つぶら池



つぶら池の浮島を発見(?)

所 在 地富山県上市町浅生
アプローチ上市町西種
登山口標高430m
標   高660m
標 高 差単純230m 累計560m
沿面距離9.4Km
登 山 日2025年8月15日
天   候晴れ
コースタイム 骨原【9:10】(1時間5分)高峯山分岐(25分)釜池<休憩10分>(30分)つぶら池【11:20】<休憩20分>
つぶら池【11:40】(20分)釜池<昼食休憩50分>(25分)高峯山分岐(45分)骨原【14:00】
登り2時間+降り1時間30分=歩行3時間30分
歩行3時間30分+休憩1時間20分=合計4時間50分



カシミール五万図


カシミール二万五千図


カシミール二万五千図


カシミール・プロパティ


 富山県には「浮島」がある池が三つある。1番有名なのが白木峰にある「浮島の池」だ。
 だがこれは名だけで実際に浮いている島ではなく、浮島の様に見えるだけで実際は浮いていない。
 本物の浮いている島がある池は上市町の「釜池」の近くにある「つぶら池」と、南砺市の高草嶺(たかそうれい)にある「猫池」だけである。
 今回はそのうちの一つである「つぶら池」の探索に向かった。


骨原を出てすぐの所で通行止め

お盆休みで工事はしていないから入ろうかと思ったが

 骨原を過ぎたところで車輌通行止めの標識があり、とんがりコーンが道を塞いでいた。
 今日はお盆のど真ん中で工事はしていないはず。コーンをどけて、車で入ろうかと思ったが思いとどまった。たいした距離じゃない。歩こう。


200mほど先で重機が道路を塞いでいた

入らなくてよかった

 だが、持ち込んだ水分がペットボトル1本なのが、ちょっと気になった。
 「目的地は池だ。水はある。最悪、脱水症状による熱中症は避けられる。」と、ポジティブに考えなおして出発した。
 (腹をこわすかもしれないが...)


積雪期は雪の爆弾(杉の木からの)が怖い林道が続く

大きなビルのように見える四角い礫岩が見える

 この林道は杉林が続くので冬季は怖いところである。雪がたくさん降った後の晴れた日は雪の爆弾が落ちまくる。
 数年前に鍋冠山に向かったとき、それが原因で敗退したことがあった。


この礫岩は高さが20mほどありそうだ


左へ入ると大辻山へ続く鳥越峠に至る

右の高峯山への道を選ぶ

 林道は途中に2カ所の分岐がある。最初の分岐は右を選ぶ。左側の林道は大辻山登山口の鳥越峠を経て、芦峅寺へと続いている。
 次の分岐も右を選ぶ。左側は高峯山の登山口へと向かっていて、そこが終点である。
 最初に釜池に向かったときは、この右側の林道をたどってしまい、敗退した。持ち込んだ地図に林道は載っていなかった。多分浅生から大岩へと繋がっているのだろう。


左へ入ると高峯山の登山口に至る

右の林道に入る


100mほどたどって左の登山道に入る

初めはなんとなく道に見えるが


草が生い茂ってくると道が不明瞭になる


窪地から10mほど登ると

30mほど下に「釜池」が姿を現す

 釜池は火口湖だと思われてきたが、最近の調査では地滑りによる堰止め湖らしいということである。
 池と名前がついているのは三つだけだが、すり鉢状になっている地形は他にもいくつかる。
 釜池は流れ込んでいる沢がないのに、いつも水が流れ出しているのは、地下からの、わき水があるからだと思われる。


「釜池」は南北80m、東西200mの自然湖である


池からの排水溝だが水は流れ出していない

水が流れ出しているのは3m程下の配水管から


「釜池」を回り込んで「ながら池」に向かう

平坦地に出るが「ながら」池は見えない

 池を回り込んで(西端から)池の縁をいったん登って降る。降っていくと平坦なところに出る。
 「ながら池」らしいが水が溜まっているようには見えない。足下は湿地となる。
 湿地は柔らかく、足首までもぐってしまう。右側からの高巻き(低巻き?)を強いられた。


ぬかるんだ道のカモシカの足跡


「ながら池」から流れ出た沢だろうか?

道とは思えない沢を降る

 途中で右に90度、方向を変えて降っていく。しばらく行くと道は沢に合流する。ところどころ道らしきものが現れるがほとんどは沢の中を歩く。
 目の前が明るくなってきたと思ったら池だった。目的の「つぶら池」だ。道は池に突き当たって終わっていた。


突然目の前に「つぶら池」が現れた

道はここで行き止まりだった(周遊路はなし)

 「つぶら池」は池の周りが全て見える、きれいな円形の池だった。豪雨の後だったからか水面が全て木におおわれた、樹木の中にひっそりとたたずんでいる池だった。


直径70mほどの円形の「つぶら池」(パノラマ撮影)

 目的の浮島は?見当たらない。目をこらして湖岸を順番に見ていくとあった。小さい。だが確かに湖岸から離れている。
 池のスケールから大きなものを期待しすぎていたので気づきにくかったようだ。


左側の奥に浮島らしきものを発見 小さい

 昔、このあたりに住んでいた人達は、浮島の位置で天気を予想し、農作業に取り組んでいたという。
 流された浮島の位置で風向きを知り、天候を読んでいたのだろう。
(今日は伝説の通り、晴れていたので湖岸の西にあった)


沢道を戻る

ぬかるんだ所は右岸を高巻き(低巻き?)


葦(ヨシ、アシ)を踏み分けて入ってみると

 戻る途中、「ながら池」を通るときに気になって葦が生えている所を踏み分けて入ってみた。池があった。北東から南西にかけての長い池だった。
 地図で見ても湿地のマークが250mほど続いている。「ながら池」の語源は「ながい池」だったのかもしれない。


「ながら池」が姿を現した 左側(北東側)

「ながら池」の右側(南西側)


「釜池」まで戻ってランチタイム

 釜池まで戻って長いランチタイムをとった。池の対岸の木立の奥に鍋冠山が少しだけ見える。風もなく、釜池から流れ出す水音が聞こえるだけの風景。そんな、ぼんやりと過ごす時間が好きだ。


「釜池」を後にする 道が見えない

林道まで戻る

 釜池からは軽い登り返しとなる。林道まで戻ってほっとする。残りは退屈な林道歩きが待っているだけ。
 長い降りは、靴のサイズが合わないので(5mm大きい)足のつま先が痛くなる。だまし、だまし、何年も使い続けてきたが、そろそろ買い換えないと足の爪がもたないかもしれない。
 足の親指の爪は、もう何回も取り替えて(?)いるので、慣れてはいるのだが...


林道の工事区間

道路を塞いでいるバックホー

 思うに、この林道を無雪期に歩くのは始めてかもしれない。貴重な体験だった。
 14時ちょうど、車まで戻る。携帯を家に忘れてきていて、「無事下山」の連絡が取れない。温泉は諦めて、直帰することにした。


14時 無事駐車場所まで戻る


つぶら池の伝説
《出典》上市町教育委員会編
「大蛇のお話し」『上市のむなしばなし』
 むかし、むかし。塔倉山のふもとの村に、仲のよい若夫婦がいてのう。 二人は、毎日毎日野良仕事に精を出して、しあわせにくらしておったと。
 やがて、玉のような赤ちゃんが生まれてな。 二人は大よろこびで、田や畑へ行く時も、山へぜんまいをとりに行く時も、赤ちゃんをつぶら(わらであんだかご)に入れて連れていくほどのかわいがりようだったそうな。
 ある日、いつもいく池のふちに、赤ちゃんを入れたつぶらを置いて、少しはなれただんだん畑で働いておった。
 すると、そこへ、一人の見知らぬ女がやってきたと。 そして、その女は、つぶらの中でねむっている赤ちゃんをみつけたがや。
 女は、赤ちゃんをじっとながめ、そのうちに、この子がほしや この子がほしや この子がほしやと、うたったと。
 三べんうたうと、たちまち大蛇になって、つぶらもろとも、くるくる、くるくるとまき、池の底へ連れ去ってしもうた。
 「何するが。坊や、坊や。坊やを返してっ。」お母さんは、気ちがいのようになって、泣きさけびながら、池のまわりを走りまわったと。
 そうしたら、大蛇が出てきて、もう一度だけ見せてあげる、といって、つぶらごと高く池の上にさしあげ、またしずんでいってしまったと。
 そのあとは、水の上に、五、六本のわらくずがうき上がってきただけで、いくら泣きさけんでも、池はしいんとしておったと。
 それから、この池を"つぶら池"というようになったそうな。
 後に、このわらの上に葦が生えしげって、それがうき島になってのう。小さなうき島は、雨がふる時は北東へ、晴れた日には南西へ、ただよい流れたそうな。
 付近の人は、このうき島の流れただよいかたによって、明日の天気をうらなっていたということじゃ。
 これは、雨の日には、お母さんが、雨のふらない北東の山や畑へ働きに行き、晴れた日は南西のしめった所へ出かけていったからで、赤ちゃんのうき島が、お母さんをしたって流れるのであろうと、言い伝えられておるがのう。

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