ニコイ大滝



落差120mのニコイ大滝

所 在 地飛騨市宮川村菅沼
アプローチ国道360号線宮川村巣之内から菅沼に入る
登山口標高840m
標   高850m
標 高 差単純10m
沿面距離往復1Km(菅沼のカツラまで)
登 山 日2025年11月12日
天   候晴れ
コースタイム 駐車場所【13:20】(7分)ニコイ大滝<見学7分>トンネル入口(11分)トンネル出口(10分)菅沼のカツラ<探索5分>(8分)トンネル出口(4分)トンネル入口<見学8分>(10分)駐車場所【14:50】
行き28分+帰り22分=歩行50分
歩行50分+探索他20分=合計1時間10分



カシミール五万図


カシミール二万五千図


カシミール二万五千図


グーグルアース

 昭和40年代(1980年代)に訪れたことがあるニコイ高原。記憶に残っているのは滝と、鍾乳洞と、ぽつんと建っていたレストランだ。
 滝も鍾乳洞もそれなりにすごいと思ったが、山の中に突然現れた(現れたとしか表現出来ないくらい衝撃的)大きなレストランだった。
 新築のような外観なのに使われた形跡がない。「無人島で営業しているコンビニ」くらいの衝撃を受けたのだった。

 ずっと気になっていた。今回、記憶を頼りに滝と鍾乳洞を探すことにした。レストランはもう残っているとは思えないし、場所も分からない。


ニコイ大滝への入口に車を停める

 記憶にあるのは宮川沿いの菅沼にあったということだけ。池ヶ原湿原の帰りに見つけたはずだ。
 地図を見ると、林道から川に向かって延びている道がある。川で行き止まりになっていて滝のマークがある。ニコイ大滝に間違いない。近くに鍾乳洞もあるはずだ。
 熊は怖いがこんなショボイところに友人は誘えない。単独で出かけることにした。


スタート前にランチ(山中での食事は熊が怖い)

食事中も熊スプレーは手元から離せない

 山の中で料理をしたら匂いで熊を刺激してしまう。(どこでやっても同じかもしれない)
 お昼を過ぎていておなかも空いていたのでランチを取ってから出かけることにした。
 熊スプレーを手元に置き、ヘルメットも被って、立ったままランチをとった。


13時20分 歩道(?)に入る

初めは歩道のように見えた


道は落ち葉でいっぱいだが紅葉はまだ残っている

 13時20分、地図で確認していた道に入る。道が全部残っているのかは不明。
 いつも熊よけに使っている携帯mp3プレーヤーのボリューウムを最大にして歩いた。


人工物が見えてくる

崖に作られた歩道だった

 ジグを2回切って、なだらかにトラバースしながら降りていくと人工物が見えてきた。崖に作られた歩道だ。
 壊れているように見えるが、雪の重さにも耐えているのだから、人間1人ぐらい乗っても大丈夫だろうと、歩を進める。(違うかもしれない)


パイプの手すりは壊れたまま 当たり前か

大きな滝見橋への小さな渡し橋

 大きな橋が見えてくる。帰ってから調べたら「滝見橋」という名前だった。全長100mとのこと。
 これも、雪の重さに耐えているのだから...という根拠のない確信で渡ることにした。


全長100mの滝見橋

雪が積もっても壊れないのだから大丈夫だろう

 橋の真ん中辺りから滝が見えてくる。記憶の中の滝より大きなものだった。
 滝の全景を見ようとしたが、滝は橋の裏の方まで延びていて滝壷までは(あるとしたらだが)見えなかった。


橋の途中でニコイ大滝が現れる 距離は意外と近く、橋から20〜30m程だ


落差120mと言われている大滝の下流は橋に隠れて見えない


数日前に雨が降っていたので水量は多い方だと思われる


滝見橋は最後に右に折れている

橋の終了点にトンネルがある

 橋は最後に右に折れていて、その終点に鍾乳洞の入口らしきものがあった。記憶では鍾乳洞は滝とは離れた場所にあったはず。
 入口に看板があった。「延長134m 高低差30m トンネル内は急勾配です 足下に充分ご注意ください」と書いてある。ただのトンネルだった。
 不思議なのは看板もトンネルの入口も、どう見ても50年前のものとは思えない。謎が広がる。


50年経っているとは思えないほどしっかりしている

「延長134m 高低差30m」と書いてある看板

 未知のトンネルに入るのは怖い。気がかりなのは、変な動物が生息しているかもしれないということ。熊だけじゃなく、蛇やコウモリなどがいるかもしれない。白骨なんか出てきたら最悪だ。
 崩落がひどいときの、行くべきか撤退すべきかの的確な判断も下せるかどうか。
 まずは入るしかなく、気を引き締めて突入。


何故か入口に石臼が置いてあった

まっすぐに進む

 トンネルはすぐにコンクリートの巻き立てのない素掘りのトンネルにかわった。すごみが増した。
 空気の流れを全然感じない。トンネルはどこかで崩落していて抜けられないのかもしれない。引き返したくなってくる。


巻き立てがなくなり素掘りトンネルとなる

左に曲がったところから階段となる(珍しい)

 よく見ると床は所々に落ちた石が転がっている程度で、きれいだ。岩盤が固いのだろう。頭に石が落ちてくる心配もなさそうだ。先に進むことにする。
 30m〜40mほど進んだところで左に曲がっていた。曲がっているトンネルは珍しい。
 曲がったところからコンクリートの階段が続いていた。階段があるトンネルも珍しい。


岩盤が固いからか、50年前のトンネルとは思えないほど、しっかりしている

 階段が終わったところから右に緩やかに曲がっていく坂道になった。さらに左に少し曲がるとふたたび階段が現れた。
 その短い階段を登り切ると、トンネルは左に直角に曲がっている。左に曲がってみると正面に明かりが見えた。ほっとした。本当にほっとした。
 何故、こんな屈曲したトンネルを作ったのか不明だ。設計をした人が、まだ生きていたら、聞いてみたい。


最後の階段を登りきり左に曲がると明かりが見えた

「栄光への脱出」という映画があった そんな感じだ

 トンネルを抜けた先は川だった。対岸に向けて橋が架かっている。これも「今日は落ちるはずがない」という根拠のない確信を持って渡る。


橋の先には道がない

出てきたトンネルを振り返る


この先に「ニコイ大滝」の落ち口があるはずだ

崖を登って橋とトンネルを見下ろす

 橋を渡りきった先に道がない。草付きの崖があるだけだ。左に川を降れば滝の落ち口に行く。行ってみたかったが靴を濡らしたくなかった。
 草やススタケに捕まりながら右にトラバース気味に崖を登ると、大きなカツラの木があった。
 帰ってから調べてみたら県指定の天然記念物だった。名前が付いていて「菅沼のカツラ」とのこと。


上流に向かってトラバースしていくと大きなカツラの木があった


対岸(左岸)にトンネルを二つ発見

 対岸(左岸)にトンネルを二つ発見する。一瞬、鍾乳洞かと思ったが場所が変だ。川底より低いところにある。
 何かの水路の入口だと思った。徒渉して靴を濡らすのも嫌だったので行くのをやめた。これが失敗だった。
 帰ってから調べたら、これが鍾乳洞だった。何故、二つあるのだろう? 入口と出口か?


川より低いところにあるので水路用のトンネルか?

徒渉して靴を濡らすのが嫌で探検はやめた


「菅沼のカツラ」と謎のトンネル 水路にしか見えない

 上流の方に林道のコンクリートが見える。上に向かっても意味がない。引き返すことにした。
 トンネルまで戻ってヘッドランプを点けようとしたらヘッドランプがない。藪漕ぎしている時にどこかで落としてしまったらしい。ランプがないとトンネルは歩けない。探すためにまた、崖を登る。


トンネルまで戻ってヘッドランプがないのに気づく

携帯電話を懐中電灯代わりにして戻った

 カツラの木まで戻ったがヘッドランプは見つからなかった。携帯電話が懐中電灯代わりになることに気がいてヘッドランプを探すのを諦めた。
 ヘッドランプをヘルメットに付けるときは固定しないとだめなようだ。落としても気づきにくい。


照明は、はだか電球だったようだ 当然割れている

水漏れがひどいとこにあったので屋根代わりの材か?

 トンネルの入口の看板、電線と電球のソケット、黄色いビニールシート、落石の少ない床、どれも50年前のままとは思えない。
 10年〜20年ぐらい前に再整備されたような雰囲気がある。誰が、何のために? 分からないが、こういう謎のストーリーは大好きだ。


どれも50年前のものとは思えないのだが...


幅は1m以上あり高さも2m以上ある 観光用のトンネルだったので当たり前か


明かりが見えてきてほっとする

よくこんな所にトンネルを掘ったものだ

 一度通っているとはいえ、トンネルを抜けてほっとする。熊にも蛇にもコウモリにも遭遇しなくてよかった。
 だが、橋の上で猪に遭遇したらどうしよう? はじき飛ばされて橋から落ちたら即死だ。


柵が壊れているのは雪害(ブロック雪崩)だろうか?


水量が多く紅葉がきれいな日が重なったベストチョイスの日だった


今年はどこも紅葉がきれいらしい


このあたりは道の原形が消えかかっている


14時50分 無事、林道までもどる

 帰ってから調べたら、色々なことが分かってきた。ニコイ高原を観光地として開発を始めた会社や地元の(旧宮川村の)人達のこと。始めた年。何を計画していたのか。そしてオープン前に計画が頓挫してしまったことなど。

 次回、再訪して鍾乳洞を探検したときのレポートで詳しく書きたいと考えています。出来れば年内に...