突き上げている尾根だろう。(その尾根は富山県と岐阜県との県境になっている)
 適当なところでその尾根に向かって右にコースを変えた。


国道41号線と茂住集落 手前は鉱石の選鉱場跡で奥は新猪谷ダム

 急な斜面を登り切ったところがドンピシャで支尾根の合流点だった。前方に高原川流域の山並みが広がる。眼下に見えるのは国道41号線と茂住集落。


巨大なブナの木

神様が宿っているという伝説の御神木か?

 そこから東に方向を変えて尾根をたどる。途中で怪しいブナの木を発見。直径30cmで長さが1mほどの枝のようなものが突き出ている。何かに似ている。巷によくある御神木のような雰囲気だ。

 楡原の「山香」という店のおばちゃんから聞いた話を思い出した。キラズ山の名前のいわれである。
 昔々、キラズ山に穴のあいた木があって神様が住んでいた。だが、長い年月の間に穴が塞がってしまい、神様が住んでいた木がどれだか分からなくなってしまった。神様が住んでいる木を切ったらたたりがある。だから全ての木を切ってはいけない。
 というような話だった。「木を切ってはいけない山だからキラズ山」とはよく聞く話だったが、その理由を聞いたのは初めてだった。
 その神様が住んでいた木はこれだったかもしれない。手を合わせておくべきだった。


細尾根にはこんな障害物もある

40度ぐらいの急登は何カ所も出てくる


高原川の対岸に漆山岳が見えてくる

 景色のあまり変わらない一直線の尾根をひたすら登り続ける。左側が杉林で右側が落葉樹の自然林。
 シャリバテ気味になり、立ったまま、パンをコーヒーで流し込む。


細尾根

広尾根(?)

 神通川の対岸に大高山、西新山、大谷ノ頭(961mピーク)、洞山が並んで見える。西新山は今冬ねらっている山のひとつである。
 単独なら猪谷川(常虹の滝がある川)から大亦峠経由で往復する。2人以上いれば桐谷から登り、猪谷川へ降りてくるのも面白そうだ。


西新山、大谷ノ頭(961mピーク)、洞山


池ノ山と大津山集落跡(私が育った集落)

 南側に池ノ山とその中腹にある大津山の集落跡が見えてくる。大津山は三井金属が作った天空の街だった。個人の家はなく全てが社宅。
 病院や映画館、商店街、美容院などもあった。山の中で完全に独立して存在したひとつの街だった。
 私は中学を卒業するまでそこで育った。私の原点である。


最盛期(昭和40年代)は300軒の家に1000人が生活していた


国土地理院の二万五千図(昭和48年発行)

 要所、要所にピンクのテープを巻きながら登っていた。ちょっと斜度がなくなったところでテープを巻いて上を見ると上がない。かるいパニック状態。「あれっ? どうして?」。
 広い雪原の先に高いところがない。腕時計の標高を見ると1185m。そこが頂上だった。


キラズ山の標高は1188m


いきなり頂上に出る 頂上だと気づくのに時間がかかった

 この日に担ぎ上げた食料はおでん、うどん二玉、かまぼこ、厚揚げ、生卵、海老天、長ネギ、その他。そのためかリュックは10Kgだった。
 途中で食べたパンが効いたのか、うどん二玉はお持ち帰りになってしまった。


13時15分 遅い昼食をとる

ご褒美のランチ


???


西笠山

六谷山と反射板

 小佐波御前山もこちらから見ると違う山に見える。その右側のラクダのこぶのように連なる山は二子山、日尾双嶺山、割谷山だ。
 これらの縦走も今冬の予定に入れている。あちこち忙しい。晴れた日が続きますように。


小佐波御前山

二子山、日尾双嶺山、割谷山

 登った尾根を往復するつもりだったが北側に広がる斜面を見ているうちに気が変わった。同じ所を歩くのは面白くない。この斜面に飛び込むか?
 だが、ルーファイが難しそうだ。視界の効かない杉林があちこちに広がり、斜面は細かくうねっている。地図に載っていない小さな谷もいっぱいありそうだ。広い斜面の降りが一番難しい。
 悩んでいてもしょうがない。それに気持ちはもう決まっていた。北側のコルに飛び込む。


予定を変更して広い斜面から降る

ルートファインディングが難しい

 初めはひたすら杉林をトラバースする。少しでも降りすぎると谷につかまる。思っていたより斜度があり、地図を見直す。小さな地形は地図でも分からない。GPSで緯度経度を確かめながら降る。


急斜面のトラバースを続ける

林道を少したどる


45度近い急斜面を降る

なだらかな広場も沢山でてくる

 斜面はめまぐるしく変わり、地図は役に立たない。地図に載っていないような沢もすぐに深い谷に変わるので危険だ。GPSと地図で現在地を確認し、磁石で方向を決めながら降った。


広葉樹の樹林帯では遠くに見える山々が方向を知らせてくれる


小さく見える沢も

すぐに深い谷になる

 谷と谷の合流点に出て登り返すのだけは避けたい。16時50分、谷につかまることもなく無事、舟渡の集落に降りたった。


16時50分、ほぼピンポイントでねらった舟渡の集落に降りたった

 帰りに楡原の「山香」に寄ってキラズ山の名前の由来を確かめた。前回聞いたとき、いい加減に聞いていて、うろ覚えだったのだ。


楡原の「山香」