錫杖岳 |
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所在地 | 岐阜県高山市 | |
錫杖岳 | アプローチ | 神岡から新穂高温泉に向かう |
登山口標高 | 970m | |
標 高 | 2168m | |
標高差 | 単純1200m | |
沿面距離 | 往復9Km(GPSデータより) | |
登山日 | 2020年4月16日 | |
天 候 | 晴れ | |
同行者 | 単独 | |
コースタイム |
駐車場(10分)登山口(45分)クリヤ谷渡渉(50分)錫杖沢出合<休憩10分>(2時間10分)コル<休憩5分>(25分)頂上<休憩35分>(5分)コル(1時間)錫杖沢出合<休憩5分>(35分)クリヤ谷渡渉<休憩10分>(30分)登山口(10分)駐車場 登り4時間20分+降り2時間20分=歩行6時間40分 歩行6時間40分+休憩1時間5分=合計7時間45分 |
錫杖岳の縦走を計画していたが、時期を逸してしまった。だが、北側から回り込むコースを選べばまだ間に合いそうだ。単独でも行ける(多分)。今しかない。 |
朝、3時に目覚ましをセットした。用具は前の晩にすべて用意する。持ち込む食料はパンと大福とナッツだけ。 朝起きたら着替えて、コーヒーと紅茶(蜂蜜入り)をいれてポットに詰めればいいだけ。髭も剃らずに家を出た。 |
国道41号線は崖崩れで不通になっている。そのためか、ほとんど車が走っていない。不気味だ。 昔、第一次オイルショックの頃、真夜中に車を走らせた。街中の明かりは消えてしまっていた。車が走っていない道路に雪だけが舞っていた。世界が終わってしまったような気がした。 ふとそんなことを思い出すくらい人気のない41号線。 |
普通車でもすれ違えないような細い裏道を通って神岡に入る。さらに、神岡から新穂高温泉へと車を走らせる。こちらも車が走っていない。41号線が不通だからか? 新型コロナの自粛要請の影響か? |
新穂高ロープウエイまで行ってみた。ロープウエイは運休中だった。ホテルも旅館もすべて臨時休業中だった。有料駐車場も閉鎖。 蒲田川沿いの駐車場に行ってみたが、停められていた車は2台だけだった。それが西穂山荘のスタッフの車だったら穂高には誰も入っていないことになる。ましてや錫杖岳方向には... ちょっと怖くなって登山届を出した。「錫杖岳、北側から、単独、日帰り」と。 |
まだ夜が明けていないからか、登山者がいないからか、気が重い。ビビりが入る。 だが、気が重くなるのは、難しい山へ単独で入るときはいつもだ。それも出発するまでのこと。とりあえず明るくなるのを待つ。 |
明るくなってきたら気持ちも少し楽になってきた。身支度を終え、5時55分、駐車場を出発。 橋を渡り蒲田トンネル入口の手前で右に折れて槍見館へ向かう。槍見館も臨時休業中だった。 「新穂高温泉」という街全部が無傷のまま無人となってしまっているような雰囲気が漂っている。 |
6時5分、「槍見館」横の登山口から入山。枯れ葉の積もった道を行く。晩秋のような雰囲気もある。 徐々に明るくなってくると気持ちも軽くなってくる。 |
錫杖沢出合あたりから積雪があって登山道が分からない。トラバースの雪面が凍っている。登山靴のサイドで2〜3cmのステップを切って行く。滑ったらクリヤ谷に落ちる。ここだけはアイゼンが欲しかった。 |
無事、乗り切ってクリヤ谷を渡渉する。そこにはテントがふた張りぐらい出来そうな岩室がある。 ここでスノーシューズをはいた。雪解けがすすんで灌木が出ていて歩きにくい。雪を拾いながら行く。 |
難しい所はない。ひたすら登る。怖いのは雪崩と熊だけ。持ち込んだ小型オーディオのボリュームを上げる。流れているのは英語なので、熊が人間の声だと理解してくれるかどうか?(冗談) |
小さな沢を二つ越えたところの灌木に赤布が付けてあった。まだ新しい。「G・M・G・A」と書いてあった。 広い斜面に出た。木が生えていないということは頻繁に雪崩が起きているということだ。数日前に降った雪が10〜20cmの厚さで積もっている。沢芯を避けて歩いたが気休めにしかならないだろう。 |
さらに右側の斜面に出てみると大きなデブリの跡があった。巻き込まれたら間違いなく助からない。 |
朝飯を食べていなかったからかシャリバテ気味になってくる。(朝食を食べる気分ではなかったから) 落ち着ける場所もなく、だましだまし行く。 |
左右の岩壁を見ながら歩をすすめる。景色はなかなか変わらない。休みたいと思う気持ちとの我慢比べ。 |
目的地の木の大きさを見る。その木の大きさで大体の距離をつかむ。それが、いつもの歩き方だ。 何も見ないで歩いてみた。百歩あるいたら顔を上げて景色を見てみよう。そう決めて歩いた。 |
歩数を数えながら百歩歩いた。顔を上げたらコルは目の前だった。右上に見えていた岩壁も下方に見える。 10時ちょうど、コルに出る。 |
リュックを降ろして紅茶を飲み、大福を1個食べる。少し落ち着いた。コルのオオシラビソにピンクのテープで印を付ける。意味はないが、付けてみたかった。 |
コルから左に折れて頂上に向かう。雪質が変わってサラサラになる。硬い雪面に積もった新雪は30cmぐらいあった。表層雪崩のように、スノーシューズごと体を持って行かれる。 |
右側に南峰に向かう尾根のように見えたのは頂上から西に向かう支尾根だった。左にコースを変えて高い所へと向かう。 |
樹林を抜けて、ポッと出たところで目の前に穂高連峰が広がった。やった。頂上だ。 山に登るのはこの瞬間に感じる達成感と、登山口に戻ったときの幸せな浮遊感を感じたいからだと思う。 |
頂上は意外に狭かった。軽量化のため、スコップは持ち込んでいない。リュックを置いて腰掛ける。 軽量化のため、ストーブも持ち込んでいない。ビールで乾杯する。つまみはナッツだけ。ランチは菓子パン1個で十分だった。 |
時々、運休中のロープエイの音がする。従業員の交代とか資材運搬のためなのだろう。 |
11時5分、頂上を後にする。もう体力は必要ない。残り火だけでも戻れる。だがコルからの急斜面で腐った雪ごと体を持って行かれて何度も転んだ。もう少し体力を温存しておくべきだった。 |
スノーシューズは急斜面の降りに向いていない。思いついたのがジグを切って降る方法。登りは直登して、降りはジグを切る。 不通とは逆の発想だが急な斜面をスノーシューズで歩くときの有効なテクニックだと思った。 |
12時10分、クリア谷にもどる。まずは一安心。5分の休憩を入れてクリア谷を渡渉する。残雪の斜面を慎重に降って、雪のない登山道までもどった。 |
13時ちょうど、クリヤ谷渡渉地点までもどる。フキノトウを少し採った。ここに石仏が安置されていた。何仏か分からないが優しい顔をしていていい。 |
13時30分、登山口にもどった。ふわっとした感じがいい。ヘルメットもとらずに車道を歩いていた。 登山靴を脱ぐとき。車に残っていたコーヒーを飲むとき。何でもないことなのに、その時間がとてもいい。 |
「新穂高センター」に戻って下山したことを報告する。心配してくれていたようで喜んでくれた。この日の登山者は、やっぱり1人だけだったようだ。 |